第40話 『とりぷる・すりー!』

(さて…ホテルの小童と飛行小僧、どちらから攻めればよいか…)

 冥崎は悩んでいた。

 そしてそれは、米沢も同じだった。

 だが、合理だけは違う。

(どっちを先にやるか、なんて考える必要はない。ビームで全部薙ぎ払う!バカみたいだけどこれがベストだよね!)

 止め処なく放たれるビームは、現在進行系で二人を襲っている。

「なぁ爺さん、なんかアイツムカつかね?」

「うむ、その通りだな。一時休戦とでも洒落込むか。」

 竹とパチンコ玉が、ホテルに突き刺さろうとする。

 合理はいつぞやのスーツを着て、空へと抜け出していった。

(まぁ組まれること自体は想定済みだ。大した問題はないよ。それより大事なことは、二人とも抜け駆けする可能性があるということ。初めから組んで戦うならまだしも、即席でペアを作るなんて、いつ裏切られるか気が気でないよ。)

 合理はそのまま機関銃を背中から生やし、狙撃する。

 狙いは動きの少し鈍い冥崎の方だ。

 しかしそれでも避けられて、合理はいつの間にか巨大な樹木に囲まれていた。

「トドメだ!」

 米沢はパチンコ玉を、2に発射する。

 パチンコ玉は、飛んでいき…一つ、爆発した。

「…ッ!?」

 合理は即席のカーボンナノチューブの壁で防いだものの、ある程度のダメージは喰らっている。

 一方冥崎は─

 黒い刀が、近づいたパチンコ玉を切り裂いていた。

「え、そ、それは…!」

「ほう?この刀を知っているのかね?」

「これは…渋谷の…なんで?」

「ふん、ついでだ。タネ明かしをしてやろう。儂の加護は『簒奪さんだつ』の力を持つ。儂の陣営の者たちが殺した人間の契術や加護を奪う…そういう力だ。自前のものも含めると、今で能力は5つ…といったところか。これは君の仲間がその中に入っていただけのこと…不幸なことだ。」

「お、お前…殺す…殺してやる!血肉の一片すら!塵芥にしてやる!」

(今のが決定打にならなかったのは痛いが…まずこれで戦局は一旦、完全な三つ巴になった。少なくとも、ある程度の信頼の上に成り立つ協力関係はもうできない。だからこそ…!)

 米沢は冥崎に大量のパチンコ玉を撃ち込む。

 刀がパチンコ玉を切り裂こうとした直前、一斉に爆発する。

 合理はそれに合わせて機関銃を撃ち込む。

(やはり!若い男の方は私情に流されやすいと見た。冥崎の加護は厄介だ。ここで始末させてもら…)

 煙が晴れた時、米沢は目を疑う。

 冥崎の死体ではなくて、粉々の石がそこにあった。

「…位置交換!まさか…お前、お前…!」

 合理は怒りに震え、顔を赤らめる。

(逃げられたか…?いや、おそらく…!)

 ズシャァァァァア

 大規模な樹木が二人を襲う。

 米沢は飛行能力で回避するも、対照的に合理はこれに取り込まれてしまう。

 方法は同じだったが、スピードが違ったのだ。

「ぐっ…!」

 合理は鉄の塊で身を護るも、樹木の中にそのまま取り込まれていく。

(窒息狙いっぽいな。あいつは…もうダメっぽいな。宮藤の回収を優先するか。)

 ─米沢が宮藤の元に辿り着くと、宮藤はかなり疲労していた。

「おい大丈夫か?すごいことになってたが。」

「かなり血は消耗してもうたけどな…」

「なぁ…俺はまだ、上に行けるか?」

「もちろんや」








(一人逃したが…まぁいい。これ以上樹木も生成できん。一人ずつ、確実に殺してしまえばよい。…保中の反応が!)

 樹木を突き破り、合理が現れる。

「見つけたぞ…!クソジジイ!」

「坊主が…礼儀がなっとらんぞ!」

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