第81話・肩車できる女性の強い女という劣等感

 女子大生アモが、快諾しながらも実はイヤイヤながら男を肩車してくれてた件は、ボクにアモを紹介してくれたジュンコにとってもかなり強いショックとなったのは、前の第80話でも述べたように、ってことで、この件についてちゃんと話し合おうと、ボクはジュンコと2人で会うことになった。

「やっぱり、女の子にとって、男を肩車するとか、おんぶするとかって、イヤなことなのかなぁ。ちょっとイヤなのは、なんとなくわかる。でももしかしたら、凄くイヤな女の子って、かなり多いのかな、という不安が・・」

「私は、えっ、私って男の人をおんぶして、こんなに走れるんだ、というようなチャレンジに対する達成感のようなおもしろさは感じたけど、頭のどこかで、私、男の人をおんぶしてこんなに汗まみれになってなにやってんだろ、という気持ちもなかったわけではないかな」

「おんぶや肩車は、頼まれても、する側に、してあげてもいいっか、という協力の心がないと、ムリヤリ強制的に乗ることはできない。特に肩車なんか、下で支えるがわが本気でやってくれないと成立しない。だからアモが、それほどイヤだったのにしてくれてたこと衝撃的で・・・」

 私くらいに、女としてはちょっとは強いほうよ、くらいのレベルだと

「私でも、男の人をおんぶできた」って喜んでるところ、どうも、アモの言い方だと、男の人に肩車してって言われたことで、自分は大きくて強いから、女として扱われてない、という憤慨を感じたようで。

 強い女性がたまにもっていることのある「強い女という劣等感」。2年間のつきあいからも、アモにはその意識はないと思っていた私の見落としよね。

 イヤなのに我慢してボクのような男を肩車して、アモは大変な肉体労働してるのに、上に乗ってボクが気持ちいい~シアワセ~ありがとう、なんて言ってたの、ムカついたかなぁ。

 ジュンコだったら、自分が苦労しておんぶしてあげてる男が上で「気持ちいい」とか「シアワセ」とか言うのどう? 自分の苦労が相手を幸せにしてるのを苦労のかいあって良かったと感じるか、私がこんな大変な苦労してる上で能天気にシアワセだなんて、ムカつく?

 おんぶしてあげてもいいっかという人間関係の人になら、シアワセと言ってもらえるほうが、こっちの苦労が実ってるよね。あっそっかぁ、アモとクロさんの間には、その人間関係がまだできてなかったということかな。

 いや、それは大きな理由ではないかな、それだとしたら私が誘った時点でもっと躊躇するか断ればいいわけで、あのノリノリで来たんだもんね。

 ボクが、アモにとって嫌いなタイプの男だったのかな。ではないみたい、男を肩車するなんてイヤ、と男全般に対する言い方だった。私の勘でしかないけど、アモは、私に対して、ノリノリぶりっ子、したんじゃないかな、女同士ってこういうの、よくあるのよ。

 なるほど、いずれにしても、「いいよ」と肩車してくれる女の子が、こんなにイヤがりながらも頑張ってくれてる可能性はあるってことは知っておかないとね。考えようによっては、嫌がる女の子に肩車してもらえたって、すごく貴重なな体験ともいえ、それをボクはアモで2度もしてもらえて、ただ、乗ってるときには

「いまのこの肩車は、イヤがってる女の子の肩車なんだ」と認識して堪能できてなかったのが残念・・。

「ジュンコさん、このファミレス出たら肩車して」

「肩車は自信ない。おんぶなら、ちょっとならしてあげてもいいよ」

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