9日目 図書館
ログイン9日目
価格設定を変えて一日経つわけだけれども、今のところの売り上げは前日とほぼ同じだ。
でも、今まで新作を追加するたびに売り上げが増えていたことを考えると、変動なしってことは、逆にちょっと勢いが減少気味ってことかも? やっぱり、安さに目を付けて購入してた人もいるんだろうな。
もっともめめこさんの意見も踏まえると、長い目で見ればこのほうがいいんだよね、きっと。今のところ稼ぎがなくてゲームが進められないって状況でもないし、地道に生産がんばろっと。
さて、今日は王立図書館に行ってみようと思う。ここでは新たなレシピや、稀にスキルを覚えることができるらしい。
入館証がマグダラから買った怪しいやつってところが心許ないけど、物は試しである。ゲームの世界だし、取り返しのつかないようなことにはならないでしょう。
中心街にある王立図書館は、古風で巨大な白煉瓦の建物だった。規則正しく並んだ格子窓がおしゃれ。
中に入ると全階通して吹き抜けになっていて、上にも横にも、規則正しく本棚の塔が並んでいる。本棚と本棚を繋ぐのは、張り巡らされた階段や、空中に渡された通路、そして
迷路のように入り組んでいて、人の動きなどを眺めていると目が回ってしまいそうだ。
「こんにちは。図書館をご利用の方は、こちらで入館許可証の提示をお願いします」
膨大な情報量に呆気に取られていると、横から声がかかった。
カウンターで、兎耳のお姉さんがのほほんと微笑んでいる。ここで受付を済ませるようだ。
私はどきどきしながら、マグダラから買った【王立図書館の入館許可証】を渡した。
お姉さんはそこから何やら番号を読み取って、デスクに置かれた機械に文字を打ち込んでいく。タイプライターとパソコンが合体したかんじの、アンティークなようなそうでもないような不思議なメカだ。
「はい、確認が終わりました。ありがとうございます」
至極あっさりと、お姉さんは許可証を返してくれた。特に何の疑問も抱いていないようだ。
なんだ、ほんとに大丈夫なんだ。
それにしても、旅する商人からこういう公的な証明を買い取れる世界って……うーん、よく分からん文化設定である。まあ、向こうがそれでいいよって言ってくれてるんであれば、こっちとしても郷に従うことに文句はない。
それじゃレシピ&スキル探しといきたいところだけど、えーっと、どうすればいいのかな。
「はい、いかがなさいますか?」
お姉さんにもう一度話しかけるコマンドを入力すると、選択肢が現れた。
→・本の探し方を教えて
・お勧めの本を教えて
あ、よかった。これだよね。
本の探し方を教えてください。
「図書館はまるで本の海――――――いえ、本の宇宙のようですものね。この膨大な量の書物から、目当てのものを見つけるのは難しく思えるかもしれません。でも、本との出会いは奇跡などではないのですよ。あなたが本を探しているのと同じように、本もあなたが探してくれるのを待っています。その本はきっとこの宇宙の中で、あなたに向けて星のように明るく輝くでしょう。素敵な出会いがあるといいですね」
えっ、何それ。めっちゃ抽象的。
もう一度教えを乞うても、彼女は同じ台詞を繰り返すだけだ。本が星のように輝くとか何じゃそりゃ。オカルトじゃん。
などとぷんすか怒っていると、私の視界の端で、きらりと何かが瞬いた。見上げると、一つの本棚の端で、何かが青い光を発している。
……え、もしかしてあれがレシピを入手できる本ってこと? そういうシステムってこと?
オカルトどころか、お姉さんはとてもメタい内容を説明していたらしい。成る程ね……本との出会いは奇跡でもなんでもないよね……。
でも、とにかくこれでレシピ探しの方法は分かった。
私は階段や空中通路を駆使して、かなり高い階層にあるその本棚に辿り着く。そして青い光を発する本を開くと、ダイアログが現れた。
【チェスターコート】のレシピを手に入れた!
コートか、いいね。アレンジのしがいもありそう。
他にもあったりするのかな……と、館内を見回すと、今度はかなり下――――エントランスのフロアよりも下だから、地下になるのかな――――で、また青い光が輝いている。
これが現実だったら、ダイエットによさそうな運動量&移動距離である。
そんなかんじで、入り組んだ道のりに苦労しつつも、さらに【ロリィタヘッドドレス】、【エンジニアブーツ】のレシピ、また【修復】のスキルを入手することができた。
【修復】は、消耗してきたアイテムを新品同然に戻せるスキルらしい。
但し、自分の専門分野のアイテムのみとのこと。それとブランドタグが入っているものは、製作者でないと直せないとのこと。
ブランドタグってなんだろ? 調べてみよ。
******
【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・総合】
[ナルティーク]
やっと初めて霧の結晶10個集まった
これで体内図書館宿せる
待ってろギルトア~~~~
[ウーナ]
おめ
昔先に備忘録とっちゃって絶望したのはいい思い出
[ミルクキングダム]
リルステンに霧ケツ貢いでコメットクロウの羽が返ってきた俺の話する?
[もも太郎]
それはただの情弱
[マ ユ]
地獄耳が欲しくてここ1週間くらいずっと霧ケツ10個持ち歩いてるけどまじでマグダラが見つからない
[あざらし]
ダナマが一番出やすいって聞くけど
[もも太郎]
オカルトやん
[レティマ]
もはやマグダラを捜すために地獄耳が必要っていう
完全に持たせる人間まちがえてるよね
[アラスカ]
マグダラといえば、あいつが売ってる図書館入館許可証って普通に使えるものなん?
学院上がりだからもとから持ってるけど、なんか気になって
[まめのすけ]
あーそれ半トラップな
一部の受付職員はスルーしてくれるけど、それ以外だと罰金&許可証取り上げになるぞ
[ウーナ]
あと書庫には入れない
入ろうとすると許可証見せなきゃいけなくなるから、その場でアウト
前科もつくからご利用は慎重に
[もも太郎]
エミリアバイト確定な件w
[アラスカ]
うわーえげつな
てかこのゲーム前科制度なんかあんの?
気まま暮らしとは一体…
[ナルティーク]
騙されてはいけない
きまくらは自由に伴う責任というものを嫌というほど突きつけられる社会教育ゲーだ
[マトゥーシュ]
。をつけろ
[ナルティーク]
すみませんでした
誤字:きまくら→きまくら。
[マユ]
まあ許可証詐称くらいなら前科期間も短いから
確か2日とか
[universe202]
ん?俺その許可証使って普通に書庫にも出入りしてたけど
受付で捕まるっての聞いてから正規の取ったから最近は使ってなかったけど、アプデか何かで変わったのか?
[成金上がり]
前科つくとどうなるんですか
犯罪者の皆さん教えてください
[ミルクキングダム]
前科者っていう称号が強制的にセットされる
その状態でNPCと話したりすると好感度が下がったり、サービスが受けられなくなったりする
犯罪者より(にっこり
[ゆうへい]
俺、おまえのこと好きだぜ(ぶわっ
[ウーナ]
イーフィが正義のヒーローだとしたらダム氏は正義のダークヒーローよな
[もも太郎]
イーフィは正義の変態な
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます