02-02 楚漢戦争

02-02-01 漢一 楚漢戦争 1

 前 207 年。


 懐王かいおう劉邦りゅうほう咸陽かんように派遣。しん子嬰しえいは劉邦の元に降参し、秦が滅びる。


 いちど劉邦は咸陽を出、「霸上はじょう」に秦の旧老たちを集め、こう宣言する。

「そなたらは永らく秦の法に苦しめられたことであろう。ならばここで宣言する、ここからは法を三つのみとする。すなわち殺人者には死を、傷害及び強盗には罰を、その他の秦の法はすべて破棄する」

 この宣言に、秦の民は大いに喜んだ。


 項羽こううが諸侯の兵を率いて咸陽入りを志す。するとある者が劉邦に、関所を閉ざして項羽が入ってこれないようにするべき、と助言した。

 項羽が函谷関かんこくかんにやって来たときに門は固く閉ざされていた。これに怒った項羽は関所を攻撃して突破。戲水ぎすいの側、鴻門こうもんにまでやって来ると、翌朝に劉邦を攻撃すべく準備を整える。その総数は四十万だが、あえて百万を歌った。対する劉邦の軍勢は十万。

 ここで范増はんぞうが項羽に説く。

「劉邦は関中かんちゅう入りする前、女にも財貨にも貪欲でありましたが、関中では一切女や財貨に手をつけておらぬと聞きます。これはやつの野望が小さからぬことを示しております。すみやかに攻撃し、討ち漏らしのなきようになされませ」


 項羽が迫ってきた頃、劉邦の陣営には項羽の伯父「項伯こうはく」がいた。項伯は張良ちょうりょうと親しかったため、ともに脱出しないかと持ちかける。すると張良は言う。

「既に劉邦様に仕えることにした以上、急場となったところで離れるのは義にもとる」

 そうして張良が項伯を劉邦の元に連れ出せば、劉邦は酒杯を差し出して項伯の長寿を祝い、子どもたちを将来婚姻させたいと語った上で、言う。

「咸陽入りしたあと、財物はすべて手をつけずに封印してある。これは項羽将軍を出迎えんとしたがためである。関が閉ざされていたのは盗賊から守るためであり、他意はない。どうか将軍にお伝え願いたい、将軍より頂戴したご恩を忘れたわけではないのだ、と」

 劉邦の言葉を聞き入れた項伯は、それでも劉邦自らが項羽の元に出向く必要があるだろう、と告げた上項羽の元に向かう。そして項羽に対しては、劉邦を討つのが得策ではない、と伝えた。

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