第34話護衛

夕方過ぎにエリオが戻ってきた。

さすが、暗躍部隊。素早いねぇ。

普通の人なら丸一日かかるよ?


「ご苦労さま。随分急いで戻ってきたねぇ。もっとゆっくりで良かったのに」


「ゆっくりしてたら置いてかれそうですから」


こいつは私らの事なんだと思ってるのかねぇ。

仲間なんだから置いてかないよ。


「で、兄様は何と?」


「ああ、すぐ用意するって言ってましたよ。ま、掻い摘んで言っときましたけど、一応伝言で『帰ってきたら話をしよう』て言ってましたよ」


「……そうか……」


これは、だいぶご立腹と見える。

エリオはどういう説明をしたんだ?


──帰りたいけど、帰りたくない。


「物資が到着するのは、早くて明日だね。それまではここに留まろう。エリオ帰ってきて早々悪いけど、カルロに伝達入れといてくれ」


「はぁぁぁ!?いや、人使い荒すぎですって!もうちょっと労わってくださいよ!」


「悪いね。疲れてるのは承知の上なんだ。エリオが頼りなんだよ~」


「しょ、しょうがないですねぇ。分かりましたよ、行ってますよ」


ちょっと上目遣いで胸を押し当てて言うと、エリオは顔を真っ赤して、渋々外に出て行く。


──ふっ、チョロいね。



次の日の昼過ぎには、兄様が用意した物資が届いた。

すぐさま手配してくれんだろうな。


「ミレーナ様、屋敷の者数人がもうすぐ到着予定です」


「良かった。これなら早めにここを出れそうだね」


「お姉ちゃん、ここ出てくの?ここにいないの?」


リリがそばに寄ってきて、泣きそうな顔で言ってきた。

小さい子の涙は苦手なんだよ。


「大丈夫だよ。お姉ちゃんの代わりに違うお姉ちゃん達が来てくれるからね」


自慢じゃないが、うちの侍女達は優秀だ。なんでも出来る。

ここもすぐに見違える程綺麗になるだろう。

そうすれば俄然住みやすくなる。


「こら、リリ。お嬢を困らせてはいけませんよ」


マウロがリリを宥めにやって来てくれた。

助かった。


「しかし、そんなすぐに旅立つんですか?」


「ああ、ちと待たせてる奴がいるもんでね」


一応、遅れるとは伝達してもらっているけど、あんまり待たせるのは性にあわない。


「あの、私も連れて行ってもらえませんか?」


「は?」


「私はお嬢の下に就いた者です。護衛……にはならないかもしれませんが、少しでもお役にちたいんです!」


「それなら俺も行くぜ!」


後ろからダンテが声を上げた。

聞いてたのかい。


「俺も一緒に連れてってくれよ!お嬢!」


「いや、あんたら二人抜けたら、ここはどうすんだい?」


「大丈夫だ。これまでもたまに、数日ここを空けることがあったんだが、こいつらはちゃんとやってくれていた」


そうは言うがねぇ。

困ったねぇ……。


「ミレーナ様、連れて行ってみればよろしいかと」


「おいおい。サラ本気かい?」


「ええ。ここは屋敷者が来るので安心でしょう。それに、こいつらが実際どの程度使えるかどうか判断するには、ちょうど良い機会かと」


サラは、ダンテらを厳しい目で見ながら言った。

確かに、サラの言うことも一理ある。

私の事を知ってもらうにも、ちょうど良いかもしれないね。


「……わかった。連れていこう。しかし、その小汚い格好ではダメだね。これから行くところは、アルデガニ国の王宮だ」


「「えっ?」」


「私が待たせてる奴は、アルデガニ国第三王子のカルロだよ」


「「え----!?」」


ダンテとマウロは、まさかこんな大物の名前が出てくるとは思わなかたっんだろ。顔が青くなってるよ。

ふふ、中々面白い反応してくれたねぇ。

もう今更無理は聞かないよ。


──さぁ、ちゃんと護衛しておくれよ?

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