第14話 借金 5080万8305ゴル 

「や、やめろー!」


ニクラスは火炎瓶に火をつけるのを止めようとするが、残りの2人が立ち塞がる。



(このままじゃ、止められない…!)



そう判断したニクラスは、”旋風刃” と ”風障の盾” を装備し、”旋風刃” を火炎瓶にむける。


突然剣と盾を取り出し、構えたニクラスに驚く3人組。


「ガキが!

 武器まで出したらもう洒落じゃすまねえからな!」


そう言いながら立ち塞がっていた2人も武器を構えた。


その2人の間を風が通り過ぎ、着火しようとしていた火種をフッと消した。


ニクラスの魔力ではそれが限界だった。


「あっ!

 消えちまった!」


「も、もしかして風魔法…か!?」


(あ、ちょっと怯んでくれるかな?)



「…ぷ。」


「え?」


「グハハハハ!!」


「笑かすなよ!!」


「まさか、今のそよ風が魔法だったなんて…!

 こんな弱々しい魔法初めてですよ!

 ププッ…。」


「あ〜、面白え。

 だが、俺らに楯突いた落とし前はきっちりつけねえと…、なっ!!」


3人組の1人がおもむろに斬りかかってきた。


(は、速い…!)


“旋風刃” と ”風障の盾” による素早さ補正があるニクラスだが、それ以上に相手の方が早い。



ガキッ!



なんとか盾で攻撃を防ぐことができた。


素早さは劣るが、盾による防御力は相手の攻撃力を上回っているようだ。



「生意気な…!

 いい盾持ってるじゃねえか…!

 その剣も上等そうだ。

 しかも突然装備が出てきたとこ見ると、マジックバッグも持ってるな?」


「マジかよ!

 こんなガキが…!」


「今日は…最高の日ですね。

 あのテレージアを手に入れるだけでなく、レアアイテムまで手に入れることができるなんて。」



3人組はニクラスを脅威に思うどころか、より一層醜悪な笑みを浮かべる。


「そ、そんなことさせるもんか!」


ニクラスは ”旋風刃” で斬りかかるが、相手は軽々とその攻撃を避ける。


「オラオラ、そんなんじゃ当たんねえぞ?」


「はっはっは!

 油断してくらうんじゃねえぞ?

 剣の性能も高そうだからな!」


「はっ!

 バカ言うんじゃねえよ。

 当たるかよ、こんなもん。」


そう言いながら、再び剣を振るってくる。


しかし、なんとか盾で受け止める。


「チッ。

 とはいえ、その盾は厄介だな。」


(勝てなくても…、足止めをしておけば火事は防げる!)


このまま持ち堪えればなんとかなる、そうニクラスが思った時。



ザシュッ…



三度襲ってきた相手の斬撃を盾で防いだ瞬間、もう1人の冒険者の剣がニクラスの腹部を切り裂いた。


「うっ…ぐあっ…!」


ニクラスの腹部から血が溢れる。


(ぐっ…。

 熱い…!

 痛い!痛いよ…!)


思わず膝をつくニクラス。



「おいおい、俺も忘れてもらっちゃ困るぜ?

 試合じゃねえんだからよ。

 ヒッヒッヒ。」


「余計なことすんじゃねえよ。」


「残念でしたね。

 せっかく格好良く登場したのに、思ったよりすぐやられちゃいましたね〜。

 

 時間もないし、こっちも仕事しときますかね。」



再び火炎瓶に火をつけようとする。


ニクラスは痛みを必死に堪えて、”旋風刃” からまたもや風を発生させる。


なんとか火種を消すことができた。



「チッ!

 鬱陶しいですね…!

 もう殺してしまったらどうですか?」


「火をつけたところを見つけて捕まえようとしたが、反抗されたから仕方なく殺した、ってとこかな。

 犯人を捕まえた褒賞としてお前の持ち物をもらっといてやるからな。」


「ふざ、けるな…。」



そんなニクラスの言葉を無視して、火種がまた灯される。


ニクラスは魔法を発動しようとするが、流石に三度も消させてはくれなかった。



ドガッ



顔面を蹴り飛ばされ、吹っ飛ぶニクラス。



「ぐ……。」


「何度も手を煩わせるんじゃねえよ。」



そして、火種が火炎瓶に引火する。


ニヤッと笑う冒険者たち。


「残念でしたね、【よた野郎】。」


そう言うと、その男は火炎瓶をテレージアの家と投げつけた。



ボウッ



「や、やめろ…。」


ニクラスはなんとか起き上がり、火を消そうとする。


しかし、目の前には格上の冒険者2人。


殴られ、蹴飛ばされ、浅く斬りつけられる。


すぐに殺さないよう、弄んでいるようだ。



「あんまりいたぶると、疑われますよ?」


「そうだな。

 じゃあ一思いにやってやるか。

 じゃあな、【よた野郎】。」

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