第34話 カイロニア第三王子執務室
「あーぁ。彼女、トレニアちゃんは帰っちゃいましたね。カイン殿下との距離は埋まらなかったですね」
そう気軽に話すのはカインの専属従者の1人。
「… それ以上言うな。僕だって分かっている。それにあの令嬢が乗り込んで来なければこんな風にはなっていない」
「いや、その前からでしたよ?気づいて無かったんですね。食堂では他の令嬢達の話はするわ、騎士団の訓練所でご令嬢達に囲まれていた時の殿下の対応に呆れていましたよ。カイン殿下のデリカシーの無さ。あーぁ。残念。あんな子もう出て来ないですよ。捕まえられなかった殿下、ドンマイ!」
カインは項垂れて机に突っ伏している。
「そんな殿下に更に更に素敵な情報をお持ちしましたよ」
そう発言し、部屋のソファに座っているのはカインの側近の1人。優秀な文官で執務を担当している。
「彼女の言っていた通り。やはり絶世の美女と謳われたグリシーヌ・ガーランド侯爵令嬢の妹でした。グリシーヌ嬢が婚約破棄されたせいで無理矢理自分の婚約者と婚約の交代をさせられ、侯爵家跡継ぎコースから排除されたらしいです。
その後、クラスメイトの侯爵家嫡男と親しくなり婚約したが、絶世の美女グリシーヌを上回るとさえ噂されている妹を見て、婚約者交代を婚約者から告げられたようです。
その上、実の母から曰く付きの貴族に売られそうになり、母から逃げるために平民となったようです。
そりゃ身内や婚約者がクズ揃いだから顔も良く地位もある男にも興味が無かったんでしょうね。
それと彼女の人となりなのですが、学院では首席、優秀なため卒業半年前から王命で薬師として働くために飛び級で卒業。周りからは姉や妹の事で憐れみを込めて残念令嬢と呼ばれていたが、彼女の周りにはいつも沢山の人がいたそうです。
現在では筆頭公爵家のファーム公爵がトレニア嬢は愛弟子だと豪語し、同僚の貴族達も養女か妻として迎えたいと希望を国に出しているそうです。
もちろんガーランド侯爵も病気となった母親を領地へ送り、周りから猛反対されながらも妹を修道院へ送った。その上でトレニア嬢の復籍を願っているとの事。上位貴族が挙って欲しがるご令嬢を逃してしまうなんて勿体なかったですねぇ」
どこか他人事のように楽しげにお茶を飲んでいる文官と従者。
カインは復活出来ないほどのショックを受けたようで熱を上げ、数日ベッドの住人となったのだった。
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