第57話 建国祭、令嬢は打ち返す



謁見の間


ラッパが鳴り響き、周りに居た近衛騎士達が捧げ銃をし、直立不動になる。

次に、この国の大臣達が立ち上がって頭を垂れる。


そして………

皇帝と皇后の椅子に座っていた皇帝と皇后が立ち上がり、皇帝の横にある皇太子の椅子に座っていた皇太子も立ち上がる。



皇帝の挨拶が終わる




謁見が始まった。


各国からの王族や高位貴族、自国の高位貴族達が席に付き、名前を呼ばれるのを待ち、呼ばれた者達は立ち上がり

皇帝と皇后にお祝いの言葉を述べ、その横にいる皇太子に挨拶をするのである。




今回は

王女や他国の高貴族の令嬢達がやたらと多い。



勿論、17歳の見目麗しい若き皇太子が未だに婚約者もいないからである。


王女や各国の最高位の令嬢達が

アルベルトの前で頬を染め、上目遣いで見上げ、しなを作り、1オクターブ上の甘えた声を出す。


優しい眼差しをして見つめてくる皇子様に、恋をしないわけがなかった。



勝負は晩餐会と舞踏会…………

彼女達はいきり立った。




残念ながら

シルフィード国の最高位貴族の令嬢である

リティエラ・ラ・ウォリウォール嬢はいない。


彼女はまだ成人していないので、公式行事には参加出来ないのである。




謁見が滞りなく終わり、この国の皇族3人が揃ってバルコニーに立ち、国民の前に現れる。



大歓声が上がる。



3人が手を振ると更に歓声が上がり、万歳、万歳と叫ぶ声がする。




シルフィード帝国の最高位貴族の令嬢はここに居た。

立太子の礼の時の様に、貴族席でラウルの横に立っていた。




いた………

僕のレティがいた………

ラウルと何か話して、クスクス笑っている。


可愛いなあ………




今回は皇帝や皇后がいるから気が楽だ。


立太子の礼の時に、レティが指でハートを作った事を真似て、アルベルトもハートを作ってレティに飛ばした。



それを見ていたレティはバットを持つ様な仕草をし、すかさず打ち返した。




アルベルトは驚いた顔をし、そして破顔した。



キャーっと黄色い歓声が起こった。




「打ち返されてるよ、可哀想に………」

ラウルが呟きながらクックッと笑い、父母は頭を抱えた。




レティは

してやったり顔をしながら、腰に手を当て、胸をはった………



流石に「オーホホホ」………は言わなかったが

気分は

最近、ずっと練習に明け暮れている悪役令嬢だった。






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