美醜逆転の世界に来たので、イケてるオジサン喰ってもいいですか?
狼蝶
美醜逆転の世界に来たので、イケてるオジサン喰ってもいいですか?
ある日俺は、召喚された。
気づいたら知らない場所にいた。部屋は突風でも直撃したのかと思うぐらい家具が全部ぶっ飛んで粉々になっている。
ナニコレ
しばらく唖然としていたら、本棚だったかもしれない木片の山の中からガラッと人が出てきた。
「うおっ」
「すっ、 素晴らしい!! やった!!成功した!!!」
イケてるおじさん(略してイケおじ)が目ぇキラキラさせながら(少し目に涙溜めて)近づいてくる。なんだなんだ。ちょっと怖いぞ。一体何に成功したんだ?
いきなり両手で顔を包まれる。
「っ!? 」
いきなりのことだったから体がビクッと反応した。
「っすまない! いきなり触れてしまって・・・・・・」
なんかめちゃくちゃシュンッてしてる。可哀想だな・・・
「別に・・・少し驚いただけです」
あまりにもシュンとした姿が可哀想になったので気にしないよう声をかけたら何故か目の前のイケおじは目を見開いて固まってしまった。
どうしたのだろうと見ていると、なんとまた驚くことにその目から涙が一筋二筋流れ始めた。
「ちょちょっ、どうしたんですか!!? 俺、なんかしましたか!?」
焦っていると彼はその状態のままポツリと一言呟いた。
「美しい・・・・・・」
「・・・・・・は?」
このおじさんは今なんて言った?『美しい』? 何がだ? もしかして、何か魔法の実験をしていて、この部屋の物を全て吹っ飛ばした魔法が美しい・・・とか?
実は『まさか俺のこと?』と一番最初に考えたが、いやそれはいくら何でも自己評価がヤバすぎだろと心の中の俺が笑ったからこの考えは即却下した。
もう一度彼を見ると、未だ目は中に星空があんのかってくらいキラッキラしておるし、心なしか頬も薄ピンクに染まっているような・・・・・・
「あ、あの・・・?」
「はわわ・・・」
じっと目を見て話かけたら『はわわ』と言って後ろにぶっ倒れた。
『はわわ』!!! なんっだそれ!かわっ!!
目の前には長髪の壮年の男が非常に良さそうな品質の椅子に座っている。その腰ぐらいまである銀一色の髪は櫛など必要ないと断言できるほどサラサラしており、窓から入ってくる風に靡いて始終音を立てている。身長はかなり高く、180㎝は優に超えているだろう。肌は少しだけ暖かさを感じさせる生クリームのような色で、黄緑色というかそれに少しターコイズブルーが入ったような、なんとも不思議な色の瞳はパッチリと大きい。そしてその瞳は彼が掛けている大きめの丸眼鏡のレンズを通してしか見ることができない。歳をとってはいるが(40歳くらいかな?)、非常に綺麗な人だ。その口から『はわわ』という言葉が出たとしても何も違和感はない。いやむしろ可愛いい!!
「そういうことだったんですか・・・・・・」
「はい・・・。本当に、すいません・・・・・・」
この男性はコルネさんというらしい。名前まで可愛い!
そしてコルネさんはさっき目をキラキラさせていた時とは大違いで、今度は犬の耳が生えていたらめちゃくちゃ垂れ下がっていそうなほどしょんぼりしている。
俺は、この人によってこの世界に召喚されたらしい。そしてここは数時間前まで俺がいたところとは異なる世界。召喚?異世界?最初は少しだけ疑ったが、目の前でコルネさんに魔法を見せて貰ったら納得した。意外にさっぱりしている俺。自分で関心。そして、この世界では俺が元いた世界とは美醜の感覚が全く逆なのだそう。これはコルネさんから直接聞いたことではないが、俺の事を綺麗だとか美しいとか言うし、反対に自分のことは『こんな醜い顔』だの『みすぼらしい容姿』だのと言っていたのでおそらくそうだろうと勝手に思ったことだ。と、いうかそれ希望。俺は元の世界では『不細工寄りの普通顔』と言われていて、まあ・・・不細工なのでしょうねぇ。自分ではそうは思わないのだが(俺メンタル強いよ)。だからここでは絶賛されるのがわかるというか・・・悲しいかな。
そうそう続きだが・・・、コルネさんはその絶世の美貌(この世界ではめちゃ顔が悪い)から生まれてからずっと虐げられてきたと。そしてコルネさんには双子の弟さんがいたが、その子もコルネさんのように美貌で(是非見たい)二人揃って孤児院の前に捨てられたのだという。酷いっ!その孤児院は醜い者が多く、皆方を寄せ合って生きていた。院長さんもそこの出身だそうで、たくさんの子ども達のために愛を注いだ。だがある日その孤児院に数人の男が現れ、院長を殺し子ども達を奴隷にするために全員連れて行った。コルネさんは怖くてずっと図書部屋にある小さな戸棚の中に隠れていたおかげで捕まらなかったのだそうだ。しばらく後にその地方の騎士団が孤児院を訪れ、そこでコルネさんは保護された。騎士団の団長さんにもコルネさんと同じような容姿の、年の離れた弟がいたそうで、コルネさんを可哀想に思い引き取ったのだそうだ。そして魔力を測ってみるとなんとコルネさんの魔力は通常の人よりも何倍も高く魔法の素質ありと見込まれ、騎士団長の知り合いの王宮で働いている魔法師に弟子としてつけたそうな。周りの目や態度は厳しいものだったが、それを乗り越え彼はその優秀さを買われて王宮入りしたんだと。
すっげぇー・・・魔法、かっけぇー・・・
で、どうしても自分の理想とする人間を手に入れたくて、異世界からの召喚術は王族の許可が必要なのだが私的な理由でとは報告できるわけもなく・・・・・・王宮の図書室から唯一召喚魔法の魔法式が載っている秘書を持ち出して、
そして許可なく勝手に試しにとやったら俺がここに来たのだという。
・・・・・・って、許可取ってないんかーーーい!!! それダイジョウブなんですか!?
まあ、そこは置いておこう。
それで、コルネさんは出来心で俺を元いた世界から引き離してしまって申し訳ないと謝っているのだ。
俺の場合、ぶっちゃけ別にいいんだよね~。冷え切った家庭、不細工寄りな顔(あくまでも俺はそうは思いません!!)、一生卒業できなさそうな童貞。楽しみな漫画やゲーム、映画やアニメはあったけど、いつも退屈してた。あ~あ、こうやって毎日起きて高校行って帰ってきて寝る、そうやって何年か後は真ん中が仕事になるだけ。そんな同じ事の繰り返しで人生終えるのかなぁとか考えてた。
うん。俺は全然良い!魔法とかなんか面白そうだし!!ここなら美女を選びたいほうだい・・・ムフフフ・・・・・・
コルネさんありがとう!!
・・・・・・ん?でもさ、俺、男だよ? コルネさん、いいの?俺、男だけど(二回言うた)
召喚術って魔力超使うから滅多にできないとか言ってなかったっけ?間違えて男来てるけど・・・
絶対想定してたの美女だよな・・・あっ、ここでは美女でもむこうでは・・・・・・うぅっ・・
「あっ、あの・・俺おと」
「ひゃっ!! も、申し訳ない!! 呼んだのは私だというのに、やはりこんな美しい人に目を向けられるとっ・・・・・・慣れないから」
かーーーわーーーいーーーいーーーーーーーーー
え?ナニコノカワイサ。思わず鼻血が出そうだったわ。まじで鼻の奥がじっと熱くなったよ!?
でもここはちゃんと謝罪をしなくては。俺が女じゃなかったことの。
「すいませんっ!」
俺は頭を思いっきり下げる。
「えっ!? な、何!?」
「男でごめんなさーーーーーい!!!」
そう言って一分くらい経ってから顔を上げる。と、文字通りキョトンとした顔をしていた。
だからかーーーーわーーーいーーーー(略)(←いやもうここまで言ってんだから言わせろよ)
「え?」
俺は予想外の反応と可愛さに言葉を発する。するとコルネさんも
「・・え?」
と発する。
「え?」
「え?」
「いや、・・・え?」
「え?・・・・え?」
「俺・・・・・・男ですけど・・・」
「うん。知ってるよ?」
「いや・・・女の子を召喚するつもりじゃ・・・」
「『オンナノコ』って何?」
「・・・・・・」
「・・・?」
「え゛。ここ、女の子っていないんですか?」
「???」(コテンッ)
「う゛っがわ゛い゛っ って、もしかしてここ、性別って男だけとか?」
「性別は一種類しかないですよ?」
ふーーーーーーん。 そうか・・・・・・・・・・・・
・・・よし。わかった。
別に、いいや(サラッ)
わかったわかったあれだろ?これって帰れないやつだろ?しかも元の世界へ戻ったところで俺どうせブスだしぃ・・・もうこの際女も男も同じじゃあ!!(全然違う)
喰いまくったるわい!!!(ヤケクソ)
それからコルネさんと俺との同棲生活が始まった(照)。
もうっ・・・なんつうか、・・・・・・萌え死ぬ・・・。可愛すぎるこのオジサン。いやもう妖精に見えてきた。うん。この人はオジサンでももはや人間でもない・・・。妖精さんだ。
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