姿身など要らぬ

脳だけで生きている。

三半規管は息をしているが、それでも僕は脳だけで生きている。


乾博士には悪いが、もし実験が成功して皆がそうなって

たとえ僕がきれいなお兄さんの中に入っても

きっと彼が空っぽになるだけだろう。

それほどまでに私は幼稚だ。

脳だけ大人になって、体は幼女のままだ。


私は脳だけで生きている。


そろそろ体も使って生きなくてはいけないのだろう。

使い潰す勢いで。

使いこなさなければいけないのだろう。



鮮やかに、花束降りしきる中で、両手を広げて笑っているような女性が本来の僕なのだろう。



僕という書き慣れた一人称も

俺という言い慣れた一人称も

捨てて

‘‘私‘‘にならなくてはいけない。


見上げた空は、曇り空。

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