01-09-05 戦国四君 孟嘗君上

 戦国四君の孟嘗君もうしょうくん。本名は田文でんぶんという。せい湣王びんおうの甥である。数千人の食客を抱え、その賢明さは諸国にも鳴り響いた。「しん昭襄王しょうじょうおう」はその名声を聞きつけ、先に秦から人質を送って孟嘗君を招聘。そして殺害しようと企む。

 孟嘗君は昭襄王が寵愛している側妾の元に行って救済を求めた。彼女は、孟嘗君が昭襄王に献上したような白狐の毛皮のコートがほしい、と言い出す。特別な一点ものであり、予備などあるはずがない。

 このときに大きな働きを示したのが孟嘗君の食客、犬泥棒であった。犬泥棒は秦の倉庫に忍び込んでコートを入手、側妾に差し出す。そこで側妾は、約束通り昭襄王との間を取りなし、殺害を回避させた。


 それから孟嘗君はすぐに秦からの脱出にかかる。偽名を使って秦の出口、函谷関かんこくかんにまで到着。到着は夜半であった。

 函谷関は鶏の鳴き声が聞こえたら開門するのがルールである。しかしこのまま待っていては、秦からの追っ手に捕まってしまう。ここで役立ったのがやはり孟嘗君の食客。彼は鶏の鳴き真似に長けていた。彼の技で強引な開門を果たさせ、秦を脱出すると、果たして追っ手が函谷関に到着した。とは言え国外に脱出されてはどうしようもない。こうして孟嘗君は辛くも秦より逃れた。


 孟嘗君は秦よりのこの仕打ちを恨み、斉に帰国するとかんとともに函谷関に攻め寄せた。恐れおののいた昭襄王はいくつかの領土を割譲することで講和を申し出た。

 その後孟嘗君は斉で宰相として働くが、今度は湣王に猜疑されたため出奔した。




蒙求:

顧榮錫炙こえいしゃくせき 田文比飯でんぶんひはん

 顧栄こえい出身の西晋せいしんの名士。西晋で焼き肉パーティーが開催されたとき、肉を焼く係のひとが肉を欲しそうにしていたので彼にも食わせてあげた。参加者は「そんな下男に恵みを与えてどうするのだ」と笑ったが、のちに八王はちおう永嘉えいかの争乱で中原が爆発したとき、顧栄はまさにその肉焼き係のサポートのお陰で難を逃れ、呉に帰還出来た。

 孟嘗君はここに書かれている食客達とまったく同じレベルの食事をしたのだという。そういうこともあって多くの食客に慕われた。

 卑しい身分の人たちとも、食のレベルでは対等であり続けたふたりの名士のお話。

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