22日目 泣き笑い

 結局、山からの帰り道でボロボロ泣いてしまって私は大いに先輩を困らせた。この人でもこんなふうに困るんだ、と思えたことがその日の収穫の一つだったとも言える。

 泣きながら事情を説明して、紙飛行機のような、親戚のおじさんのようなわけの分からない存在のことをうまく説明できず、色々言葉を探している間になんだか無性におかしさがこみ上げて笑い出してしまった。

 お父さんが作った、とてもきれいな、よく飛ぶ紙飛行機。ツンと鋭角に折られた鼻先を尖らせて、反りが入った翼を肩や腕のように怒らせて、強い物言いと反した人情味ある語り口で、両親のように私を見守っていてくれた。

 両親が死んでから、一人で暮らし、一人で生きている私のことを見守るあまり意志を持ち付喪神となり、私の深層心理を汲み取って遠くへ飛んでいってしまった。

 世をひねて、不幸属性を拗らせて、一人でも大丈夫だと心を鎧って、つよがりで生きていた私。そんな私は、紙飛行と一緒にどこか山奥へ飛んで行ってしまった。

 家に帰り着いたときには、だいぶ遅くなってしまっていた。ヘトヘトの身体に鞭打って最後の数歩を進む。

「長い一日じゃったのう」

 ポケットの中でおじいちゃんの声もだいぶ疲れている。おじいちゃんも、仲間が一人減って寂しいと思うのだろうか。

「ゆっくりお風呂に入って、ぐっすり寝よう」

 私はリュックの一番小さなポケットから家の鍵を取り出した。おや、とおじいちゃんがポケットの中でもぞもぞ動く。

「おぬしもようやく、鞄の中身を整理できるようになったか」

「まあね」

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