第3話 鶏肉のソテー丼トマトソースがけ
自称魔女を帰らせるためにも、オレは仕方なく2人分の鶏肉を焼くことにした。
多めに買ってきてよかった……。
鶏肉のソテーを作る際は、まず塩コショウをふり、薄く油をひいたフライパンで皮目から弱火でじっくり焼いていく。
こうすることで、余分な脂が落ちておいしく仕上がる。
皮がこんがりしたら裏返し、酒をふって肉の面も焼いていく。
火が通ったら、食べやすく切ってご飯を盛った丼ぶりに乗せ、鶏肉を焼いたフライパンにトマトピューレ、コンソメ、塩コショウ、にんにくを入れてドロッとするまで加熱する。
水分が減ってきたら火を止め、鶏肉の上にソースをかけて完成だ。
「ほら、できたぞ」
「わー! え、何これおいしそうっ!」
「鶏肉のソテー丼トマトソースがけ」
「すごーい! 女子力高いねっ!」
嬉しくねえ!!!
「いただきまーすっ!」
「ん」
なぜオレは不法侵入者と一緒に昼飯を食っているのか。
意味が分からない。
が、鶏肉のソテーは我ながらいい出来だ。
皮はパリッと、身はジューシーに仕上がっていて、にんにくの効いたトマトソースでいくらでも食べてしまえそうな味。
オレ、実は料理の才能あるのでは?
「おいしいーっ! プロ!? プロなのっ!?」
「あはは、口に合うならよかったよ」
相手がこいつなのは不本意だが、こうして自分の作った料理で人が笑顔になるのは嬉しいもんだな。
目の前でおいしそうに料理を頬張る自称魔女を見ながら、ついついそんなことを思ってしまう。
「ごちそうさまでしたっ! あーおいしかった! おなかいっぱいっ!」
「それはよかった。じゃ、帰れ」
「えええええええっ!」
「えええええええっ!じゃねーよ! 食べたら帰る約束だろっ!」
「そんな約束してないもんっ」
――こ、こいつっ!
「だいたいおまえ誰なんだよ。なんでうちに来たんだ」
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものなんだよっ?」
「……おまえひっぱたくぞ」
「えーっ? 魔女狩り? 魔女狩りしちゃう!?」
自称魔女はワクワクした様子で、なぜか少し照れている。
というか魔女狩り何だと思ってんだこいつ……
「まあ名乗ってくれなくても、私はあなたのこと知ってるんだけどね。小鳥遊大翔くんでしょ? 私の名前はソフィア。よろしくね」
「断る。帰れ」
「ちょっと! 名乗らせておいてそれはないんじゃないっ!?」
「オレはおまえみたいな怪しい女を囲う趣味はないんだ。悪いな」
「あ、怪しいなんてそんな……っ」
いやだからなんで照れるんだ。
今日も何の変哲もない1日が始まるはずだったのになぜこうなった。
ああ、どうか誰か、この女をどうにかしてください……。
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