88日目 細工(2)
【ダークヒーローパーカー(forパンフェスタ)】
品質:★
エネルレザーで作られた服。
主な使用法:装着
効果:持久+300
消耗:100/100
セットボーナス:[闇属性付与] [アビリティ:夜行性] [チャレンジスキル:口笛]
(夜行性:夜間すべてのステータスが上昇し、日中すべてのステータスが減少する(小))
(口笛:任意発動スキル 消費30~ 周辺にいる野生の友好幻獣を呼び寄せる)
【ダークヒーローマスク(forパンフェスタ)】
品質:★
エレメリタンで作られたマスク。
主な使用法:装着
効果:[火傷]無効
消耗:100/100
セットボーナス:[闇属性付与] [アビリティ:夜行性] [チャレンジスキル:口笛]
【ダークヒーローピアス(forパンフェスタ)】
品質:★
---
主な使用法:装着
アビリティ:起死回生
(起死回生:行動不能状態を一定時間につき一度限り自動解除できる)
チャレンジスキル:反撃の
(反撃の狼煙:条件発動スキル 消費- 自身若しくは仲間の一人が3回以上連続で攻撃を受けることにより発動。自身と仲間のクールタイムをすべてリセットする)
消耗:50/50
セットボーナス:[闇属性付与] [アビリティ:夜行性] [チャレンジスキル:口笛]
――――――えーっと……。
完成したアイテムの情報に目を通した私は、頭を抱えることとなった。今回ばかりは本当の本当に、悪い意味で驚いている。
や、やっちまった~~~~かっこ真。
さっきまではあんなにるんるんわくわく気分だったのに。うっかりアイテムに【中二病患者のパーカー】とか名付けようとしちゃって、いやいやそれはさすがにあかんでしょ、ダーク―ヒーローにしとこ、これならパンフェスタ氏もにっこりですよ、とかセルフボケセルフ突っ込みしちゃうくらいには上機嫌だったのに。
蓋を開けてみればこれである。
『★』一個! 消耗値100、もしくは50!
今回アイテムの数が多いので上に挙げたのは代表的なもののみにとどめているが、他のアイテムの品質も全部こんなかんじである。ザ・粗悪品を生みだしてしまったわけだ。
おまけにこれに限っては不都合なことに、細工で生み出したアクセサリーもセットアップ可能、というかアクセのどれかをセットに入れておかないとすべてのボーナスが組み込まれない仕様となっていた。
いや、確かに私自身アクセサリーどうしのセットアップ、例えば指輪が纏めてセットとして扱われる、なんてことは予測していたし、狙ってもいた。
けど今回アイテム数が異常に多くなってしまったもので、裁縫系アイテムと細工系アイテムを一緒くたにすることは望んでいなかったのよね。
これが以前自分用に製作した着物、番傘、草履セットのように、担当スキルの違うものを全部入れても使用スロットは3つ、とかならまとめちゃうんだけどね。時間と手間稼ぎのミラクリ狙いができるから。
けど今回製作したものは、普通の裁縫アイテムだけで6アイテムもある。セットにできる最大数は5個だから、これだけで全然足りてしまうわけだ。
だったらミラクリ狙いがあまり望めないアクセサリーは別にしておきたかったなっていう。
……ええ、はい。まあ、裁縫アイテムが全部できた時点で一旦作業終了すればよかっただけの話なんですけどね。
忘れてたというか、ズボラしてたというか。まさかこんな結果になるとは予想していなかったもので、コーディネートが一式完成してからセットの配分を考えようと思った次第だ。
で、ずらっと出てきた製作物一覧の裁縫アイテムにチェックを付け、決定キーを押したら、『この選択だとセットボーナスに不備が生じる可能性があります。よろしいですか?』とかいうメッセージがでてきてさ。
え~よろしくないよ~と色々試した結果、ピアスとネックレスを組み込んでやっとメッセージが出なくなったんだよね。メッセージがでないイコール決定キー押したら即完成ってなもんで、気付いたらなんかこんなセット内容になっていた。
勝手なことは百も承知で、思わず脳裏をこの言葉が過ぎったね。UI、もっと優しくして!
何がセットアップのトリガーになったんだろ。共通素材の【輝銀】か、あるいはデザイン的な理由か。
ただまあそれはそれとして、今は個々のアイテムの品質の低さのほうが由々しい問題ではある。けど調べたところねー、なんかそれもセット内容に起因する事故っぽいんだよねー。
最近はほとんどなくなってきたけど、ほら、昔はあったでしょ。いわゆる“作業失敗”というやつである。
自分のレベルに相応しくない素材を扱うと、付くはずの効果が付かなかったりするやつ。
広義で言うとあれが生じたんじゃないかなって思ってる。
個人レベルに拘わらず作業成功を保証してくれる【ソーダ】を飲んでるのにどうして、って?
………………ごめん、飲み忘れてた。てへぺろ。
いや! 全然飲み忘れてたわけじゃないんだよ!
ちゃんとね、型紙を作り始める最初の最初から飲んでたし、一時中断のち日を跨いで作業するときは飲み直したりしてたんだよ!
ただ、ただですね。今回一度だけ、日を跨ぐでもなくログアウトするでもなく、一時中断したことがありましてですね。
……そう、まさしく本日、細工スキルを取りにビャクヤへ向かったときのことである。記憶を辿ればどうもあのとき、ソーダのバフアイコンが消えていた気がする。
時間経過によるものなのか、作業台から物理的に離れ過ぎたためなのかは定かではない。けどいずれにせよあそこで、効果が途切れちゃったっぽいんだよね。
そして私はそれに気付かず、ソーダ未補充のまま製作を再開してしまった、と。
失敗の原因たる素材も分かっている。ペンダントトップに使われている【月光銀】だ。
あれ、【銀】の最上位素材なんだけど、取り扱い推奨レベルが80かららしい。現在の私のレベルは64……とほほ。
とはいえだったら、月光銀を使ったネックレスだけ失敗扱いになるものでは? と思うものだけれど、なんかね、たまーにあるらしい。一つの手違いが、セット物全体に影響を与えるパターン。
多分今回、その稀なガチャを引き当てちゃったんだと思う。
いやはや、この品質の悪さは非常に残念だなあ。
今まで「スキルくれー!」って言い続けてきた依頼人のことだから、初心者でないことは明白である。
[アビリティ:起死回生]や[火傷無効]は申し分ない効果でも、消耗値が50~100って結構致命的。このくらいの数値だと、私レベルで行ける遠征フィールドでも、一日二日で飛んじゃったりするもんなあ。
さすがにブランドタグはすべて外しておこう。そうすれば私じゃなくても職業仕立屋もしくは細工師の誰かさんなら、【修復】スキルが使えるから。
それでも逐一修理にだすのは大変だろうけど、まあ逐一私に提出しなきゃならないって状況よりはましでしょう。
あーあ。もうこの時点で、お洒落アイテムにしか成り得ないのが確定しちゃった。
もっとも向こうも建前としてはそういうつもりでリクエストしてるわけなので、私が申し訳なく思う必要は全くないんだけど。
で、もう一個。そもそも善なのか悪なのかの判別も付かない要素がまだ存在していまして。
――――――『チャレンジスキル』って、何?
攻略サイトで検索をかけると、該当する事例が一つだけ出てくる。ダナマの賢人、且つ女王でもあるシルヴェストっていうキャラが、[チャレンジスキル:
その説明を読んで、ちょっと複雑な気持ちになる私。
決してマイナスな内容ではない。ないんだけど……習得可能スキルよりは劣るかなー、っていうかこれ習可の劣化版じゃんっていう。
要は、習得可能条件がより厳しくなった集荷なの。
シルヴェストは「試練を乗り越えたとき、あなたはまた一つ強さを手に入れるでしょう」とか言ってそのアイテムをくれるらしい。試練に挑戦し制覇した報酬ってことで“チャレンジスキル”なんだろうね。
実際の試練内容――――つまり取得条件は、『危険レベル5以上のフィールドにて、該当するアイテムを装着して一定期間活動すること』だそうだ。弱いフィールド禁止!ってこと。
あと身に着けてからスキルを獲得できるまでの期間も、通常の習可の二倍くらいかかるそうな。
とはいえ鬼畜難易度なのかと言えばそうでもないらしい。そこそこのきまくら。経験者なら、まあ通常モードよりかは若干手間よね、くらいの体感だって。
これは普通の習可もそうだけど、『一定期間活動すること』ってところの判定が結構緩いのが大きいみたい。
スキル獲得までの経験値バーみたいなのを想像してほしい。
仮にこのバーが貯まりきっていない内にフィールドから離脱したり、装備を外したりしても、途中まで貯まった経験値はおじゃんにならないのだ。
その後でまた該当フィールドに戻ったり装備を付け直したりすれば、残りの経験値を貯めるだけでオッケーってわけ。
確かにそう聞くと難しくはなさそう。遠征の苦手なプレイヤーでも、最悪ちょこちょこフィールド出たり入ったりを繰り返してれば、いつかは取得できるってことだもんね。
……えー、ただですね。今回の私の作品について言えば、消耗値の低さとセットボーナスありきのチャレンジスキルってところが、話をさらにややこしくしていまして。
難易度っていうか、面倒臭さにおいては、シルヴェストのリボンを遥かに凌ぐレベルになっております。
こまめに修理に出す必要があるからね。セットボーナスに組み込まれている【口笛】は5つのセット物全部身に着けてないと取れないってことだからね。
………………えへ。頑張れパンフェスタ氏。
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