第7話 沈黙の幽霊
俺な、沈黙の幽霊が見えるんだ。
啓介は急にそんなことを言い始める。
「なんだ、沈黙の幽霊って?」
聞くとどうやら、沈黙を作る幽霊らしい。その幽霊が近づくと場に沈黙が生まれるのだという。
「見てろ、あのカップル、五秒後に沈黙が来るぞ」
啓介が指を刺した方向には、楽しそうにしゃべるカップルがいた。5。4,3,2,1,
すると、0の瞬間にカップルは黙りだした。あんなに楽しそうだったのに、ピッタリともしゃべらなくなる。
「見たろ、すごいだろ」
これには、驚きだ。前から変なやつだとは思ってはいたが、こんな特殊能力まで持っているとは。
「お、あの幽霊。こっちに近づいてきたぞ」
本当に沈黙が起きるのか不思議に思った。それと同時に試したくもなった。じゃあ、自分がしゃべり続ければいい。
あーーーとか、わーーーとか適当に声に出してみる。これで沈黙は起きまい。しかし、啓介はもう来るぞ、と言ってくる。あと、5秒、4秒、3秒。
すると、啓介は急にこっちを向き変える。何事かと思い、目と目が合う。
「あ、そういえば言い忘れてたけど。俺、結婚するんだ」
沈黙が流れる。
「あっ」沈黙を作ってしまった。
幽霊め。それは反則ではないか。
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