第8話

 翌日、ジョシュア様は一日令嬢達に追いかけられていたせいで話が出来なかったのだけれど、そっと従者から手紙を貰った。明後日、寮に迎えに来てくれるらしい。


領地まで馬車で3日、保養地で5日程過ごして3日かけて寮まで戻ってくるという日程らしい。保養地に行く前日の午後はそのまま学院の護衛さんと街に出かけて買い物をする。


 普段、侍女も護衛も付いていないのだけれど、寮で申請すれば安全面を確保するために護衛さんを付けてくれるのでとても助かるわ。新しいワンピースを買ったり、移動中のお菓子を買ったりして街を楽しんで寮に戻る。


寮母さんから手紙を受け取り、部屋でベッドに転がりながら手紙を開封する。父からの手紙だった。内容は元気か?成績1位おめでとう。保養地に連れて行ってくれるライト侯爵家へお礼状を出しておくとの事だった。それに合わせて侍女を寄越すので保養地に連れていくようにとの事。


やはり邸には帰らなくても良いみたい。あと、姉が本格的に領地の勉強を始めたと書いてあった。まぁ、その事はどうでも良いかな。


 翌日は学院の長期休みの注意事項の話が終わると各々の領地へと『ごきげんよう』と和やかながらもいそいそと帰宅していくわ。私は寮に帰るだけなのだが。


 寮に帰ると侍女が寮のサロンで私を待っていた。あの日私を心配して部屋に来てくれた侍女。名前はローサ。ローサは私の荷造りをしっかりチェックしてくれ、美味しい食事まで作ってくれたわ。勿論後で自分も作れるようにしっかりと紙にレシピを書いて貰う。


それからローサに私が家を出た後の話を聞いたの。私が出て行った後も表面上は変わらないらしい。けれど、姉のグリシーヌは私の代わりに領地の勉強や仕事をし始めてから平民と話をするのは嫌だ、お茶会に行けない、ドレスや宝石を買いたいと不満が出始めているらしい。


着飾る事が好きな姉や妹は私が居なくなった事でタガが外れ一気に散財し始めると思うわ。今までは王子の婚約者として予算が出ていたけれど、もう無いもの。


妹1人の装飾品の代金で済んでいたけど、2人分ともなれば相当よね。見目麗しい我が姉妹は我慢出来るのかしら?


 妹のソニアは婚約者に貢がせてはいるけど、今の婚約者の顔はソニアの好みではないらしいから他に良い人がいたら乗り換えそう。もう既に3人も婚約を白紙にしているから相当周りに恨まれていると思う。


けれど顔が良いと婚約者になりたい人は沢山いるのね。やっぱり世の中不公平だわ。

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