え?クラス転移で俺だけスキル無し?役立たずは置いていく?いや、俺、異世界召喚二度目で強い魔法たくさん使えるから普通に無双するよ?
taki
第1話
嫌な夢を見ていた。
思い出したくない、ずっと封印しておきたい記憶の夢だ。
夢の中で、俺はとある王国の王城の中の中心部、玉座の間と呼ばれる場所で、その国の王様と対面していた。
「さあ、王よ。俺はあんたに言われた通りに魔王を討ち滅ぼした。約束通り日本に返してもらおうか」
「もちろんだ。勇者よ。よく巨悪の魔王を討伐してくれた。これでこの世界に平和が訪れるであろう。送還の準備はすでに終えている。さあ、この魔法陣に乗るがいい」
そう言って指し示された場所にはすでに俺を日本に返すためなのであろう魔法陣が敷かれてあった。
よかった。
魔王を倒せば日本に帰してやる。
この約束のために俺はこの10年間頑張って死ぬような修行と、ほとんど死と隣り合わせの魔王討伐の旅に臨んでいたのだ。
これで実は嘘でした、なんてオチだったら俺は王国に対して宣戦布告をしていたことだろう。
「日本に帰れる…俺の故郷に…」
俺はもう記憶の中で薄れかかっている日本の街並みを思い起こしながら、魔法陣に乗った。
すると王の顔がニヤリと歪んだ。
「…?」
俺が違和感を覚えながらも送還を待っていると…
「なんてな!!日本に送還すると言ったがあれは嘘だ勇者!!お前が送還されるのは魔の森…!!魔物の跋扈する生存不可能な森の中よ!!!」
「なっ!?」
「騙されたな…!誰が使い捨ての勇者のために、費用のかかる世界間の送還をするものか!!お前はもう用済みだ。用済みの勇者だ…!これまでの勇者と同様…最後は魔の森で魔物どもに喰われて死んでいけ…!!」
「た、謀ったな貴様…!」
「くははははっ!!騙される方が悪いのだ!」
王の高笑いが響き渡る。
俺は慌てて魔法陣から出ようとしたが、もう手遅れだった。
魔法陣に魔力が流されて転移の魔法が発動。
気がついた時には、俺はどこともしれない深い森の中にいた。
空を見上げると、紫色の不気味な雲が立ち込めている。
…俺は魔の森に送還されたことを知った。
「くそがぁああああああああ!!!」
あまりの憎さに俺は絶叫する。
殺す。
絶対に殺す。
あの王を殺してやる…!
憎しみに歯を食いしばるが、今更どうにもならない。
無警戒に相手の敷いた魔法陣に乗った俺のミスだった。
『グルルルル…』
『グギーッ!グギーッ!』
『グロォオオオ…』
そうこうしているうちに、周囲の茂みがガサガサと鳴り、不気味な鳴き声が聞こえ始めていた。
魔物たちが近づいてきているのだろう。
「…っ」
俺はとっさに戦闘態勢に入る。
「必ず生き延びる…生き延びて…復讐を!」
俺の体には力がみなぎっていた。
このまま魔物の餌になって人生を終えるつもりなんて毛頭なかった。
俺は生きてこの森を出る。
そしてあの王に復讐する。
勝手な都合で呼び出して修行と魔王討伐を許容し、挙げ句の果てに日本へ送還するコストすら惜しみ、俺を使い捨てやがったあの男を絶対に地獄に叩き落とす。
それまでは、死ぬわけにはいかない。
「うおおおおおおおおお!!!」
俺は紫色の空に向かって雄叫びをあげて、四方から迫ってくる魔物たちに対して斬りかかっていったーーーー
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