第6話 男子高校生とデートしました その3

映画を見終わった後は涼君の希望で俺の家に行くことになった。


物が少ない俺はわりといつでも部屋は片付いてるのでこういう時助かったと思う。


「ちなみに言っとくけど俺の家来てもなんも面白い物はないからな?」


「いいのいいの、行きたいだけだから」


ニコニコしてる涼君にまあ良いかと思いつつ、家の冷蔵庫にはお客に出す飲み物もろくになかったことを思い出して家の近所のコンビニに入った。


「ねー、これくらいは俺に出させてよ。今日は助けてくれたお礼なのにご飯も映画も全部健人さんが払ってるじゃん」


「いや良いって、俺が見たい映画に付き合ってもらったんだし」


「俺も見たい映画だったじゃん」


今回は中々引き下がらなそうな涼君に今回は俺が折れてここのお会計を任せることにした。こんなに歳が下の子に払ってもらうのはなんか罪悪感がある。


そしてコンビニを出て少し歩いたとこに俺の家に着いた。


「ほらよ」


「…お邪魔しまーす」


俺の部屋はベッド冷蔵庫テーブル等、特にオシャレさもない最低限の家具に家庭用のゲーム機が1台あるくらいのほんとに面白味のない部屋だ。


「健人さん物少ないんだね」


「まあな、もし転勤で引っ越しとかあった時にこの方が便利だろ」


「…え、転勤する予定があるの…?」


さっきまでの楽しそうな表情と打って変わって悲しそうな表情をする涼君に俺は慌てた。


「いや、もしの話だって!あったとしてもまだまだ先だから!た、多分…」


「…ふーん、そっか。ここ座っていい?」


「おう、好きに座ってくれ」


コンビニで買ってきた飲み物とスナック菓子をあけて机に並べ、俺も涼君の隣に並んで座った。


「涼君お笑いとか見る?録画してたやつならあるんだけど」


「お笑い好きだよ、見たい」


しばらくテレビを見てると俺はふとした事を思いだした。


「涼君さ、聞きたいことがあったんだけど」


「?」


「昨日の夜、今日の待ち合わせ場所と時間確認したいって連絡くれたけどなんで電話だったの?」


「え…」


テレビを見ながら話していたが中々返事がなかったため、涼君の方を見ると顔を赤くして下を向いていた。


「え?」


「えと、別に電話の方が早いかなって」


「あー、そっか」


まあ確かにそれはそうだなと思った。またテレビに集中し始めると俺の腕部分の服がクイクイっと引っ張られた。


「どうし、た…」


涼君の方を見ると先程と同じ顔を赤くした涼君がこっちを見つめていた。




「木曜と金曜に健人さんに会わなかったから、声だけでも聴きたかった…って言ったら、引く…?」




涼君に釣られて俺も自分の顔が赤くなってる気がした。


「あの、えっと…別に、引かないよ」


先程の映画館での頬にキスもそうだが涼君はまさかだが俺のことが好きなのだろうか…?いやいやいや、ただ2回助けただけでこんなおっさんを好きになる訳がない。俺の頭の中はテンパっていた。


「そっか、良かった」


安心したのかまだ少し赤い顔でふわっとした笑顔で笑った涼君は天使みたいに可愛かった。


その後お笑い番組が見終わったところで涼君は帰る支度を始めた。


「あまりお家に長居しても申し訳ないし、俺今日はもう帰るね」


「じゃあ駅まで送るよ」


「別に一人で大丈夫だよ?」


「また変なおっさんに絡まれでもしたら困るだろ」



そして家を出て涼君を駅まで送り届けた。


「じゃあ、またね」


「おう、家に着くまで気をつけてな」


改札に向かおうとする涼君がもう一度立ち止まってこちらを振り返った。


「健人さん」


「ん?」


「今日1日健人さんと一緒にいて俺はすっごい楽しかった。健人さんが嫌じゃなければ…また俺と映画見に行ったり出かけたりしてくれる?」



こんな大して面白味のない自分と一緒に過ごしてて楽しいのか不安しかないが、でも少なくともまた会いたい思う気持ちは俺も同じだった。



「涼君もこんなおじさんと出かけたいなんて物好きだな。また出かけよう、連絡する」



嬉しそうな顔をした涼君を見送った俺は一人帰り道を歩いていた。


今日の映画館での頬のキスにさっきの部屋での真っ赤な顔、帰り際のまた出かけたいと言ってくれる涼君に勘違いするには十分すぎる程だった。


でもまだ涼君は高校生だし男の子だし自分の気持ちもよくわからないし、なにがなんだかどうしたら良いのかわからない俺は悶々としながら家までの道のりを歩いた。

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