アースの書~逃走・2~
ハッ! 俺の事よりも他のみんなはどうなったんだ?
皆を巻き込まない様、一か八かで
『みんなはどうなったんだ? オーウェンは? レインは? ジョシュアは? オリバーは?』
無事でいてくれればいいんだが……。
「ご安心ください、アース様以外はご無事でス」
『……そうか。それは良かった』
何とかファルベインの自爆を防げていたのか。
本当は俺を含めて全員が無事っていうのが一番いい形だったんだけどな。
まぁみんなが無事だったからいいとしよう。
「で、今は英雄五星と呼ばれてますヨ」
『ブッ!』
英雄五星って。
4人共そういった肩書は嫌いだから拒否しただろうな。
けど、この感じだと無理やり呼ばれているいるんだろう。
……ん? 待てよ、五星って事は……。
「あっ無論、アース様を含めてでス」
『……デスヨネ』
暦だけじゃなくて、そっちにも俺の名前が入っているのか。
勘弁してくれよ……せめて名前を残すとしてもどっちかにしてほしかった。
「あのさ~色々聞きたいのわかるけど、とりあえず立ってないで座ったら?」
空中で浮きながら胡坐をかいているエイラが諭してきた。
そうか、俺はともかくラティアちゃんを立たせたままは駄目だよな。
『そうだな』
この部屋にある椅子は1つ。
となれば、ラティアちゃんに椅子を譲って俺はベッドに座るとしよう。
『それで色々聞きたいんだけど……』
「はイ! なんでも聞いてくださイ!」
『……』
あれ、なんでラティアちゃんは俺の隣に座って来たんだ?
横にいるより対面の方が話しやすいんだけれども。
「どうかしましたカ?」
ラティアちゃんが不思議そうに俺を見つめている……のかな。
前髪がかかっているから表情がよくわからん。
……まっいいか、ラティアちゃんを椅子に座る様に言うのおかしいし、俺が椅子に座り直すのはもっとおかしいしな。
『いや、なんでもないよ』
これ以上話を止めるのもあれだし続けるとしよう。
兎にも角にも、まずはこれを聞かないといけないよな。
『えーと……話の続きなんだけど、どうして俺の体がこうなってしまったんだ? ラティアちゃんがフランクさんの娘だから
正直、ゾンビやスケルトンで蘇るのは嫌だけどな。
「あっ私の事はラティアとお呼びくださイ。え~と……そのお体になってしまった理由なのですが、本当はアース様の体で行おうとは思っていましタ。でも、ファルベインとの戦いでアース様のお体は粉々に吹き飛んでしまったようで……どうしようもなかったのでス」
マジかよ、俺の体って粉々に吹き飛んでしまっていたのか。
うわー……何も残っていないとか悲しすぎる。
「もちろん、他の入れ物へと考えてはいたのですが……この別荘では鎧くらいしか人型がなかったのデ……」
だからって鎧を使うのはどうなのよ。
まあ納得はしていないが、この体の理由は分かった。
あと、この娘の感覚が少しズレている事も。
『なるほどね。にしても、ラティアちゃ……ラティアはすごい
こんな事例は初めて聞く。
これもまた
「すっすごい
『はあ?』
ラティが両手と頭を左右にブンブン振って否定している。
いやいや、
それで蘇った俺がここに居るわけなんだし。
『それはおかしいじゃないか、俺はこうして……』
「あ~、そこはあ~しが説明した方がいいかな。ラティは一応
エイラが俺の目の前に胡坐をかいたまま俺の傍に飛んで来た。
結局、使えるのか使えないのかどっちなんだよ。
「ただ、ラティ自身が持っている魔力量が少なすぎて使えない状態だっわけ。で、あ~しと取引をしてあ~しの魔力をラティに流し込んで
そういう事だったのか。
魔力量不足で術が使えないってのはよく聞く話だ。
確かにそれだと
『ふむ、その話を聞いて納得はしたよ』
……したけど、同時に懸念も出て来た。
そこまでして俺を蘇らせる意図は何だ?
それが一番大事だった……色々と起こりすぎて冷静さがかけていたな。
何かしらの意図があると考えて聞くべきだった……。
『…………どうしてそこまでして俺を蘇らせたんだ?』
今更感はあるが、この言葉で2人の反応を見る。
少しでも不審を感じたら逃げる事を考えよう。
「あっそれはアース様にどうしても会いた……じゃなくテ! おっお礼が言いたかったんでス!」
『お礼?』
マジか? たったそれだけで死人を起こすってか。
迷惑な話だな。
「はい! 家にいらっしゃった時、私は落ち込んでいたのをアース様は優しくお声を掛けて励ましてくれたのでス……あの時はありがとうございまス! あの言葉の励みがあるから私は今を生きていられるんス!」
『そっそうか、それは何より……』
そんな事あったっけ? 俺は全然覚えていないぞ。
嘘なのかな……やはり、ここは逃げるべきか?
「……クンクン……ん? 何か焦げ臭いような……ああっそうだった! シチューを食べようと思って火にかけたんだった!」
「なんですっテ!? そんな大事な事を忘れないでヨ!」
焦げ臭い? ……俺には何も臭わないな。
やっぱりこの体は嗅覚を失っているか。
「その時にラティがあ~しを呼んだんぢゃん! あ~しのせいじゃないよ!」
「とっとにかク! 早く消しに行くわヨ! このままだと火事になっちゃウ!」
2人が大慌てで部屋から出て行ってしまった。
それを見て俺は立ち上がり窓に近づく。
窓には施錠をしてなければ、何らかの魔法が掛けられている様子もない。
しかも、この部屋は1階にある。
これなら窓を乗り越えれば簡単に逃げ出せそうだ。
『今すぐ逃げるかどうか……ん? 丘の上に人が居るな』
窓から見える丘にの上に1人の女性が立っている。
その女性は紅色の髪、腰にはメイスを下げていた。
俺はあの風貌をした女性を1人だけ知っている。
『レイン……?』
俺の考えが正しければ、多分あの女性はレイン本人だ。
いてもたってもいられなくなった俺は窓から飛び出し、レインと思わしき女性の元へと走った。
今の自分の姿がどうなっているかも忘れて……。
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