【書籍化】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです

瀧岡くるじ

第一章 An endless tale

第1話 コラボイベント開催

 28歳になるOL哀川圭あいかわ けいは数日前、通勤電車の中でとある広告を目にした。『ジェネシス・オメガ・オンライン』というVRを用いたネットゲームの広告だ。普段ならゲームに興味を持たない圭だったが、その時ばかりは違った。


「これ……バチモン?」


 そこに映っていたのは圭が子供の頃に好きだったアニメ【バーチャルモンスターズ】のキャラクターたちだった。アニメもゲームも殆ど興味のない圭だったが、バチモン(バーチャルモンスターズの略称)だけはブルーレイBOXやフィギュアなどを収集している。


(待って、VRMMOってことは、ゲームの世界でバチモンと遊べるということ!?)


 それに気が付いてからの圭の行動は早かった。次の土曜には機械に詳しい妹に泣きつき、ゲーム機の購入やアカウント登録を完了した。そして今、お礼の食事を奢ってようやく戻ってきたのだ。


『しかしお姉がVRMMOとはねぇ……あれ、若い子が断然有利だから、勝負とか挑まないほうがいいよ~』


 と、妹談。どうやら以前遊んだことがあったらしい。圭は妹に、ゲームに興味ない人間だと思われていた為、VRゲームについていけるのか酷く心配されていた。


「ふっ、あまり舐めないでほしいわね。これでも昔は【ろくよん】で鳴らしたものよ」


 VRゲームと据え置きゲームではジャンルが違うが、圭のようなゲームに疎い人間にとってはどちらも同じなのだ。

 ちなみにその【ろくよん】でも、妹に勝ったことはない。


 外行きの服からラフな部屋着に着替えた圭は機材を頭に装着し、ゲームの電源を入れた。本体やネット接続の設定は妹がやったが、ゲームの設定はログインしてからとなる。


「それじゃあ行きますか。待っててね、私のバチモンたち!」


 こんなにわくわくしたのは、いったいいつ以来なのだろう。そんなことを考えながら、圭はゲームを起動した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る