工場で働いていた僕がアイドルを作ったらハーレムができた

KAZU

第一章 カフェファクト爆誕!

第1話-1.いきなりの任命

 ここはある大都市の郊外にある自動車部品製造工場「ヒロイック」。この工場で吉田直之よしだ なおゆきという青年がごく普通に働いていた。


********


 僕は吉田直之よしだ なおゆき、自動車部品製造工場で働いている。働いているのだが、今僕の上司、松田さんから言われたこの任命は明らかにおかしいと思う。


「吉田君、明日から女性アイドルのプロデュースをしてくれないか?」

「えっ? は、はい!?」


 僕は驚きすぎて思わず聞き返してしまった。それはそうだろう。ここは工場だ。なぜ工場でアイドルのプロデュースをするのか。ここは当然、「なぜ工場でアイドルのプロデュースを任されるんですか」と聞かなければならないが、松田さんは上司だ。だからそんな質問はできなかった。


「突然で悪い。わが社にも花がほしいという会社の方針だ。実は俺もそんな理由なのかは怪しいと思っている」

「・・・」


 何を言っているんだ? この人は。予想外の理由にそんな話は頭に入るはずもなく、僕は返事もできなかった。


「じゃあ、早速、新しいデスクに案内しようか?」

「えっ? ちょっと!」


 松田さんが先に行くので、僕は頭の整理がつかないまま現場事務所を後に・・・いや、現場事務所から連行された。


 僕が連れられてきたのは、現場事務所を西へ三部屋ほど行き、階段で二階に上がった西隣の部屋だ。扉のような模様があるが、壁の白色と見事に同化して、扉だと認識しがたい。


「吉田君、ここが新しいデスクだ」


 と、松田さんがそう言って部屋の扉を開けた。そこは、倉庫みたいな細長い部屋で、真ん中にこたつ用の机がある殺風景な部屋だった。


「ここは、倉庫じゃないですか」

「いや、半年前から資料室として扱っている」


 と、松田さんは言うのだが、僕はこの部屋自体を知らなかった。いったい何の資料室だったのか、僕は聞いた。


「何の資料室なんですか」

「部品の検査結果のだ」


 と、松田さんは言う。確かに、見渡してみると、部品もあるが、その上に、ファイルに何やら紙が閉じられている。そんなところでこの作業ができるのか?


「この資料室は僕が使っていいんですか?」


 僕はそう聞いた。この残っているような部品はもういらないのだろうか。松田さんは「いいぞ」と言って首を縦に振る。いいのか? その理由は、


「この部品たちはいらないから」


 えっ!? さらに、


「今日中に捨てておくから、明日からここを使ってくれ」


 と松田さんは言う。話の展開が早すぎてまたもや話についていけなくなる。なんか、この訳の分からないプロジェクトのために無理やり部屋を開けているような気もするし。大丈夫なのか?


「あの、僕は明日からどうすればいいんですか?」

「あのなぁ、明日から女性アイドルのプロデュースをするように言ったはずだけどな」


 いや、それは分かってるし! 松田さんは困った顔をしてそう答えるが、困っているのは僕の方だ。さっきからずっと思っているが、工場の仕事でいきなりアイドルをプロデュースしろと言われ、僕だって頭の整理ができていない。しかも、早急にこの部屋を空けられるし。いきなりアイドルをプロデュースしろと言われ、部屋を与えられても、何も経験がない僕には何をどうしていいのかさっぱり分からない。


「あの、僕はアイドルを作った経験がないんですけど?」

「吉田君、お前がここに入った時も工場の仕事はしたことなかったよな?でも今出来てるんだから大丈夫だ」


 松田さんは笑いながらそう能天気な事を言う。もうこれじゃどうすることも出来ないな。


「ただ、アイドルについてはちゃんと準備している」

「本当ですか!?」


 おお、松田さん! それは本当なのか!? それは助かる。何が助かるのか分からないけど。


「実はこの部屋だが、この奥だ」


 と、松田さんはこの部屋を一番奥を向いて指さした。さっきの、変な模様がある場所だ。でもその方向には誰もいない。


「はい?」

「この奥だが、昔、火事が起きてな、壁が焼けてしまったが、その時から変な生物などが出るようになって」

「え?」


 なんとも物騒な話だ。そしてなんで僕はそんな場所を与えられたのか。そして、この人事を決定した人は一体何を考えているのだろうか!?


「昔、うちの社員が四角い人間を見たって言っていた」


 四角い人間?


「ここは異次元とつながってて、そこから召喚されるらしい」


 異次元? 召喚? 何が?


「何がどうなるのですか?」

「何がどうとは?」


 僕が質問しても、松田さんにはうまく伝わらない。異次元とか召喚とか言われても僕にはよく分からないが、聞いたことがある。ゲームで。


「何でもありません」

「そうか。それでこの場所は公にしてないから知る人が少ない。でも、まだここから出た生物はいなかったから、大騒ぎにはなっていない」


 と、松田さんは淡々とそう説明する。そりゃ四角い人間がこの部屋から外に出たらダメだろうが! で、一体あの壁からどんな生物が出てくるのか? 頭から様々な質問が湧いてきて、僕はこれ以上質問できなかった。


「質問はないようだな」


 と、松田さんが言うが、別に質問がないわけじゃない。思いつかないだけだ。でも、よく考えると、一つの疑問が沸いてきた。


「で、人はどうやって集めるのですか?」


 僕は女性に接するのが苦手なのにどうやってアイドルユニットを作れというのか? 当然、現在親しくしている女性もいないし。まあ、それは今までの態度から松田さんも察しているとは思うが。


「それは準備してあるといったはずだが。その壁から必要な人員が召喚されてくるってことだ」


 松田さんはそううれしそうな顔で言うけど、僕の頭は多くの?に埋め尽くされている。まるで言っている意味が分からないのだ。


「吉田君がそうであることは分かっていたからな」

「は、はあ」


 「そう」がどうなのかということがなんとなく分かったので、僕はあいまいな返事をしてしまった。まあ、人には困らなくていいということだ。と、心の中で勝手にそうまとめた。でも、異世界から来る人ってどんな人なんだ? いや、さっきの話を聞くと人が来るとは限らないかも。ただ、悪魔や妖怪は来てほしくないな。


「じゃあ、仕事へ戻るぞ」

「もう戻るんですか!?」


 松田さんは話を切り上げ、僕は質問をすると松田さんは歩き始めて返答した。


「そうだ。あと、当分の間、何があったかは俺に報告してくれないか?」

「分かりました」


 分かったけど、驚きの連続でなかなか話はいまいち飲み込めていなかった。


 松田さんはアイドルの作り方を何も言わないまま後ろを現場へ戻ってしまった。僕も作りたいなんて一言も言っていないし、それにいきなりアイドルを作れと言われて作りたいようにと言われてもまず何をしていいのか分からない。


 困ったのでとりあえず、資料室で今後どうすればいいか考えることにした。でも、考えても考えても結局答えは出なかった。一体どうすればいいのだろうか。結局時間だけが過ぎていく。


 僕の中のアイドルイメージとしては、歌って踊れる女性ユニットだ。そうなるとやっぱり歌と踊りなのかな? でも、こんな何もない中で思考していても具体的なイメージが湧いてこない。


 と、考えていたら、部屋の奥が突然明るく輝いた。一体何が起きているんだ!?

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