第81話 俺たちの平成って素晴らしくないか?
出発から約一時間後。
ヨハンとゼッカはメタルブラックドラゴンに乗り、空中から見つけた敵に片っ端から攻撃。既に20Pを稼いでいた。
「ランキングが更新されたようですよ」
メニューを操作しながらゼッカが言った。
ギルド対抗戦では、二時間ごとにポイントが集計され、ランキングが表示される。現在開始から4時間。二度目の更新である。
1位【セカンドステージ】980P
2位【最果ての剣】509P
3位【神聖エリュシオン教団】312P
4位【みんなランサーズ】300P
5位【GOO支援部】210P
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15位【竜の雛】140P
「私たちは15位……まだまだですね」
「あら、さっき3位だった【GOO支援部】が5位まで落ちてるわね……ポイントが減っているような」
GOO支援部。
その名の通り、初心者やエンジョイ勢が楽しめるように支援する、一人前のプレイヤーになるまで育てる事を目的としたギルドである。
人間関係で問題を起こさないこと、みんなで楽しめることが加入条件であり、ソロで始めたプレイヤーは大体このギルドの世話になるという。
もちろん一人前になったら抜けてOKなのだが、そのまま残って、新規プレイヤーを指導する側に回る者も多い。所属人数は2800人とGOOでも最大規模のギルドだ。
だが、人数は多いがランキング上位者がいるかと言われるとそうではなく、今回の参加もあくまで「イベントを楽しむ」ことを目的としており、その参加人数は1000人ほど。
「えっと……待ってください。ああ、多分セカンドステージにギルドホームを襲われたのでしょう。ギルドクリスタルを破壊されたみたいです」
ゼッカはマップを開き、そう口にした。ギルドクリスタルを破壊されれば、イベント中入手したポイントは全て半分になる。つまり、GOO支援部の優勝はこれでまず消えた。
ギルド対抗戦の間、ギルドホームの位置関係は毎日変化する。今日の配置を見てみると【GOO支援部】の所有するギルドホーム【バベル】とセカンドステージのギルドホームの位置が近かった。
おそらくセカンドステージがGOO支援部を壊滅に追い込んだのだろう。
「オウガくんの読みが当たったという事ね」
ヨハンとゼッカはこの出撃に際してオウガも誘った。だがオウガはそれを断って、ギルドホームに残ったのだ。
『あいつはこのギルドホームに来る気がするっす……』
とのことだった。
「バベルから他のギルドホームを強襲しつつ北上すれば、闇の城がありますからね」
「もしセカンドステージが来たら、引き返していい?」
「ええもちろんです。ギルドクリスタルだけは絶対に割らせませんから」
ヨハンたちは現在、東の果てに設置されている最果ての剣のギルドホーム【白亜の城】を目指している。
最果ての剣は現在2位ということもあって、多くのギルドの襲撃に遭っているはずだ。それに便乗し、あわよくばクリスタルの破壊を目論む。それが今回のヨハンとゼッカの目的だった。
しかしその時。
「ぐるおおおおおおおん」
地上から攻撃を受けた。メタルブラックドラゴンが悲鳴を上げる。その間にも、地上からの攻撃は続く。メタルブラックドラゴンの腹部には弾丸のような物が何発も打ち込まれている。
「ヨハンさん……このままじゃメタルブラックドラゴンが」
「くっ……ごめんなさいね、召喚解除」
ヨハンがメタルブラックドラゴンの召喚を解除すると、二人は空中に放り出される。そして、落下を始める。
「ヨハンさん! 着地どうします!?」
「私に考えがあるわ」
ヨハンはストレージから召喚石を取り出すと、それを起動しつつ思い切り地面に投げつけた。1500を超える筋力値で放たれた召喚石は隕石のごとく地面に落下すると、そこで召喚が開始。見目麗しいダークエルフが姿を現す。
「シフトチェンジ!!」
続けてヨハンは召喚獣と自分の位置を交換するスキルを使い、ダークエルフと落下中の自分の位置を入れ替えた。そして、地上に無事降りたヨハンは落ちてきたゼッカを受け止める。
「きゃっ……凄いですヨハンさん! まるでヒーローですね!」
「ふふ、ありがとうゼッカちゃん。上手くいって嬉しいわ……さて」
ヨハンとゼッカは岩陰を睨む。すると「ククク……」と怪しげに笑いながら、7人の男たちが姿を現した。
「一体何者なのかしら?」
ヨハンが男たちに訪ねる。すると、リーダー格の男が一歩前に出て、名乗りを上げた。
「よく聞いてくれた。我らは……「きゃああああああああ」
男の名乗りは、頭上から聞こえてきた悲鳴にかき消された。
「リーダー! 空から女の子が!」
「何……ぎゃあああああああ!?」
リーダーと呼ばれた男は空から落下してきたダークエルフと激突。それによってHPがゼロになってしまったようで、両者消滅する。
(ダークエルフちゃん……忘れていたわ)
ひとときの沈黙が流れる。
そして、耐えきれなくなったのか、先に口を開いたのは向こう側だった。
「よくぞ聞いてくれた!」
「我らはギルド【
「あ、そこからやり直すんですね」
「見事な仕切り直しだわ」
「フッ。元はといえば、我らが先に仕掛けてしまったが故」
「そちらのお怒りはごもっとも」
「リーダーの
「話? こちとら時間が無いんですよ。殺るか殺られるか……でしょう?」
ゼッカが剣を抜刀しながら不敵に笑う。非常に好戦的な笑みだった。それに慌てるホビー部の人たち。
「ま、待ってくれ。戦いはする。だが、我々はヨハン殿に話があるのだ」
「わ、私に?」
「そう!」
「我ら
「バチモンも伝説のゆとりホビーの一角」
「ヨハン殿。我ら殺殺ホビー部に入らないか?」
「ヨハン殿ならば我らの姫になれるぞ」
その勧誘を聞いて、ゼッカがキレた。
「黙って聞いていれば! 私達のギルドマスターを引き抜きとは……許せませんよ。生きて帰れるとは思わないことですね」
「ならばゼッカ殿。我らと三本勝負をせぬか?」
「三本勝負?」
「そう。我らは三種の玩具型コラボアイテムを所持している。1種類ずつと順番に戦い、ゼッカ殿が3勝したらゼッカ殿の勝ち。我々が勝ったら我々の勝ち。そして我々が勝ったらヨハン殿は我々のギルドに来るということで」
「いいでしょう。但し私が勝ったらヨハンさんは私のです」
「完全に乗せられているわゼッカちゃん……それは三本勝負とは言わないわ」
ゼッカが不利すぎる戦いだが、もしゼッカが負けそうなら口約束なんて無視して横槍を入れようと決心するヨハン。
「さて、では最初のコラボアイテムとやらは?」
ゼッカは剣を構えながら相手を促す。すると、忍者のような服に赤いマフラーを巻いた男が前に出た。そして、その手には10cm程度の大きさの、腹部に穴が開いた人形のようなオモチャが握られていた。
「あれは……ビーダマシン!?」
ヨハンは懐かしさの余り、つい叫んでしまった。それを聞いたホビー部の面々はニヤニヤ笑っている。
「ヨハンさん……ビーダマシンとは?」
「おなかにセットしたビー玉を発射して遊ぶオモチャのことよ……」
「はは……何かと思えば可愛いオモチャですね」
「ゼッカちゃん。この戦い、舐めて掛かると……死ぬわ」
「え?」
ヨハンの声は、どこかしら震えていた。ヨハンのあまりにも真面目な声色に、ゼッカは驚いた。
「締め打ちという技術があってね。その威力は窓ガラスを粉々に打ち砕く程なのよ。一体何人の男子たちが職員室に連れて行かれたことか……」
「窓ガラスを!? 粉砕!?」
「ええ、その強大な力の代償として指の骨が折れた……なんて話も聞いたことがあるわ」
「何故そんな危険な玩具が売られていたんですか!?」
「平成前期はまだ安全に厳しくない時代だったのよ」
「マジか……」
「流石ヨハン殿。ビーダマシンを知っているとは」
「俺もよく指の骨を折ったものよ……」
「何を隠そうメタルブラックドラゴンを撃ち抜いたのもこのビーダマシンでね」
「さぁ……覚悟してもらおうか」
「くっ……どうやらこの勝負、全力でいく必要があるようですね……」
こうして唐突にゼッカと
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