甘えんぼうの美少女ちゃん

洗い物が終わり、僕はリビングに戻ると床に正座しながら本を読んでいる如月さんがいた。さすがと言っていいだろう。美少女である彼女の本を読んでいる姿は一枚の芸術のように見える。


凄い集中力だ。おそらく視野には入るぐらいの所に僕はいるけど、まったく気付いていないのである。


こんなにも本を読んで集中している如月さんを見てていたら、少し笑ってしまった。


その声を聞いてやっと僕が目の前に立っていることに如月さんは気付いた。慌てながらも優しく本をとじこちらを見てくる。そんな慌てる如月さんを見てもう一度笑いながら僕も床に座る。


「東くん、勝手にすみません。洗い物もさせてしまったのに……」


「いやいや、僕からした事だし如月さんは気にしないで。それより、如月さんも本を読むんだね」


「私、今バカにされてます?」


「バカになんてしてないですよ。ただ、勉強とか運動とかで時間使って、自分が甘えることを許さなそうな人だと思っていたから」


「私にだって、娯楽に勤しむことぐらいありますよ。でないとやっていけませんもの」


安心した。昼休みのあれを見るに、いろいろ我慢していたのだろうが彼女にも自分なりの楽しみ方があるようだ。周りからかってに、理想の自分を抱かれてそれに応えてきた彼女のことだから娯楽なんて無いものだと思っていたのは僕の憶測だったらしい。


「私も、本を読むのは好きですよ。いつもは皆の理想でないと頑張って生活してますが、本を読んでいるときだけは、私が私でいていい。誰にも邪魔されない世界だって思うとなんか安心して読むことだけに集中してしまうんですよね。先程のように東くんがいるのに気付かなかったぐらいに見えなくなってしまいます」


「僕は……それでいいと思いますよ」


僕の一言に如月さんが反応しこちらを見てくる。


「誰だって、日常から目を逸らしたいときはいくらでもあります。でも、それでいいんです。自分が甘えたいときは沢山甘えて、気が済んだらまた頑張ればいいんですよ。逆に甘えさせないで耐える方がいけないんです。そんなの、いずれは押さえきれずに爆発します。お昼の誰かさんみたいにですよ」


「むぅー、東くんは少し意地悪ですよね!!」


分かりやすいように、如月さんは頬を膨らませる。なんとも、愛らしいお姿なのでしょうか。


ずっと見てたら、僕の理性がもたなそう。


「僕から見て、本を読んでいる如月さんは大人びていてとても綺麗でしたよ」


途端に、如月さんは顔を勢いよく下に向けた。


「綺麗だって〜〜。東くんってば私に見とれていたのかな?そうだと、嬉しいな。なんて素敵な日なんでしょうか。終わらないでほしいな〜〜」


頬に両手を当てながら、小声で何かを言っている。そんな、如月さんもまた一段と可愛いのである。心の中で今日よ終わらないでおくれと思うくらいに。


「皆の前では甘えずらいのなら、いない所で存分に自分に甘やかしていきましょうよ!!僕に出来ることがあればいくらでも協力しますから。なので、これからは我慢なんてしないでくださいね。いいですか?」


さっきまで下を向いていた如月さんが次は勢いよく僕の方へと目線を戻す。


「協力してくれるんですか?」


「う、うん」


「なんでも、ですか?」


「僕に出来ることなら」


では、早速お願いしますねと手を叩いた如月さんは、立って僕の隣へと移動してきた。そして、自分の頭を僕の太ももにのせて長まる体勢になった。


その光景は、今日の昼に見たのと同じものである。僕に出来ることならなんでもっては言ったけどぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜!!


僕は、昼に続きまた美少女の膝枕ではなく、美少女に膝枕をしている。


気持ちよさそうに長まる如月さんを見ると可愛いからいっかと思ってしまい、僕は全てを許すことにした。













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