第31話 拳豪トーナメント一次予選③
既に周りを取り囲まれつつある。
私を狙ってきてるのはパっと見で10人以上。
これ以上逃げ続けてもどんどん取り囲む人が増えていくだけだろう。
意を決して立ち向かうことにした。
女は度胸! すり抜けながらぶちのめす!
【スライディング】で先頭のプレイヤーに攻撃を仕掛ける。
不意打ちの【スライディング】だったのに先頭のプレイヤーはこれをジャンプして避けた。
もしかしたら下段の攻撃を読んでいたのかもしれない。
ただ避けるので精一杯でそこからの反撃は無かった。
しかし、先頭のプレイヤーは避けれても後続のプレイヤーはモロに【スライディング】をくらって転倒する。
そして【スライディング】で寝そべった姿勢から地面すれすれに蹴りを放ち立っているプレイヤーの足を狩る。
これも【足払い】扱いになり計五名が転倒する。計算どーり!
倒れてるプレイヤーが起き上がる前にまとめて【足払い】で3回程攻撃する。
面白いように攻撃が当たり次々に数字が表示される。
『20』『18』『14』『14』『13』『14』『14』『13』『15』『14』『13』……
周りにいた別のプレイヤーが距離を詰めて来た……と言うか、飛び蹴りしてきたので身を躱しカウンターで【貫手】を放つ。
他にも詰めてきているプレイヤーがいるため動き回りつつ【貫手】で【ラッシュ】を放つ。
攻撃力なら【
足は動くために使わないと。
動いて動いて躱しまくって、ひたすら貫く。
『25』『13』『14』『14』『15』『13』『14』『13』『13』『15』『14』……
そうする間に周りは完全に取り囲まれてしまった。もう周りに何人いるかも分からない。
でも、ここまで来たら行けるところまで行ってやる……。
スライムと違ってプレイヤーは何やってくるか分からない。戦闘経験の浅い私は【予測】がしづらい。
見て対応するしかない。
でも不思議と周りの動きは良く見える。
あの上位種のスライムに比べたら全然遅い。
コマ送りの様にゆっくりに見える。
だから躱すのもカウンターを入れるのもそう難しくなかった。
『14』『18』『17』『14』『15』『13』『14』『13』『20』『15』『14』……
何だろうこれ……。
理不尽なくらい敵に囲まれて、初心者の私を倒すために敵意剥き出しで皆向かってきてるのに……。
何か楽しい。
そうか、本気なんだ。
皆の「本気」が伝わってくる。
そして私も本気だ。
だから楽しいんだ。
一瞬一瞬のギリギリの攻防に脳が目覚めていくような気がする。
いや、実際には寝てるんだけどね。
ああ。
終わってほしくないな。
一瞬足が止まった瞬間にイチゴ頭が【タックル】に来た。
倒されたらまずい。間違いなく終わる。
いやだ。
終わりたくない。
【貫手】でひたすら顔面を貫くと光となって消えた。
ギリギリだった。
何とか仕留めたが、私の足は完全に止まってしまっていた。
そこへチャンスとばかりにプレイヤー達が殺到してくる。
四方八方から【突進】【スライディング】【ラッシュ】【タックル】とあらゆるスキルで以って突っ込んできた。
完全に逃げ場はない。
オワタな。
こりゃ詰んだ。
って簡単にあきらめると思うな!!
こっちは攻撃されると痛いんだよ!
可能性に賭けて【ラッシュ】で突っ込んでくるプレイヤーの顔面に【
よしっ!
運よくそのプレイヤーは光となって消えた。
その空いたところへ【突進】していく。
そこから【足払い】で周囲のプレイヤーを倒し、活路を開いていく。
まだ終わらない。
まだできる。
まだ遊べるんだ……。
もう次の瞬間には終わってしまうのかも知れないけど、可能な限り少しでも長くこの場にいたい。
そのために足掻くんだ。
みっともなくても足掻く。
格好よく諦めたりしない。
………
……
…
そんなギリギリの攻防を何度繰り返したのかもう分からなくなった頃。
突然周りにいたプレイヤー達が一斉に光となって消えた。
「えっ? 何これ?」
一瞬何が起きたのかよく分からなかったけど、それが意味することはすぐに理解できた。
モニターに表示されていたゲーム時間は『0:00』となっている。
もうちょっと、もうちょっと続けたかったのに……。
終わっちゃったか……。
ギリギリの攻防を繰り広げた先にまず私が感じたのはこの時間が終わることを惜しむ気持ちだった。
その後突然大音量のファンファーレが響く。
アリーナ中央の画面にはデカデカと私が映っていた。
『拳豪トーナメント一次予選
1位:あゆみ 4288Point
予選突破おめでとうございます』
私を称える映像と気分を盛り上げる力強い音楽が流れる。
そしてこの試合のハイライトが映し出された。
私は予選突破した。
その実感が一気に湧き上がってきた。
くぅぅ。
きつかった。ギリギリだった。
でも私は乗り切ったんだ!
「いやったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私は拳を突き上げて思いっきり跳び上がったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます