第18話復帰
毒に始まり暗殺事件があり、学園をしばらく休んでいたが、今日からまた通うことが出来る。
兄様はまだ早いと言うが、身体がなまってしょうがない。
それに、そろそろ本格的に犯人探しをしようと思ってるからね。
「ミレーナ様!!」
「カナリヤ、お久しぶりです」
門をくぐった所でカナリヤに声をかけられた。
しばらくぶりだが、元気そうでよかった。
「心配したんですよ!?お身体はもう大丈夫なんですか!?」
「ええ。心配させてしまって、すみません」
「そんな事全然構いません!ミレーナ様が無事ならそれでいいんです」
「ありがとうございます」
本当に優しい子。
最近は妹のように思える。
「ミレーナ!!」
「殿……アレン様?」
「聞いたぞ!殺されかけただと!?」
情報が早いこと。
ま、その発信源はおおよその検討がつくがな。
「ええ。しかし、ちゃんとここにおります」
「聞いた時、心臓が止まるかと思ったぞ」
「あら。アレン様の心臓はその程度で止まるのですか?」
「ああ。ちゃんとミレーナだ」
「失礼ですよ」
これでも病み上がりなのだ。少しはいたわれ。
「して、犯人は掴めたのか?」
「それが、まったく……」
そう、犯人についての手掛かりが何も無い。
賊の男も、手掛かりになる様な物はないも無かった。
指紋採取が出来れば一番いいが。
そんな技術、こちらにはない。
だから、学園に来たんだ。
学園には沢山の人がいる。
一人になる時も多い。そこを狙って来るかもしれない。そうなると、犯人は学園の中に紛れている可能性がある。
──木を隠すなら森の中か。
「私も力になろう。できる限りの事はやってやる」
「私も!ミレーナ様をお守りします!」
「ふふっ。カナリヤ、貴方は守られる方でしょ?」
カナリヤの言葉に思わず笑みがこぼれた。
私より弱い令嬢が、私を守ると言う。
自分でも分かっていて、言っているのだろう。
それでも、守ると。
──その言葉だけで十分、嬉しいねぇ。
「……ミレーナの笑顔……初めて……」
「なんです?」
「あっ、いや、ミレーナはそんな顔で笑うんだなっと……」
「?誰でもおかしい事があれば、笑うもんですよ?」
おや?アレンの前で笑ったこと……ないかもな。
愛想笑いはあるかもしれん。
しかし、たかが笑顔ぐらいでなんだい?
顔が真っ赤じゃないか。
「あ~。ミレーナ、あれだ。護衛はどうしている?」
「護衛など必要だと思いますか?私ですよ?」
だてに剣術と体術をマスターしていない。
そこら辺の護衛より、断然強いと言い切れる。
そもそも、自分の身は自分で守る為に習い始めたことだ。
護衛を付けたら意味が無い。
「実力は知ってるいる。だが、もしもの事を考えろ」
「もしもがあったら、その時はその時です」
昔は、危険は常に隣り合わせだった。
組のヤツらを守る為、常に一歩先を考えて行動しなければならなかった。
それが、組の頭の役目。
──最期は読みを間違えたがな。
「またお前は……。まぁ、いい。護衛は付ける!これは王子命令だ!」
「都合のいい時だけ……」
「なんだ!?」
「いいえ。わかりました」
命令と言われてしまえば、従わない訳にいかない。
──都合のいい時だけ、権力をかざしやがる。
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