第155話 皇族の結婚




アルベルトとレティの口付けを見た王女は、大変なショックを受け………早々に帰国した。

………と言うより、予定どおりに1ヶ月近く皇宮に滞在して、予定通りに帰国したと言うのが正解だが………



港までの見送りは外相が行った。




しかし、王女の帰国と同時に

イニエスタ王国の国王から、シルフィード帝国の皇帝陛下宛に、正式にアルベルト皇太子とアリアドネ王女の婚姻の申し込みの書簡が届いた。


王女が、公爵令嬢が横恋慕をして来るからアルベルト様との仲が上手くいかないと、父親である国王に、正式に婚姻を結んで欲しいと、早くから書簡を送っていたのである。




まだ正式な発表もされて無いのに

その慶事のニュースは瞬く間に国中に広がり、近く皇太子殿下と王女様が婚約するだろうと国民達は湧き立った。



そして………


『 アルベルト皇太子殿下とアリアドネ王女の逢瀬 』



二人は堂々と観劇デートをしていた。

二人の仲を見せ付けるかの様に観客に手を振る二人。

カップルシートで仲良く寄り添う二人………

近く、婚約発表か!?


あの時のオペラ観劇の様子がニュースになって、帝国中に広まった。

アルベルトとレティが訪れた観劇の時の様子と、ごっちゃになってもいた。



「 海を越えた愛……なんてロマンチックなの…… 」

「 王女は美人だから、皇太子殿下とお似合いかも 」


二人の姿絵があちこちに張り出され、久々の皇族の慶事に喜び、国民が二人の恋物語に熱狂し始めた。





議会では、イニエスタ王国から正式に婚姻の申し込みが届いた事で、皇太子殿下と王女の結婚に関する議論が本格的になされる事となった。


それにイニエスタ国王は、シルフィード帝国に有利な貿易と、持参金としてイニエスタ王国の所有する島や船など、数多くの好条件の話を提示してきたのである。

特に島は、鉱山がある島だと言う事で魅力的だった。



今でも他国から、皇太子殿下と婚姻を結びたいと言う申し出は数多くあるが、イニエスタ王国はどの国の条件よりも好条件であった。


何よりも

皇太子殿下を慕って、海を越え遥々我が国までやって来た王女の気持ちを考慮し……

また、皇太子殿下にとっても、相応しいお相手であると言う事で、アルベルト皇太子殿下とアリアドネ王女の婚姻を結ぼうと言う事に、すんなり決まった。



その場に居たレティの父親で、シルフィード帝国の宰相ルーカスは………

皇太子殿下と恥ずかしそうに見つめ合い、嬉しそうに微笑む、あの日のレティの姿を想い浮かべ、胸が痛くなるのであった………



レティ、皇族の結婚は………

いくら想いが通じ合っていても、どうしようも無い事もあるんだよ。

殿下の意思だけでは決められない事もあるんだよ。

どうか………

殿下を恨まないでやってくれ……





その夜

帰宅したルーカスは

レティに議会で決まった事を伝えた。


レティは黙って頷き

自分の部屋に入って行った。


母親のローズは

ルーカスの胸に顔を埋めて泣き、侍女達や使用人達も目頭を押さえ静かに泣いていた。


リティエラお嬢様と殿下のお幸せそうな姿を見たのは、つい先日の事なのに……もう、お二人は引き裂かれてしまうのかと……

泣いた……

皆が泣いた……




しかし、ラウルは違った。

アルベルトが了承するとは思わなかった。


アル………

俺はお前を信じるよ………





そして

次の日の早朝にレティは旅立った………



アルベルトと想いが通じ合い、恋人同士になれたあの日から、僅か数日の事だった。

王女帰国のバタバタや、学園が長期休暇に入った事もあり、その間二人は、会う事も無く話す事も無かったのである。







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