オートモードで寝ながらダンジョン攻略しちゃいます
くま猫
第1話 追放、そして
私の名前はポルカ。パーティー追放され、いまはフリーの冒険者。お仕事募集中である。追放された理由は所属していたパーティーがマジックバッグを手に入れたからだ。マジックバッグは何でも入る魔法のカバンののことだ。
マジックバッグがあればポーターなんて不要。というわけでポーターの私はお役ごめんとなり、今に至るというわけだ。
「マジックバッグめ」
追放されて無職になったことによる経済的なダメージは大きい。とは言っても、追放されたことパーティーに恨みはないし未練もない。というのも、定番の追放宣言のあとに団長に告げた言葉があまりにも衝撃的だったからである。
『クビがイヤなら嫁になれ』
……。頭がおかしい。脈絡もないし距離感もおかしい。正気を疑う発言にさすがにドン引きした。というか、この言葉のせいで他のパーティーメンバーがご丁寧に、ひとりひとり時間をかけて私をディスってきたのだがその内容をぶちゃけ忘れてしまうほどであった。
正直、元パーティーの団長は初対面の頃から変わった人だな、とは思っていた。団長はスキさえあればしょっちゅう手鏡で自分の顔とにらめっこしてウットリするほどのナルシストだ。
まあ、ナルシストであること自体には罪がないとしても、ぶっちゃけ生理的にムリだった。とはいえ、一応なんか良い面もあるんじゃないかと思いながら我慢してきて今に至るという感じだ。
「ムリなものはムリ」
初対面で相手に感じた印象はわりと当たっていることが多い気がする。あわないと最初に感じた相手は、長く付き合っていてもやっぱりムリなのだ。理屈の上では知っていたが、今回の追放騒動でそれを身を持って実感した。
中央ギルドの調査によると冒険者の離婚の原因の6割が性格の不一致らしい。次いで3割が経済的事情ときて、浮気や不倫や暴力といった小説に描かれるような衝撃的な出来事は、実は離婚の原因としてはそう多くはないらしい。
離婚の具体的な理由についても『旦那が作った料理に塩や唐辛子を振りかけまくる』『旦那が脱いだ服を床に投げっぱなしにする』などなど。恋人のときは我慢できたけど長年の繰り返しで我慢できなくなったというケースも多いとのことだ。……だからこれはなんの話だよ。
「離婚の話だ」
……いや、違う。私が追放されて経済的に苦しい、という話だ。冒険者の離婚事情で気持ちをごまかしても現状が変わるわけではない。現実と向き合おう。
正直いま思えば仮に追放騒動がなかったとしても、あのままパーティーにとどまっていたらろくなことにならなかっただろうとは思っている。
「成長の機会もなかったしね」
冒険者が成長するためには経験値が必要だ。経験値を得るためには魔物を狩る必要がある。……なのだが『ポーターごときに経験値は不要!』という団長の謎指針で私は戦闘に加わる事が許されず、冒険者2年目にも関わらずいまだLV1のままという状況である。
「はあ。LV1で追放歴ある私でも働ける仕事あるかしら」
重い足取りでギルドの門をくぐる。もちろん、仕事を探すためだ。
「おやポルカさん。今日はお一人ですか?」
私の担当のギルド嬢、ソフィアさんだ。心配そうな顔をしている。きっといまの私は相当ひどい顔をしているのだろう。取りつくろって隠せるものではない。私は正直に現在の状況を語った。
「おやまあ追放ですか、それは大変でしたね」
リアクションはあっさりとしたものだったが、逆にあまり重く取られるよりもその方が私的には気が楽になった。ソフィアさんいわく、パーティー内での人間関係トラブルや、追方騒動はわりとよくあることらしい。
多くの冒険者と関わる仕事であるギルド嬢としては追放程度はさほどめずらしいことでもないのだろう。まあ、私にとっては大事なんだけど。
「ポルカさんは一生懸命頑張っていたのに、残念です。ポルカさんの書いたフロアマップや、報告書は丁寧に書かれていたので、私が手を加えずに上司に提出できて楽できたので、感謝してたくらいなんですよ。……理不尽な理由で追放されたのであれば、私の上司経由で、指導させることもできます。場合によっては、追放を撤回させることもできますが?」
「あっ、それは大丈夫です。お気持ちだけで十分です」
あのパーティーに戻るとか、それこそ地獄だ。というか、意気揚々と私の人格否定をした団長以外のメンバーはめちゃくちゃ気まずいだろう。あのサイコパス団長と違って他のメンツはそこまで面の皮が厚いとも思えないし。
それに、パーティー追放のいきさつをソフィアさんにつまびらかに語っても思い出してムナクソ悪くなるだけだ。なので、私はいまの私に一番必要なことを相談した。
「ところで、私でも受注できそうな仕事とかあります?」
そう、仕事。私に一番必要なのは仕事。もっというなら、金。金がなければ餓えて死ぬ。働かずに金が入ってきたらこれ以上に最高なことはないのだけど、さすがにそれは求め過ぎだろう。そんなことを考えていたら、ソフィアさんが答えた。
「そうですね。まず適正のあった仕事を探したいので、ポルカさんのステータスウィンドウを見せてもらっていいですか?」
正直、LV1の私のステータスを見せるのは恥ずかしいのだが、贅沢を言える立場ではない。私はステータスウィンドウを展開する。
――――――――――――
名前:ポルカ
LV:1
筋力:5
体力:6
魔力:8
速さ:13
特殊:オートモード
――――――――――――
「なるほど。ご協力ありがとうございました」
「……あの。LV1じゃさすがに厳しいっすかね?」
下水のドブさらいとか、ダンジョン内の冒険者の死体回収とか、アイテム鑑定とか、とにかく働ける場所があるなら何でもするつもりだ。その覚悟はある。
「いえいえ。ちょうどポルカさんの経歴を活かせる仕事があります」
「マジっすか?!」
「はい。つい先日、新しいダンジョンが発見されたのですが、なかなか探索に向かってくる冒険者が見つからなくってですね……」
「やらせてください!」
私は即答した。新しいダンジョンなら追放したパーティー連中。……というか、あの生理的にムリな団長と顔をあわさずに済む。
冒険者としてのいままでの経験も無駄にならないし、断る理由はない。捨てる神あれば拾う神ありというやつだ。いやぁ……。ありがたすぎる。
「それでは、ダンジョンにご案内させていただきます」
というわけでトントン拍子で現地調査もかねて、私とギルド嬢とでダンジョンに向かうことになった。
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