第24話 キャンパスライフはままならない①
1ヶ月後。
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【W高等学校&W中等部、新キャンパス開校】
駅から徒歩3分
新型クラスルーム
レーザープロジェクション&3D音響を完備した新時代の視聴覚室
e-スポーツ特化型ルーム
声優養成所兼アフター・レコーディングスタジオ
併設(一部有料)
カフェテラス
ヘアサロン&ネイルサロン
スパ施設
トレーニングジム
インターネットカフェ
お問い合わせは、W高ホームページから!
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ハレオの住むマンションの共有スペースに、そのチラシは貼ってあった。
「いやーまさかハレオくん家の下に、うちの高校の新キャンパスができるとはねー」
「W高も知名度が上がってきて生徒数も激増してるみたいだし、通学コース希望の待機生徒も多かったっぽいからね、前々から計画があったんじゃないの?」
「でも良かったねーこれでハレオもトウカちゃんも通学コースに戻れるじゃない」
「そうだねーとういうか、これ通学っていうのかな、ほぼ家じゃない。そんでもってこのチラシの内容ってさ、どこかで……」
マンションの入口近くで話し込むスミレとボタン。
新キャンパスには、以前から通学コースを選択していた生徒優先で変更の希望を受け付けていた為、その魅力的かつハレオの家近くだった事を理由に2人は即決で手続きをし、今日から登校開始となっていた。
「おーい、スミレー、ボタンー、お待たせー」
「おはようございます」
マンション入口の自動ドアから出てきたハレオとトウカ。1ヵ月ぶり、あの日以来の登校となる2人は、前回と同じ服装で特に気負う様子もない。
それは、ハレオとトウカの登校を待っていたスミレとボタンが、通学コースの日数を減らし、広いハレオの家で、一緒にオンライン授業を受けていたからかもしれない。
「オンライン授業も1人で受けるより、4人で同じ場所で受けた方が、キャンパスに通っているみたいでいいじゃないか」そう、提案したスミレにボタンも賛成した形だ。それがハレオとトウカにとってどれだけ励みになった事か……。
まぁ当のスミレとボタンは、登校を減らす代わりに、美味しいハレオの手料理と、好意を抱く相手との時間を過ごせるという真っ当な下心だったから、互いの利害は一致していたということでもあるのだろう。
「ハレオくんの住むマンションに、こんな素敵なキャンパスが出来るなんて、運が良いわね」
「ほんとだよ「俺がなんとかするから信じて待っててくれ」とか真顔で言っといて、結局お兄ちゃんは何もしなかったし」
「まぁまぁ、結果オーライでしょ、こうして金田先輩の権力にビクビクしないで理想のキャンパスライフを満喫できそうなんだからさ」
「そ、そうだな、この世の中、結果が全てだからな」
3人の意見に目を合わさず、空を見上げながらハレオは答えた。
「でもさ、開校するまで、めちゃめちゃ早くない?とういうかスパ施設要る?ジム要る?」
「いやいやボタンさん、そんなこと言ったら、サロン系も要らないでしょ」
「ネカフェとカフェテラス被ってるしね、とういうかコレ、1ヵ月前に私達がお兄ちゃんに出した理想のキャンパス像まんまじゃない?」
「あーそれそれ私も言おうと思ってた」
「ほんとだ、そんなこともあったねぇ、流石未来を見据えるW高、分かってらっしゃる」
「今日の帰りは皆でネイルサロン行こうよ」
「いやいやジムで汗を流そう」
「私スパ行ってみたい」
「「あれ?トウカちゃんはネカフェでしょ」」
プチ女子会みたいな立ち話は、盛り上がりを見せる。
「遅刻するから行くゾ」
この話題から離れたいハレオは、1人でキャンパスへと足を運んだ。
その出費、約1億円。
もっと、絞れた可能性もあるが、全てが突貫だったからしょうがない、金は使えるときに使わないと、そう考えたハレオは、マンション契約時の弁護士や代理人を雇い秘密裏に計画を進めた。
愚かな行為かもしれないのは分かっていた。
極力お金は使いたくなかったが、持っていればいつかは知れ渡り、良からぬことを考える人々、知らない親戚が増える可能性もある。
お金は人をダメにする。それは父親が実証済み、だったらいっそのこと使ってしまえ、これはトウカと自分への投資だ。そう自分に言い聞かせ、ハレオは再び億の金を動かしのた。
「へぇ~随分と立派なキャンパスが出来たんだな」
以前からある旧キャンパスの生徒のほとんどが新キャンパスへの転入を希望した。
「金田先輩っ」
むろん、金田と結託していたインテリメガネも例に漏れず。
そして、残された金田は1人、新キャンパスの偵察に現れたのだ。
「これはこれは晴間くん、相変わらずのハーレ……」
「まないっ」
金田の前に出て、顔と顔を合わせ、そう言い切り、ハレオは続けた。
「スミレもボタンも友達だ、これは断じてハーレムでは無いっ、金田先輩がそう思いたければ思ってもらって構わないっ、だけど、変な噂が流れ、友達と妹が傷付くことになった時は、俺はあなたを許しませんから」
鬼気迫る表情のハレオに圧倒される金田。
だったら登校初日に、そう息巻けばいいのに、と誰かが思ったとか思わなかったとか、とにかく、金田は「どうみてもアレはハーレムなんだけど……はぁ俺も転入しようかな」と、消沈し踵を返したのだった。
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