70 虫の命

 こんにちは。


 今朝起きたら、最近家の中で闊歩していた蜘蛛が死んでいて凹んでいます。

 前日の朝は、洗面所の壁にくっついていて、今日も元気そうだなぁと思っていたのだけれど。


 蜘蛛は話せばわかってくれるので、けっこう放置というか、話しかけます。

 「ここを歩いていたら危ないから、あっちが良いよ」と言うと、端っこに行ったりするし。

 蜘蛛の種類は分からないけれど、蜘蛛の巣を張られて困るって事も、今のところないし。


 今朝、起きて歯ブラシをしようと思ったら、洗面所の置いてある桶に溜まっている水に沈んでいました。


 いつから沈んでいるのかは分からないですが……沈んでいたらもうダメですよね、

 一応、救出はしたけれど、動かなかった。


 たぶん、水の上でも浮かべたんでしょうけれど(足に生えている毛で)桶に入っている水が石鹸で手を洗った後の水だったために、表面張力が効かなくて溺れてしまったのではないかと推測します。


 私がその場にいたら、救ってあげられたのに……っていうか、桶の水、捨てておいてよ!誰だ!


 水を飲みに来たのだろうか……


 そんな事を考えるとより一層辛い気持ちになってしまう。


 けっこう仲良くやっていた子だったのになぁ……。

 次生れてくるときは、もっと幸せで長生きしてほしい。



 最近、蚊でも殺してしまうのがためらわれて。

 これが年を取るという事なんだろうか。


 一つ一つ命なんだなぁと思うと。


 高校生の時の古文の先生(年配の女性の先生だった)が寝ている時の蚊の羽音を「ステキじゃない♪」と言っていた。

 あの時は全く理解できなかったのだれど。

 理解できなかったのは私だけじゃなくて、言った途端、教室中からブーイングだった。

 みんな、鬱陶しいだけだと思ったのだ。


 でも先生は「あんな小さな虫でも、あんな音を立てて一生懸命に生きているのよ。そんな小さな虫の音が耳に届くなんてステキじゃない♪」と言っていた。


 それを聞いて、まぁ確かに。とは思ったけれど、鬱陶しさは変わらなかった。


 その時は知らなかったけれど、それ以降に、蚊は普段は花の蜜などを食べているのだけれど、繁殖をする段階で栄養不足になり動物の血を欲するという事を知って、生きる為じゃなくて命を繋ぐためなんだなぁと。


 まぁ、それでも痒いのは勘弁だし、病気を媒介する場合はもっと勘弁なんだけれど。


 私は蚊に刺されると、半年は跡が残る。もっと年を取る一生残るかもしれない……

 ヤバすぎる毒虫に刺されたのでは?と心配するほど、すっごく赤くなって、その部分が黒ずんで終わる……

 痒いのも嫌だけれど、それが一番嫌なのだ。


 蚊なんて絶滅すればいいのに、とも思ったりもしたが、生態系の土台を支えているのはボウフラらしいので、彼らがいなくなるという事は、いろんな生物の生存が危うくなるという事なんだな、と思うと、絶滅も願えないか……と。


 いろんな複雑な思いで、私の家の中に迷い込んでしまった蚊をパチンとする。


 失敗したらホッとして、成功したらごめんなさい、と凹む。


 いったい何をやっているんだろうなぁと、人間の矛盾を感じながら、この夏を過ごしています。


 こんなに短命で、生態系の土台の天文学的数字分の1である名もなき虫だけれど、それも立派に「命」で、失くしてしまったら、もうどんな方法をとっても元には戻らない。


 なんかなぁ。

 望まれる存在であるという事と、そうでないだけで、こんなに違うんだなぁ。

 自然の中では同価値のはずなのに、理不尽だよなぁ。


 

 「蜘蛛の糸」というお話。

 私は小さいころからずっと違和感を持っていた。

 でも大きくなって、宗教家が書いたものでは無く、作家が書いたものだと知って、ちゃんと自分で本を読んで、なるほどなぁとなった。

 

 昔は、お釈迦さまは救うべき行いをした人を救いたいのだと、理解しようと思っていたのだけれど、あの中のお釈迦さまはそうじゃないと私は思う。

 今の私と一緒。

 どちらでもいいのだ。望まれる存在ではない亡者の中を、結果どちらでもいいと思ってやっている。

 パチン。


 まぁ、解釈は人それぞれです。


 ここまで書いておきながら、寝る時に耳元を飛ぶのは止めてほしい。←

 血は仕方がないからあげるけど、静かに寝かせてほしい。


 そういえば、毎朝なぜか日本ミツバチが一匹私の部屋に迷い込んで、外に出られなくて困っているという時期もあったなぁ……

 毎朝、羽音で起こされて、窓を開けて誘導して、外に出すという事をやっていた。

 あれもなかなか不思議な経験だった。

 たぶん同じ子なんだよね、毎朝一匹だけだから。


 秋なので、外の虫の声を聴きながら虫の話ばかりしてしまったな、


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る