第14話 『でっど・えんど!』

「…そうか。渋谷が…」

 校内放送を切った直後、合理は静かにうつむいていた。

「感謝、只管ひたすら捜索」

「そうだね。急ごう。」

 二人は放送室を出る。

 ─直後、合理は近くの人形3体を銃で破壊した。

「うぅ…やっぱり気分が悪い。後で生き返らせるから…といってもなぁ。」

 その時、音無からメールが来る。

『校内放送を聞いたぞ!1、2階は私達に任せ給え。3、4階の方を頼む。』

『了解、屋上も見ておく。』

 と、合理が返信する。

「大丈夫?」

「大丈夫だよ…君は優しいね」

「…敵だけど?」

「うん、できれば降参してほしいけど…」

「不可、私の理想、君の望む世界と矛盾」

「…そうか、残念だな」

 二人は階段を登って行こうとする。

 ピロンッ

(メール…?)








 二階、北廊下にて戦いは起こる。

「…見つけました」

「手筈通りやるぞ」

 出口と渋谷の形をした機械人形が、平と音無と正面から対峙した。

「稲葉からのメール通り、人格まで弄られるんだなぁ、チッ、同情するぜ」

「ぐぬぬ…なんて悪辣な…傷つけずに倒すことはできるのか?」

 暫く携帯を弄った後、平が口を開く。

「おし、お前は逃げろ。俺は一旦捕まるわ」

「えっ!?」

「安心しろよ、俺の戦力は人形遣いも欲しい筈だ。つーわけで降参だ。勝てる気がしませーん!」

 平が小声で音無に囁いた後、両手を挙げて出口の人形に連れられて行った。

 音無は3階に設置した石と自身を入れ替える。

「だ、大丈夫なんだろうな…?」








 音楽室に一人と一体が入る。

「争いはほとんどの場合無価値なことだ。必要になる時はあるとはいえ、最小限で済ませるべき。それを理解している君はとても賢いよ。」

「…それはテメェが勝つ前提じゃないか?」

「実際そうでしょ?」

 嵯峨山が平に触れる。

(…あれ、人形化しな)

「ご案内どうも」

 ゴウッ!

 平は嵯峨山の周りを炎で囲む。

「ほう?」

 出口人形が掴みかかってくるも、素の力で跳ね飛ばす。

生憎あいにくよぉ、俺は自分への契術や加護を任意で無効化できんだよ。さぁて、テメェはこれで袋小路に入った訳だが気分はどうだ?」

 ドアが開く、と合理と稲葉、さらに音無が入ってきた。

「おうお前ら!ってか音無までいるのか。」

「うむ、たまたま合流できたのだ!」

「それにしても足音で合図なんて、よく考えたね。」

 平は足音のリズムを暗号にして、電話を繋げっ放しにしておくことで自身の位置を知らせたのだ。

「さぁて、問題はコイツをどう片付けるかだが?渋谷人形も来るかもしれねぇし」

「僕が見張るよ。無力化する策はある。」 合理が応えて、。

「失血死、毒殺」

「どういうことだ?」

「…なるほど、自身のダメージを押し付けるって出口は言ってたらしいな。でも人形は血を出していない。だから失血死や毒殺ならそれは適用されないってことだ。」

「流石だぞ稲葉殿!」

「…羞恥」

 稲葉は赤い頬をこちらに向ける。

「なら合理にやって貰うか。あいつ元医者らしいしそーゆーのは詳しいだろ。」

「わかった。あまりなぶるようなことはしたくな…」

「すまなかった」

 突然嵯峨山が口を開く。

「貴様ッ、今更謝ったところで…」

「君達を過小評価し過ぎていた。他の凡愚共と同じにして済まなかった。そして…、僕にを切らせることを、末期の時まで光栄に思うがいい。」

 嵯峨山の体から白い煙が出る。

「─ッ!?」

 それを吸い込んだ音無と稲葉は、すぐに倒れ込む。

 合理は即座にガスマスクを創り出すと自身と平に被せる。

「…息はある、けど昏睡状態になってるね」

「テメェ何しやがった!」

「催眠ガス…これが僕の契術。大したことないから恥ずかしくて使わなかったが…」

 その時、二人は無数の足音を聞く。

「合理!時間がねぇ。奴を始末しろ!」

「わかった!」

 炎が少し開く。

 合理は毒薬を出すと、嵯峨山に飲ませようとする。

 ─が、その前に嵯峨山は隠し持っていたナイフで自らの頸動脈を切る。

 そして出口の死体が、代わりに倒れた。

「…っ!?」

 二人が振り返ると、嵯峨山がそこにいた。

「いやぁ、自決用のナイフ。持っててよかった。」

「待てッ!」

 嵯峨山は一瞬寝ている二人に触れようとするが、位置的に無理だと判断して人形の群れに潜り込む。

「安心しなよ。僕はそう遠くへはいかない。このガスの効果範囲って結構狭いからね。ただ…人形をみなごろしにするのとガスマスクが壊れるの、どっちが、先かな?」

 渋谷人形を先頭にして二人に向かってくる。

 すかさず合理は壁を創り出して人形達を抑える。

 しかし、渋谷が切り開いた穴から人形が入り込もうとする。

「どうすんだ!?俺の炎を使っても一掃できるかわかんねぇぞ?」

(平の炎を使えば半分以上は燃やせるだろう…けど)

 合理は考え込む…が、いい考えが思いつかない。

「おい早く決めろ!時間がねぇ!」

 壁はもう限界寸前だ。

(どうする…?)

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