第17話 地獄は「怒り」を増幅させた…

 恐ろしい報道が目に映った。

「全国の新型コ○ナウイルスの感染者は20日、新たに2万5876人が確認され、3日連続で過去最多を更新した。感染の急拡大で保健所の業務が逼迫(ひっぱく)する中、東京都や埼玉県、大阪市、那覇市などでは、保健所が抱える業務のうち、感染経路や濃厚接触者を調べる「積極的疫学調査」を縮小する動きが出ている。」


 医療崩壊と運命を共に行政も崩壊した。


 これでも政治は一手を打とうとしない。


 ロックダウンを敢行しない限り、ノーマークとなった職場内濃厚接触者は限りなく増幅する。


 そして、職場感染者が家庭にウイルスを持ち帰り、家庭内感染と発展し、学校閉鎖を躊躇する文部科学省のヘタレ対応の隙間を縫い、ウイルスは家庭から学校へと蔓延する。


 政治の不作為が、全ての環境をウイルスの巣に作り上げる。


 我々に逃げ場なくなり、挙げ句の果てには、「災害と同対応の自己責任論」を待ってましたとばかりに、無能な政治家が連呼している。


 医療関係者は叫び続けていた。


 保健所職員は叫び続けていた。


 人流を抑制しないと、崩壊する。


 助かる命も助からないと…


 先見性、実行力の乏しい政治家共は、今ある事実にどう対処しているのか。


 案の定、言われたらやる、非難されたら対処する、無残な犠牲者が出たら初めて動く、自分の過ちを認めず、マスコミ向けの場当たり的な対応を繰り返す。


 誰が政治家になっても同じじゃないのか?


 政治家は国全体を見るべき、ウイルス対策だけではないのではないか?


 政治家だけではなく、こうなった結果は、危機感を保持しなかった国民にも責任があるのではないか?


 こんな風に少しでも思っているのなら…


 現在の内閣、自治体のリーダーである者が、こんな風に少しでも思っているのなら…


 お前らは死ね!


 お前らは腹を切れ!


 お前らは歴史から消えろ!


 窓の外を見ると、普通に人々が歩き、公園には子供の声がし、交通公共機関は稼働し、コンビニは客足が絶えず、多くの日本人が普通に暮らしているではないか?


 会社勤め、年金生活者、皆んな給料、年金を貰っているじゃないか?


 自動車も動き、遊技場も営業し、アウトドアも満喫しているではないか?


 文句ばかり言わずに、これら生活ができていることに感謝して欲しい!


 ウイルス対策の成果として、国民は政治家に感謝すべきだ!


 ワクチン接種も無料でやってあげているではないか?


 文句ばかり言わずに、政治の言うことも素直に聞けよ!


 こんな風に少しでも思っているのなら…


 お前ら政治家は、死ね!


 光と影の章で言ったとおり、目を向ける方向が、お前ら政治家は間違っている。


 影に目を向け、見え難い箇所を目を凝らし、真剣に見ようとして来たか?


 明るい日の当たる光のみ、見て来たのではないか?


 見やすい、明瞭な箇所ばかり安易に拾い上げて来ただけではないのか?


「専門家の先生達のご助言により」


 この繰り返し、自分で考え、判断しない。専門外はノータッチと言わんばかりに!


 そして、マスコミに煽られると、何を怖がるのか、今までのおよび腰が嘘のように、場当たり的な突貫工事の施策を、威張って発表する。


 若者批判し、順番がなかなか回って来ない若者に「早くワクチンを打ってください!」と無知な発言をした、あの糞バァバァは、SNSで若者から「打ちたくても打てんないんだよ!」と猛パッシングを受け、その挙句、なんと、まさかの順番破り策、渋谷で20代予約なしでのワクチン接種を敢行するという。


 言われたらするんかい!


 批判されたるするんかい!


 若者だけの責任にした過ちは、まだ認めず、この有事に意地っ張りで愚策をするんかい!


 阿呆っ!


 まだ、ウイルスの進化に気づかんのか!


 アクティブな若者がパンデミックの根源ではないのだ!


 お前だ!悪の根源は、お前だ、糞バァバァ!


 オリンピックを強行開催したお前だよ!


 もう遅いんだよ!


 全て遅いんだ…


 オリンピックをやっちゃったから、人流の抑制はできないんだよ…


 分かるか、糞バァバァ?


 免疫力の高い若者より、コ○ナ禍でテレワークやら行動規制やらで、ストレスが溜まり、免疫力が弱っている、働き盛りの40代を助けてあげないと…


 言われてするな!意地で大事を司取るな!


 自宅療養の妊婦が破水し、胎児が死んだ。


 傷ましすぎる…


 マスコミはこぞって取り上げ、涙を呼ぶように報道を繰り返した。


 政府は一転して、妊婦感染者の病院治療を優先することにした。


 初めから、そうせんか!


 阿呆っ!


 当たり前やんか!


 年寄りより、将来を担う、子どもが大切なんや!


 子は国の宝や!


 選挙ばかり気にして、年寄りから先にワクチン接種しやがって!


 これ以上、歪な年齢構造を創設させて、どうするんじゃ!


 少子高齢化!


 日本の最大の課題や!


 平和の時に年功者を優先するのは構わない。


 高齢者だけ重篤化するのなら、それは相当な対応だ。


 違うだろ!


 あらゆる世代で重篤化し、今や空気感染をするウイルス!


 嫌でも外に出らざるを得ない、世代を真っ先にワクチン接種すべきでなかったのか?


 もっと、妊婦を救済すべく対応、優先措置、安全措置をすべきではなかったのか!


 自分がワクチン打って助かっても、孫が打たずに感染して死んでしまったら、年寄りは泣くぞ!ホンマンに!


 影に目を向けろ!


 闇を見通せ!


 明るく見やすい所ばかり見るな!


 マスコミの煽りに慌てるな!


 有事、危機、どっしり構えて政治をせんか!


 能無し野郎!


 さて、俺の話を続けるとするか。


 俺は本社子飼いのイエスマン・

コヨーテ野郎を叩き潰して行った。


 それも仕事の実力のみで。


 完膚なきまで叩き潰してやった。


 そして、そいつら負け犬が、親元本社に戻り、親に泣きついた。


「地方のピノキオ、地方の天狗を懲らしめてください」とね。


 俺の九州での業績評価は高く、本社出身者への対応は辛辣ではあったが、通常の出世コースから外すには、本社として、あからさま過ぎた。

 本社は渋々、俺を出世コースに乗せたが、腐れ組織、流石に意地を見せて来やがった。


 日本国内の支社の中で一番繁忙の東京本社管轄の三多摩支店に俺を転勤させた。


 それも、俺が経験したことない、空中地上権の電線用の用地買収、高速道路の用地買収業務のリーダーとして、俺を据えた。


 俺はこの異動を聞いた瞬間、本社の潰しが始まったことを覚悟した。


 腐れ組織め!やり返しに来やがったか!


 本社に牙を向かない、イエスマン共は、東京でも比較的穏やかな地域、お洒落な都会勤務を命じらていた。


 あからさまではないが、誰の目にも俺の不幸が映った。


「○○さん、とんでもない部署に異動ですねー。お身体には気をつけてくださいね。」


「○○さん、用地買収の経験ないんですよね。こんな恐ろしい人事も「あり」なんですね。」


「三多摩配属の諸君には、気休めにもならないと思うが、仕事は腐るほどあるからね。」


 こんな調子だった!


 誰もが、俺の強い鼻っ柱が折れるのを期待していた。


 誰もが俺のしくじりを期待していた。


 三多摩支店に俺の知り合いは、1人も居なかった。


 部署の室内は暗く、かつ、不気味な静寂さが空気を覆っていた。


 その静寂さは、繁忙に押し潰され、途方に暮れた、社員のむせぶ様な泣き声で、掻き消されていく。


「無理です。これ以上無理です…」


 書類の山が机からこぼれ落ち、それを載せる三台代車が部屋の入口から出口まで大百足の様に連なっている。


 電話が鳴り始めた。夏のクマゼミの様にけたたましく鳴り響く。


 苦情、催促のクレーマー的な問い合わせが延々と続く。


 俺はその部署の責任者であり統括マネージャーだ。


 だか、空中地上権や高速道路関係の用地買収絡みの書類を見るのは初めてだ。


 誰に聞くこともできない。


 誰もが自分の仕事を片付けることで精一杯であった。


 統合失調症の社員が、奇声をあげて、部屋の中に消臭スプレーを撒き散らしている。


 誰も止めようとはしない。


 皆んな余裕がない。


 女子社員は、依然として、シクシクと泣いているばかりだ。


 電話が鳴り止むと、今度は窓口で大声が聞こえだす。


 道路成金の地主、ヤクザ、右翼の輩だ。


 勝手に契約されたと、賠償金を払えと!とお決まりの強迫要求が始まっていた。


「責任者を出せ!」


 俺はその声を聞くと、席を立ち、得意のクレーマー対応をしに、大声のする窓口に勇んで行った。


 クレーマーは何処でも同じであった。


 脅しには脅しで対抗した。


「あまり無茶を言うと、俺からお前の事務所に電話をかける。お前の言い分が、お前の兄貴分の考えかどうか確かめる。うちの会社とお宅の事務所との関係は古い絆があるからな。」


「東京電力が悪いことは分かっている。それをうちに言われても困る。あまりしつこいと、俺から東京電力に伝えることになる。お宅が契約を破棄したがってるとね。賃料増額の企みが、一銭も入らないことになるぞ。」


 こんな具合に目には目、歯には歯だ!


 そんな毎日を送り続けた。


 書類は全てメクラ印で押し続けた。


 兎に角、処理を進めないと、社員全員メンタルになる雰囲気だった。


 どんな書類、契約書でも、他の社員に尋ねる事なく、俺の責任の元、ハンコを押し、処理した。


 やがて、繁忙期を過ぎ、やっと朝陽、夕陽を見れる時間帯に出勤、帰宅できるようになってきた。


 俺は当然ながら単身赴任であった。


 食事は殆どしなかった。


 この頃は鬱病が俺の脳内を占領しており、主食は、抗うつ剤とウィスキーとなっていた。


 夜中、ラリった時に、コンビニに行って、何かを買い、何かを食っていたようだ。


 記憶はない。


 あるのは、朝起きた時に視界に見える、ゴミ箱の中の悔い残しの残飯だけだ。


 昼は腹が空くと煙草を吸い、その煙で胃の空腹を誤魔化し続けた。


 体重は測らなかったが、かなり落ちたようだ。


 ズボンがずり下がり出した。


 それでも、九州時代と同じように、会社では、なんとかパフォーマンスを繰り出すことができた。


 どうも本社の潰しは、空振ったようだ。


 本社の屑野郎、お前らは俺の正体を知らないんだよ!


 俺は地獄が好きなんだよ!


 俺は人が嫌がる所が何処よりも好きなんだよ!


 俺には決して尽き果てない「怒り」というエネルギーがあるんだよ!


 俺を潰すつもりなら、これでヘコタレず、潰し策を続けて行け!


 阿呆タレ!


 いいか、俺の「怒り」を増幅させると、事の終わりは覚悟しておけ!


 お前らに地獄を見せてやる!


 真の地獄をな…


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