また会えたけど③




蒼良視点



友悟と別れ職員室へ向かうと案内を受けた。 転校生である蒼良はこの学校の流れを把握していない。

どうやら在校生である2年生と3年生も入学式に出席しなければならないようで、体育館へ行く必要があった。


「蒼良くんはここの席ね。 みんなに合わせて立ったり座ったりをしてくれたらいいから」

「分かりました」


先生は『蒼良くんも新入生みたいなものだけどね』なんて言われたがあまり意味がよく分からなかった。


―――校歌とかも何も分からないんだよな・・・。


蒼良はこの春ここへ引っ越して今日が初めての高校生活となる。 それでも周りから浮かないよう入学式は必死に周囲に合わせていた。


―――・・・友悟、か。


新入生の名を一人ずつ読み上げる時、蒼良は昔のことを思い出していた。 それは蒼良が小4の頃、親の仕事の関係で日本を旅立つ時の話である。



「蒼良!」


友悟が幼児のように泣きじゃくっていたことをよく憶えている。 ただ親の都合での転校のためどうしようもなかった。 家族ぐるみで付き合いがあったため、友悟の家族も見送りに空港へと来てくれていた。


「向こうでも元気でいらしてください」

「そちらもね」


親同士が言葉を交わす中、蒼良と友悟は何も喋らなかった。 しかしもしかしたら今日が同じ時間を過ごす最後の日になるのかもしれない。 そう思うと何か言葉をかけてあげたかった。


「・・・友悟。 元気に育って、大きくカッコ良い人になるんだよ」


精一杯に笑い友悟の頭を撫でた。


「蒼良ぁ・・・ッ!」


友悟は泣いたままだが、その泣き顔を見ていると自分も泣きそうになるためすぐに顔を背けた。 そのまま振り返ることなく空港の奥へと進んでいく。 涙が流れているところを見られたくなかったのだ。

しかし、その時だった。


「ッ、蒼良と離れたくない!!」

「え・・・?」


その声に振り返った瞬間だった。 友悟は左右を確認せず飛び出したせいで横切った荷物を運ぶカートと衝突してしまったのだ。


「友悟!!」


友悟は頭を打ち額から血を流した。 慌てて駆け寄るも意識がないらしく目を開けない。 そこで友悟の親御さんが救急車を呼んだ。


「友悟、おい! しっかりしろ!!」


安静な状態にし声をかけ続ける。 だが蒼良には飛行機の時間があり、タイムリミットが来てしまった。


「もうすぐ搭乗の時間でしょう? 友悟のことは大丈夫ですので行ってください」

「でも・・・」


やはり蒼良の親も困っている様子だった。


「友悟が飛び出すことのないよう注意していなかった私たちがいけないんです。 それにこれくらいではどうってことはありませんよ! すみません、旅立ちの日にこんなことになってしまって」

「あ、いえいえ・・・。 本当に大丈夫ですか?」

「えぇ、すぐに目を覚ますと思います」


友悟の親にそう言われ、蒼良の家族は友悟を置いたまま日本を旅立つことになったのだ。


 

―――後日、親経由で友悟は無事だと知らされた。

―――でもあれ以来、俺と友悟は一切連絡を取らなかった。


予め新しい住所の連絡先を交換しておいたが、それでも連絡を取らなかったのだ。


―――いや、違うな。

―――友悟からは一方的に連絡は来ていた。

―――でもそれを全て俺が止めていたんだ。

―――・・・分かっている。

―――俺は友悟から逃げているって。

―――昔のことで何か言われると思っていたから、俺は友悟と再会しても冷たく突き放したんだ。

―――・・・でも友悟は怪我をした時のことを憶えていないようだった。

―――友悟に昔の記憶があって、何か言われるのが怖いから逃げるというのは百歩譲ってよしとしよう。

―――・・・でも友悟に昔の記憶がないなら、逃げるのは違くないか?


そのようなことを考えているうちに入学式が終わっていた。 元々生徒数もそれ程多くないため時間もかからない。


―――考えていたらあっという間だったな、入学式。


新入生が退場した後在校生も退場した。 そしてそのまま教室へ戻ろうとしたその時だった。


「蒼良先輩!」


体育館を出るとそこでは友悟が待っていた。



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