悪魔っぽい人の姿を時々みかける ①
あの石化の雨の一件の後、時折この街では悪魔っぽい人のことを見かける。
その対応のために女神様もこちらにきているのか、時折見かける。
たまにその人たちが乃愛の名前を出していたりするけれども、乃愛は全く気にした様子がない。
乃愛にとってその悪魔っぽい人達はどうでもいいのだろうなぁと思う。
ちなみに杉山たちが教室で悪魔の名前を出しているので、その名前も少し覚えてしまった。杉山たちが名前を出していたのは二人か三人だったけれど、僕はもっと多くのそういう存在を見てしまった。
中には形容しがたい黒い物体? みたいな姿の気持ち悪い悪魔みたいなのもいた。
「博人はああいうの見ても、全く正気失わないよねー」
……乃愛のその一言で、それが直視すると正気を失う人もいるようなものだと知り何とも言えない気持ちになった。
そんな存在がこの街をうろうろしているとか中々恐ろしい事態である。それにしても杉山や女神様たちが対応しているっていう話だけど、全然おさまる気配がない。
それだけ異世界からやってきている人達が多いのか、それとも女神様が対応を上手くできていないということなのだろうか。
どちらでもいいけれど、こんな風になってから既に10カ月ぐらい? 僕もスルースキルは磨いてきているけれど、これから一生この調子だったら中々大変そうだと思う。
「博人、あれ、食べよう」
「うん」
乃愛と一緒に学園帰りに街を歩いている。
乃愛は悪魔たちがいようともどうでもいいからか、普段通りである。嫌いとか邪魔だとかもなく、ただ無関心というか、そういう感じである。
美味しい果物やチョコレートなどを使ったパフェが食べられる喫茶店による。
こういう喫茶店なども乃愛がクラスメイトたちからお勧めスポットを聞いてきたりするんだよなぁ。
乃愛はクラスメイトたちの名前も呼ばないし、基本無関心だけど、僕と出かける場所を聞いたりとかはしているのだ。顔は一致しているっぽいし。
僕はりんごのパフェを注文する。乃愛は桃のパフェを食べている。
パフェを食べながら乃愛と会話を交わしていたら、喫茶店の中に入ってくる人がいた。
いや、人と言えないか。それは何度か見かけた事がある異世界の人だった。でも喫茶店の店員たちには普通の人に見えるのか普通に案内していた。二つ隣の席に悪魔っぽい人が二人座っている。
結構近くの席な事に僕は驚く。というか、何で異世界の悪魔っぽい人達が喫茶店にいるんだろうか。
『甘い物食べたくなったのかもね。高位の悪魔は食事をとる必要はないことも多いけれど、そういう食事が趣味な人もいるから』
乃愛に脳内に直接そんな言葉を入れられる。
乃愛は僕と一緒じゃなければ食事もとらないし、食事に何か感じているわけでもない。でも食事を必要としていない人でもそういう食事を好んでしているタイプはいるっぽい。
「この世界の食事は中々美味しいな」
「うむ。この世界を支配した暁には、これを毎日作らせよう」
……何を言っているんだろうか??
しかも支配とかしたがっている??
僕は色々突っ込みたくなった。ちなみにその二人組、一人はいかにもな吸血鬼風というか、なんか牙がとがっているし、なんかそれっぽいし。
もう一人は、なんか角生えているし。山羊みたいな角? ああいう角って実際についているとどういう感じなんだろう?
悪魔って角が生えていたり色々する感じだよね。
「博人、りんごのパフェ美味しい?」
「うん、美味しい」
「私も家でパフェも作れるようにするね」
「外で食べればよくない?」
「私は博人が食べたいものをなんでも作れるようになりたいもん」
乃愛はそんなことを言いながらまじまじとパフェを見ている。乃愛は本当になんでもかんでも作ろうとするなぁと思う。
僕はパフェを食べながら、二つ隣の会話も少し聞いていた。
この世界を支配するとか、勇者をどうにかするためにはとか、女神様を穢すためにはとか……中々物騒な話をしている。女神様のことを落としたいっていうこと? 女神様は聖なる感じの神なので、闇落ちさせたいってことなのだろうか……。
あとちょっと生々しい話もしていて、何とも言えない気持ちになった。
『お姉ちゃんも女神だから、そういう風に落とそうとしてもどうしようもないけれどね。そんなに簡単に穢されるぐらいだったらお姉ちゃんはあの世界で最も有名な女神にはなれないよ。勇者にへにゃへにゃしている姿ばかり見ているから博人からは想像出来ないかもだけど』
へにゃへにゃ。
まぁ、確かに杉山にだらしない顔を向けているからなぁ。
でも仮にもその世界で一番有名な女神様だからこそ、そんな簡単に闇落ちしないのだろう。
僕たちはパフェを食べ終えるとそのまま喫茶店を後にするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます