略奪者の異世界転生〜友人の異世界転移に巻き込まれなかったせいで、異世界転生しました〜

狛夜シロキバ

序章

プロローグ 天城死す?



 俺の名前は、天城涼。普通の高校生だ。

 え? なに、自己紹介してるんだって? それはな、俺が今、見渡す限りの大自然の中にいて、絶賛大混乱中だからだ。

 何がどうなったんだっけか。少し思い出してみよう。






「土川、今月のvtuber雑誌読んだか?」

「読んだ。バ美肉おじさんが最高だった!」


 ぐ、こいつ、クソでかい声出しやがって。近くを通っていたご婦人が驚いているではないか。


「わかるよぉ、勇樹くん。その気持ち。ただ、もう少しボリューム落とそうな。ほら、ご婦人が驚いてるから」

「あ、どうもすみません」

「い、いえ……」


 土川がご婦人に謝っているのを尻目に雑誌の内容を思い出す。うん、やはり、vtuberは良いね。生きる糧になる。


「ところで、天城はもう、進路決めたの?」

「一応、大学に行こうかとは思うけど、まだ悩み中」

「そっかぁ、僕もまだかなぁ」


 俺たちももう、2年生、もうそろそろ、進路決めないとなぁ。

 今は亡き両親を安心させれるような進路にしたいところだが……

 などと考えながら、歩いていると、唐突に視界が白く塗り潰される。


「「眼が、眼がぁぁああ!」」


 変なところで感性が似ている土川と同じセリフを吐きながらも、状況把握を行う。

 少し、目を開けてみると、光の発生源が自分たちに足元にあることに気づく。


「土川くんや。俺たちの足元が光っておるぞ」

「うわぁ、本当だ……って! なにを呑気に!」

「いやだって、足動かねえから逃げれねえもん」


 そうなのだ。全力で跳ぼうとしても、足を上げようとしてもビクともしない。これは、おそらく、


「うん。おそらく異世界召喚だな」

「いや、冷静になにトチ狂ったこと言ってんの!?」

「本当、そう思う。しかし、現実は受け止めないと」

「悟り開いてんじゃねえぇぇえ!」


 さて、サッサと転移するならしてくれ。


「逃げれないなら、諦めるしかなーー


『召喚対象以外が魔法陣内に入っています。安全機構作動。排出します』


 ーーい。ボゲラァァァア!?」

「天城ぃぃい!?」


 変な声とともにとんでもない慣性が俺の体に働く。最悪だ、とんでもない力のせいで身体中痛い。どうやら、召喚対象は、土川だったようだ。土川……良い奴だったよ……

 そんなことを考えたのがよくなかったのか、泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目よろしく、二度目の最悪が引き起こされる。


 ーーキキィィイイ! ドンッ!

 

「グフゥゥウ!?」

「天城ぃぃい!?」


 身体中の痛みと浮遊感を感じながら、眼を開けると、自分を轢いたトラックと丁度、転移した土川の姿が映った。






 そう、俺は、先ほどまで友達と高校から帰宅中、急に、友達の足元が光りだして、魔法陣みたいなのができたかと思うと、すごい力で弾き飛ばされて……


「車道に出て、トラックに轢かれた……」









「いや、え? それで、転生したの? ふざけんなよ!?」

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