第4話 キャベツの千切りは料理だ!
アルベルト・フォン・ラ・シルフィード
シルフィード帝国の皇子である。
シルビア皇后陛下は他国の第3王女で、皇帝陛下のロナウドが皇太子時代に嫁いできた。
長らく子が出来なかったが結婚5年目にして念願の皇子が産まれた。
皇帝陛下には姉が1人いたが、他国に嫁いで行った為に シルフィード帝国の皇族は、皇帝陛下と皇后陛下と皇子のアルベルトの3人だけと言う皇室の危機的状況にもなっていた。
よって、アルベルト皇子は大切に大切に育てられたが、産まれながらにして皇帝となる事が定められた皇子には、それはそれは厳しい帝王学が叩き込まれたのは言うまでもない。
宮殿の子供がアルベルト皇子ただ1人だけだったので、皇帝の側近の子息達がアルベルトと同い年であった事もあり、幼い頃から皇子の遊び相手として皇宮に放り込まれたのであった。
レティの父である宰相のルーカス・ラ・ウォリウォール公爵家の長男ラウル。
国防相のデニス・ラ・ドゥルク侯爵家の長男エドガー。 外相のセリス・ラ・ディオール侯爵家の長男レオナルド。
幼少の頃は皇子誘拐などを避ける為に、何時も3人が皇宮に呼ばれてアルベルト皇子と遊んでいた。
勉強も家庭教師から4人で一緒に習っていた。
自分の身はある程度は自分で護れる様にと護身術も早くから習った。
この元気な4人はとんでも無い悪ガキで、ある時お城を抜け出し護衛から逃げれるのか?
……と言う計画を実行し、結局はプロの護衛の実力を目の当たりにする事になるのだが、アルベルト皇子は自覚が足りないと、他の3人は皇子を危険にさらしたと親達からこっぴどく叱られる事となった。
皇宮避暑地では、湖に飛び込んで誰が一番深く潜れるかの競争になり、レオナルドが危うく溺れそうになった事もあった。
馬術の訓練では、後ろ向きに乗って何処まで走れるかの競争をした時はラウルが落馬し、怪我こそ無かったものの、この時ばかりは全員縛りあげられ木から吊るされた。
城の探検だと言って、皇族専用の秘密の通路を見つけ出したりもした。
これはアルベルト皇子が、父君から叱られる事になったのは言うまでもない。
その他にも彼等の所業を語ったら、いくつの武勇伝があるのか計り知れない。
一番迷惑を被ったのは護衛騎士と彼等の世話をした侍女達だった事は否めない。
皇帝はアルベルトの将来の側近としての見識を広げる為に、16歳となった2年生である1年間を、アルベルトと共にこの悪ガキ3人を隣国であるローランド国に留学させていた。
しかし、親達の思惑通りにはいかず、この悪ガキ4人は外国と言う事もあって大いに羽目をはずし、遊びに遊んだハチャメチャな留学時代だったらしい事に親達は頭を抱えた。
それでも、将来の国を支える事になるであろう彼等の立ち位置を思うと、まあ、今だけの自由な時間を過ごせたのも、それも悪くないと思う親達なのであった。
そんな留学から帰国したばかりのアルベルト達の、ちょっと退屈な学園生活は始まったばかりであった。
**************
「うちの妹がさ~料理クラブに入ったから、習った料理を披露したいと言うからさ~、待っていたらキャベツの千切りが、皿いっぱいに出て来たんだぜ!」
「お袋は上手だと言いながらも、こっそり親父の皿にキャベツを移してさ~」
「親父は涙を流しながらムシャムシャ食べてたぜ」
「キャベツの千切りは料理なのか?」
「……っ……あの堅物の宰相が、涙を流しながら食べたって?!」
「 そう言えばレティは今年入学したんだっけ? 」 「 レティは何時領地から出てきたんだ? 」
「 去年からだから、俺達の留学と入れ替わりだな 」
何だ何だ? エドもレオもラウルの妹を知っているのか?
キャベツの千切り?!
ふ~ん………
面白い。
「 おい!!ラウル!!今日公爵家に行く事にしたからな 」
「 おっ!珍しいな?良いぜ!お袋に連絡しとくわ 」
いくら幼馴染みでも、皇子殿下を宮殿以外の場所に招くのには当然ながら先触れが必須になってくる。
勿論、護衛も強化される事になる。
アルベルトはその手間を知っているが為に、普通なら迂闊には出歩かないのだが………
この時のアルベルトのウォリウォール家への訪問は、まさしくアルベルトにとっての人生の転機だった。
キャベツの千切りを料理だと出したラウルの妹
………面白い………
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