第27話とある一日

「ところで、あんたは何でまだいるんだい?」


「え?」


目の前でお茶を飲んでいる、エリオに問いかけた。

あの事件以降、エリオとサラには素で話せることが出来るようになった。

二人とも事情を深く聞かずに受け入れてくれた。

素で話せる仲間がいると思うだけで、気が休まる。


「エリオの役目は終わったはずだろ?」


そもそもソニアの件が終わったんだから、情報収集役兼護衛のエリオはお役御免のはずじゃないのかい?


「一応終わりましたよ?」


「じゃあ、なぜまだいる?」


「単純に言ったら、ミレーナ様の側にいた方が面白そうだから、ですかね?」


確かに、単純な理由だったねぇ。

だが暗躍部隊を離れて、こんな令嬢一人の世話をしている場合ではないと思うが?


「……エリオ、もしミレーナ様の妨げになる様ならば、命はないと思いなさい」


サラ、真面目な顔して何物騒なこと言ってるんだい!?


「そう言えば、サラとエリオは知り合いなのかい?」


この間の会話から、知り合いだと判断したが。

サラが暗躍部隊出身と言う、爆弾発言には驚いた。

そんな素振り、いままで一度も見たことがなかったからな。


「ええ。同期の仲間です。元ですが」


「サラが辞めるって言った時は、みんなが止めたんですよ?」


そうなのか……。

そうだよな、侍女にしとくのは勿体ない。

サラは相当な腕前だった。

私なんてまだまだヒヨっ子。


「私はミレーナ様のお世話がしたくて辞めたんです。暗躍部隊もそれなりに、楽しくやらせて頂きましたが、それよりも私が選んだ方の側にいたいんです」


そうか、私……イヤ、ミレーナはサラに選ばれたのか。

選んでもらったからには、それに応えなきゃいけないね。


「……俺はミレーナ様に会うまで、サラの言ってることが正直、分からなかった。なぜ令嬢ごときにそこまで想えるのか不思議だった。けど、ミレーナ様に会ったらそんな思い吹き飛んだよ。……だから、俺はここに残ると決めた。俺の意思で」


まったく、どっちもバカだね。王宮の仕事を捨ててまで来るなんて。

けど、嬉しいと思ってしまう自分もいる。


──ま、いいさっ。居たければ居ればよし。


私は来る者は拒まず、去る者は追わずの人間だからね。


「アレン様は知ってんのかい?」


「殿下も承知してますよ。むしろ率先して、送り出されましたけど?」


どいつもこいつも私の意見は無視だね。

一度ガツンと言ってやろうかね。


「アレン様が知ってるなら大丈夫だね。じゃあ、改めてよろく頼むね」


「こちらこそ」


──その腹立たしい笑顔だけは、やめて欲しい。


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