肉じゃが

「出来たよー」


 美空はお茶と箸を出して持っていくように頼み、お皿を運ぶ。今日は肉じゃがだ。薄切りの豚肉と玉葱、花の形の人参、彩りにさやいんげん。小さな新じゃがはゴロゴロと、皮ごと入れた。なかなか良い出来だと自負している。野菜を叔父一家からお裾分けしてもらったので、早速使ってみたが……さて、彼の口には合うだろうか。


「「いただきます」」


 手を合わせて二人して挨拶をしてから食べる。彼が食べるまでこっそり見つめる。もう一口と咀嚼してきっかり三十回、飲み込んでから恋人は一言。


「……旨い」

「ほんま!? やったぁ、ミソラちゃん超嬉しい」


 照れ隠しで少しおちゃらけてみたが、どうやら成功した模様。良かった、彼は味には少し厳しい。このボンボンめ。好き嫌いがないのは救いだが。いつもは思いつくままズケズケ言うクセにこういう時だけ、オブラートに包もうとしてくるもんだからなおさら凹む。しかも、包むのしょっちゅう失敗しているし。それさえも可愛いと思ってしまう自分は、相当なカレシ中毒だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る