モリソン夫人(女中頭)の暴挙
女中頭はモリソン夫人という。
ツンケンした裏表のある女で、義母の言うことは何でも聞き、義妹のマチルダに対してはお世辞たらたらだ。
私に対しては、毒のある言葉を吐き、やる事もこの上なく薄情だった。
自分の手を汚すことは嫌うが、義母たちは、私が
なんて、下劣な人たちなんだろう。その性根にはあきれ返る。
嘘ばっかりだ。
だって、義妹だと言って乗り込んできたけど、一緒に居るうちに実は妹は妹ではなかったことがわかってきた。私の姉だった。年齢的に。
私は今15歳だけど、マチルダは16歳。一つ上。
義母は再婚だった。
ずっと前にお相手の侯爵家から離縁されたのだ。実家は伯爵家で立派なものだ。それなのに、どうして離婚だの子どもがいたりするのかよくわからない。
母は私が2歳の頃、亡くなった。母は隣国の出身で、今の王妃様の侍女としてこの国に来たのだ。
だから、王妃様は何くれとなく目を掛けてくださり、乳母の手配までしてくださった。
だけど、王妃様は王妃様なので、こんなことになってしまったからと言って泣きつくわけにもいかない。大体、そんな真似をしようものなら、父の恥になる。
モリソン夫人は、父がいなくなった途端、私を張り飛ばして、家から出て行かせた。
「物置小屋に行くがいい!」
彼女は
「こっちに来るんじゃないよ!」
「あの、食事は?」
「食事? ああ、届けてやるから」
「私の私物は?」
「なんのことだい?」
「服とか、本だとか、それから……」
モリソン夫人は大いに軽蔑したような顔つきになった。
「要らないだろう」
いるでしょう! 裸で暮らせとでも言うのですか?
モリソン夫人がニヤリと笑った。私はゾッとした。何かとんでもないことを考えているんだわ。
「それもいいね。奥様がお喜びになるだろう。お前が裸でいるのが好きだと噂になれば、下男どもも喜ぶだろう」
私は真っ青になった。
「ああ、でも、それはだんな様にバレたら……まあ、お前がやりたがったと言えば、それはそれで終わるか。でも、一家からそんな娘が出たとわかればマチルダ様の縁談に差し支える……しばらく待とうか」
何を言っているの? こわい。
「そうそう。でも、その話はいいね。ぜひとも、ロジャー様のお耳に入れたいもんだよ」
ロジャー様。……それは私の婚約者の名前だった。
「服のない、裸の娘か。ハハハ」
モリソン夫人は大声で笑い、私を物置小屋に押し込むとドアを閉めた。そして外からカギをかけたらしい。
「はあ、これで、当面あの娘の顔を見ないで済む」
ちょっと、それって、食事や服はどうなるの? 本当に届けてくれるの?
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