第3話 泥棒
「此処です、ここから入れます。」
テツの案内で俺達は作業用通路を進んでいた。
途中メイン通路では軍人が上流階級の人を案内して港に向かっているのが見えた。
「脱出が進んでいるみたいだね。」
「放送もせずに自分達だけか。」
「それより軍人の数も少ないな、軍艦も無い、こりゃ急がないと不味いか。」
俺は全員の足を早めるように伝える。
「ここを抜けて行けば指示のあった場所です。」
テツは配管の通っているスペースを指差す。
確かに人一人歩けるスペースではあった。
「ヒキ、場所はあっているか?」
「間違いない、地図に無い場所でドック用の配管が通っている。」
「よし、向かうぞ。」
俺はみんなを連れて奥に向かった、
そこには港があり、一隻の艦が停泊したあった。
「ヒキ、どう見る、完成していると思うか?」
「微妙だな、一応外は出来ていると思うが中はわからん。」
「リュウ、周囲に人はいるか?」
「いないな、管理されていないのか?」
「それは好都合、みんな乗り込むぞ。」
「ちょ、ちょっとライ、まさか軍艦を盗るの?」
「アヤカ、これは軍艦じゃないよ、だって、軍が管理してないからね。」
「・・・詭弁だよね。」
「これで俺も船持ちか!」
俺は誤魔化すように強く言う。
「聞いてないし・・・もうわかりました!何かあれば私の家から緊急事態だったと伝えます。」
「さすがアヤカ、そんなアヤカが好きだよぉ~」
俺はアヤカに投げキスする。
「も、もうこんなに時だけ、調子がいいんだから・・・」
アヤカは照れながらも嬉しそうにしていた。
「さっさと行くぞ!船を奪うのだろ?」
「おっと、そうだった!みんな行くぞ!」
俺達は船に乗り込む。
ヒキはエンジンを回すためにリュウの部下を数名連れて機関部に向かって行く、俺達は艦橋に向かって行った。
俺は艦長席に座り、艦を起動させていく。
「主電源ON、システムグリーン、よし、みんな起動を頼む。ってなんだ、これは?」
俺はメインシステムを起動させていたら艦長席に手の形をかたどった物が出てくる。
『登録をお願いします。』
システム音が聞こえてくる。
「手を置けばいいのか?」
俺が手を置くと、手が固定される。
「ライ!」
フウマの慌てた声が聞こえるが、
「問題ない!それよりシステムの起動を優先させろ!」
「わ、わかった。」
フウマは目の前の仕事に集中する。
この時俺は手にザックリ針が刺さっていたが、此処で痛みを訴えるとみんなの手が止まりかねない。
俺は痛みに耐えていた。
『遺伝子情報を習得しました。マスターライ、以後は貴方を艦長として認証します。』
「ありがとう。」
俺の手は解放される。
解放されるときに、手の傷はふさいでくれたようだった。
俺が登録している間も全員が作業を続けている。
フウマは管制席で管制システムの起動を。
ダーイは砲撃手として火気管制システムを。
ダルは操舵手として操艦システムの起動。
ヒキはエンジンの起動を各自行っていた。
「す、凄い・・・」
ミラは初めてみる艦を起動させていく姿を見て感動していた。
艦の各所から光が出てきて、アラームが鳴り響き、それが消されていく。
流れるように全員が取り組む姿に見とれていた。
「なんで、初めて見る艦を起動できるの・・・」
知識がある分、アヤカはミラより驚きが強かった。
基本は学んでいるとはいえ、システムは色々違う筈だ、特にこの艦は軍の新造艦、それを迷うことなく起動させていく、ライ達の才能に驚くばかりだった。
「なんだ、お嬢さんは兄弟の事を知らないのか?」
リュウは驚くアヤカに声をかける。
「リュウさんでしたよね、貴方は知っていたのですか?」
「そりゃな、あいつらどんな艦でも操艦する為に色々調べてたからな。」
「そんな事をしてたのですね。
それで貴方は?」
「俺か?俺は荒事担当だ、直接戦闘を任されてるな。」
「もしかして、貴方もライの夢に乗せられていたのですか?」
「ああ、チンピラの俺達に手を貸せと言ってきたのはアイツが初めてだよ。」
「ライらしいですね。」
「エンジン出力40%、火気管制はどうだ?」
「まだ、20%だ、少し手間取っている。」
「操艦はシステム把握、いつでも出れる。」
「管制システムは・・・操艦には問題無い、内部システムは順次立ち上げる。」
「火気管制が60%を越えたら出るぞ。
出たら直ぐに戦闘になると思え!」
「「「「おう!」」」」
俺達の旅立ちは迫っていた・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます