第43話 『ちぇっく・めいと!』
「…連れがいないのでな。最初から全力で行くぞ。」
「望む所だオラァッ!」
ゴォォォォォ!
平は一気に炎を放つ。
(炎使い…か。ならより好都合だ。)
卯月は避けようとするも、いつの間にか自身の周りを炎の渦が覆っていくことに気づいた。
「短期決戦という訳か…」
「最低あと一戦残ってんだ。消耗なんかしてらんねぇよ。」
「ふっ…その心配はしなくてもいい。君はここで始末されるのだからね。『
卯月の肉体が膨張していき、ただでさえ屈強な体が更に強大になっていく。
卯月は炎の渦を、無傷で突っ切って行った。
「へへっ、こいつマジかよ…!ならこっちも行くぜ!『
平の肉体が炎に包まれる。
ドォォンッッ
突き出された互いの拳が、勢いのままに激突する。
平の肉体はかなり鍛えられていたが、如何せん相手が悪い。
バッッッ!
力負けした平は、そのまま壁にふっ飛ばされていく。
「ぐ…うぐっ…」
(やべぇ…!左手はもう使いもんになんねぇぞ!純紅蓮の最大の弱点は攻撃範囲の狭さにある。それに…さっきから息苦しい。もしかして空気が薄いのか?炎の勢いも段々弱まってきているし、早めにケリをつけないと死ぬ!)
平が苦悶しているのと同時に、卯月もまた追い詰められていた。
炎が全身に燃え移っていたのだ。
(…この技の火力はキツいな。気圧を下げて威力を落としているとはいえこれか。火傷が広がっていく…!)
「この炎は一度ひっついたら相手を焼き尽くすまで離れねぇ。」
(とはいえ、ちょっとずつ火力は落ちてるけどな…何が両思いだ、能力の相性最悪じゃねぇかよ。)
「短期決戦狙いはお互い様、ということか…面白い!」
卯月はそのまま平に殴りかかっていく。
(この際多少の火傷は仕方がない。殴り合いに持ち込んで押し込む!)
(殴る蹴るなら流石に勝てねぇ…純紅蓮の範囲内で避けながら炎を放つ!)
卯月の一挙一動のスピードは身体強化によって底上げされていた。
しかし、中々平に近づけない。
(多少の火傷を覚悟したとはいえ、やはり平の火力は脅威。イマイチ攻めきれないな…今でまだ5分か。なら気圧の低下による窒息を待ったほうがいいかもしれん。)
卯月は今度は打って変わって、平から離れていった。
(そろそろ息がやべぇ…!それがバレたからか、相手は逃げの一手を打ってきやがった。ここで決めるしかねぇ…が、スピードは相手の方が上だ…)
平は、純紅蓮を解除する。
そして炎を卯月の前の電柱へと撃ち出した。
ドンッ、ズシィィィィン!!!
電柱は卯月の前に倒れて道を阻む。
燃えている、切れた電線はバチ、バチッと火花を鳴らしている。
(この程度で止められると思ったのか?甘いな!あまり離れすぎると気圧低下の範囲から逃げられてしまう。この辺でオロオロしてるふりをするか…)
卯月は立ち止まる。
(止められたのか?それとも誘ってんのか?わかんねぇよ!クソが!…もうやるしかねぇ!)
平は全力で火炎を放射した。
(…私の体に熱への耐性があるのはさっきでわかっただろう。気圧が低下している今、私を殺す火力を出すのは不可能だということは流石に理解しているはずだ。絶望してヤケになったか?いや、これはおそらく…)
炎を抜けて、平が走ってくる。
(やはりな。奴にとって私を殺す最後の方法は至近距離から焼き尽くすこと。が…私の肉体は強化されているので、力押しでいい。残り時間は2分!時間切れの恐れはない!チェックメイトだ…!)
卯月は平の後ろに猛スピードで回り込み、カウンターパンチをお見舞いする。
(決まっ…!?)
─パンチは、平の体をすり抜けていった。
「ずっと、思ってたんだよな。純紅蓮は自分の体を炎に変えて攻撃する技。けど…物理攻撃は普通に効くんだよ。おかしいよなぁ?それは完成した技と言えねぇよなぁ、先生?」
炎が卯月を覆っていく。
(あ、熱…)
「その身に焼き付けろ、『完成・
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「お、おい!なんだこの部屋は…これは…?」
「あら?あなた負けて死んでここに来てるんですのよ?」
「ベリアル…そうか。私は…負けたのか…自分が間違っていたとは思っていない。私が弱いのが、悪いのだ。」
「よぉくわかっているじゃないですか…さて、どうしましょうか…」
「もういい…好きにしてくれ」
「あら…すっかり燃え尽きてしまったようですわね。では…」
卯月がカードに吸い込まれていく。
「一人ではないですよ、十文字さんも一緒にいますから。よかったですわね?」
残り4人
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