第24話:加速する惨劇01
「な……!」
「ふえ……!」
俺と無害は絶句した。さもありなん。死体があって部屋中に血臭が充満していたのだから。場所は蕪木殲滅の部屋。蕪木殲滅以外の全ての人間が蕪木殲滅の死を受け入れられないでいた。蕪木殲滅は死んでいた。蕪木屋敷の全ての部屋に例外なく置いてある八十キロにも及ぼうかという黄金の斧に首を切断されて死んでいた。おそらく眠っているところを殺されたのだろう。黄金の斧が突き立ったベッドにて、頭と体を分断して果てていた。
「う……おぇ……」
無害が口元を押さえてうずくまった。吐き気を抑えきれなかったのだろう。まぁある種のショッキング映像だ。無理もない。
「殲滅兄様……」
そうボソリと呟いたのは殺戮だった。
「殲滅……」
そうボソリと呟いたのは蕪木制圧だった。
「……っ! っ!」
絶句しているのは混乱さん。こっちもまぁ無理はない。同じくカオス姉妹の……その妹……混沌さんはといえば、
「………………」
無言で蕪木殲滅の死体に近付いて、無造作に蕪木殲滅の首を断ち切ってベッドに突き立っている黄金の斧を掴んで持ち上げた。そして、
「………………ふむ」
と呟く。冷静そのものだ。まるで動揺していない。そこに、
「混……沌……?」
と殺戮が呟いた。
「………………はい。なんでしょうか殺戮様?」
「なんでそんな重たい斧を持てるの?」
「「「「っ!」」」」
俺を含めたその他四人は驚愕した。たしかに……純金の戦斧を持ち上げるには力がいる。振りかぶるなどもってのほかだ。
「………………これくらいなら制圧様や藤見様も持てるでしょう?」
俺と制圧に目くばせしながら混沌さん。
「そりゃ……持てるが……」
遠慮がちな俺に、
「…………」
沈黙する制圧。しかして否定もしない。持てるということだろう。しかしそういうことか。なるほどね……。
「なんで……」
絶句していた混乱さんが空白に問う。
「なんで……殲滅様が……?」
「祟りだろ」
俺はあっさりと言った。
「祟り……?」
「そ。祟り。首切島の祟り」
「そんな……だって私と混沌ちゃんには一回もふりかからなかったのに……! 何で今になって……!」
「さあね。どこかで主に障ったんじゃないか? それより混沌さん」
「………………何でしょう藤見様?」
血まみれの黄金の斧を肩にかけるという物騒のポーズで聞き返す混沌さん。
「朝飯にしてくれ。腹が減った」
「………………はい。ただいま」
混沌さんは黄金の斧をその辺に捨て置いて蕪木殲滅の部屋を出た。おそらくキッチンに向かったのだろう。俺はパンパンと二拍してから、
「ほい。じゃ解散。朝飯食うぞ」
そう全員に言って、うずくまっている無害の背中をさする。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃ……ないかも……」
「とりあえず朝飯を食おう。そしたら元気も出る。みのもんたもそう言ってた」
「食事する気分じゃ……ないよ……」
まぁ血の臭いが充満しているここじゃ食欲のわきようもないが……。
「ともあれ無理矢理胃に押し込めろ。飯食わにゃ始まらんぞ?」
無害の手を握って立ち上がらせる俺。
「うう……なんで藤見は……大丈夫なの……?」
「人の死なんて数えきれないほど見てきたからな。正直今更死体が一つ増えようと感慨なんて湧きようがないな」
あっさりと俺は言う。まぁ事実だから他に言い様もないのだが。
「殲滅は誰が殺したのだ?」
ポツリと……そう呟く蕪木制圧。
「犯人がわかったからってどうしようってんだ。外は嵐でボートは使えない。外に逃げることもできないんだぞ」
「だからこそ犯人を見つけねばならないだろう! もし犯人が他にも害意を持っているなら第二第三の被害者が出るぞ!」
「だから今回のコレは祟りだって……」
「そんなオカルトを信じろというのか!」
「オカルトじゃないんだがなぁ……」
ポリポリと頬を食指で掻く俺。それから俺は立ち上がった無害の手を引いて、
「大丈夫か? ダイニングまで行くぞ?」
「うん……そう……だね……」
蕪木殲滅の部屋を出た。
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