対応
マリアンは、生物学者としてブロブについての研究をまとめ、それを発表する機会を窺うと同時に、自身に同調してくれる研究者を探していた。しかし現時点ではやはりマリアンの着想は異端とされる種類のものであり、容易ではなかった。
それ自体はこれまでもそうだったので仕方ないのだが、具体的にマリーベルやイレーナという存在を知ってしまった以上、彼女らの為にも極力早く状況を動かしてあげたいと思っていた。
そこに、ハンターギルドと駆除業者が共同で、特に危険とされるブロブについて一斉に駆除を行うという情報がもたらされた。これまでに協力を頼んだハンターからの情報だった。しかも、その標的の一つに、マリーベルと一緒にいるヌラッカと思しきブロブも含まれているらしい。
「なんてこと…」
その情報を伝えてくれたハンターは何気ない感じで話しただけだったが、その電話を受けたマリアンの表情は沈痛だった。マリアンからそれを聞いたベルカも、マリーベルやイレーナのことを知ってしまった今ではギルドの判断には賛同できなかった。
とは言え、ただ気を揉んでいても始まらない。
「とにかくマリーベルに会わなくては…!」
かかる事態についてマリーベルにも伝えなければと二人は急いだ。
学者としての正当なルートでブロブの真の姿について伝えていくことも大切だが、まずは目の前の危機に対処しなければならないからだ。
ベルカの愛車であるワゴンを走らせ、マリーベルとヌラッカのいる森を目指す。
そこに、再びマリアンの携帯電話が鳴った。公衆電話からの着信だった。
「はい」と電話に出たマリアンの耳に、「あ、マリアン?」と、聞き覚えのある声が届く。
「マリーベル!? ちょうどよかった。あなたに知らせたいことが…!」
その言葉でマリーベルもピンときたようだった。
「ひょっとして、ハンターギルドと駆除業者の件? それなら私もあんたと話がしたいと思ってたところよ」
「知ってたの!?」
洞窟で野生動物さながらの生活をしているマリーベルが既にその情報を得ていたことには素直に驚かされた。それに対してマリーベルが応える。
「まあ、町に行った時にハンター同士が立ち話をしてるのが耳に入っただけなんだけどね。私、耳もいいし。
その後で、イレーナも、彼女がいる施設の研究員がそういう話をしてたって言ってたし、これはもう間違いない情報だなと思ったけど、あんたの言葉で確定ね。
ひょっとしてこっちに向かってる?」
「ええ、後一時間くらいで着くと思う」
「分かった。じゃあ待ってる。もしかしたら出掛けてるかも知れないけど、イリオにもあんたたちが来ることは話しておくから」
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