第330話 善と悪

久しぶりにブラックホーク・ダウンをゆっくり堪能できた。


私が体験した色々な事が頭を過っている。


まだ幼い頃、父親に言われた事がある。


世の中で正義と悪が戦争をしている訳じゃないと言われた。


父親は説明も下手だった。それだけしか言わないので、


後は自分で、色々判断できるようになる歳と共に理解していった。


これは持論でもあり、おそらくは誰かが言っている言葉であろうと思うが


この世に、善と悪はない。ただ善人と悪人がいるだけだ。


皆がそれぞれ持つ信念や気持ちを、言葉や行動にするだけで善も悪も存在しない。


私は死を間近に感じる時に思う事がある。死なないで欲しいとは私は言わない。


真の仁徳者や、私の心を助けてくれた人や動物が、死に直面した時、


死なないで欲しいとは絶対言わない。それは無理であるし、意味の無い言葉だと


思っているからだ。私はいつもその場に居合わせたら、今までありがとうと本心を


言う。悲しいのは当たり前だ。言葉では言い表せないような気持ちになる。仮に言葉


に出来たとしても、何かが足りない。それは何故か? 体験や経験がそこに入るから


だ。だから人間は人の死から立ち直れる。


しかし、私のように善意など無い世界で、孤独に善の鎧を着て身構えても、命が尽き


るまで闘って、ボロボロにされただけである。比喩ではあるがもっと酷い。


奴らに対して憎しみはある。だがそれだけだ。私は私を通し、奴らは奴らを通しただ


けなのだ。だから私は身内が嫌いだ。権力で人をねじ伏せているような奴らばかり


だ。親父がまだ生きて元気な頃、何故権力を使わないのか? と聞かれた。


不思議でしょうがないと言っていた。死ぬまで分からなかったであろうと思う。


人間にはお前が思う以上に、権力や金に屈さない者がいると。

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