いきなり命の危険です!
オギャア!
オギャア!
とある屋敷にて元気な赤ちゃんが産声を上げた。
「御当主様!おめでとうございます!元気な女の子です!」
「おおっ!でかしたぞ!それでリーゼは大丈夫なのか?」
「はい!母子ともに元気です!」
出産に立ち会った侍女の言葉にホッと一安心するのは、夫であり、このバーニングハート公爵家の当主であるカール・バーニングハートであった。
こうして公爵家では祝いの声で賑わう中、庭の外から見守る者がいた。
『はぁ~どうして私がこんな事をしないといけないのよぉ~』
普通の人間には見えないよう、透明になっている元女神である『フィーネ』はため息を付いた。元々、下級女神であったフィーネは上司であり、上級女神であるアルテミスの補佐をしていた。
上司から確かにさんざん、あの人間の少女を気に掛けるよう言われていたが、つい怠けてしまったことで、その目を離した短い時間に人間の少女を事故で死なせてしまった。その罰として、妖精の姿に変身させられてしまい、あの転生した少女のアシストをする様に言われたのだった。
ちなみに、妖精の姿は鳥ぐらいの大きさである。
オギャアー!
オギャアー!
『ようやく産まれたわね。でも動き廻れるまで数年は掛かるわよね~』
そうだ!今の内に、この世界を廻って楽しんでこようかしら?
無事に産まれたし、早々に死ぬことはないでしょう。
フィーネはその場を移動しようと、最後に産まれたばかりの赤ちゃん見た。
!?
なんと!慌ただしく動き廻る侍女達の中に、【悪意】を持った者がいたのだ。
腐っても女神であるフィーネには、人間の悪意が、黒いオーラの様に見えるのだ。
『ちょっと!?』
フィーネは急いで産まれたばかりの子供の所に向かった。
「頑張ったなリーゼ?大丈夫かい?」
「はい、2回目ですし大丈夫です。それで子供の名前は決まりました?」
「ああ、『シオン』と決めたよ。何故か、脳内に響いてきたんだ」
「まぁ!私もなんです。新たな赤ちゃんの名前はシオンって。不思議な事もあるものですね」
少し雑談した後、侍女達に追い出されるように当主であるカールは部屋を後にした。
「まったくもう、御当主様も心配性ですよね」
「仕方ないわよ。最近、何かと物騒ですものね?」
「でも、産まれた赤ちゃんは可愛かったですわ♪」
侍女達は手を動かしながら世話話に花を咲かせていた。そんな中、出産を終えたばかりの慌ただしく動き廻る侍女達の中に、見掛けない顔の侍女が通っても気付かれなかったのだ。
その侍女はベットメイクをすると、こっそりと哺乳瓶をテーブルに置いて出ていった。
普段は別の場所に保管されているが、ここに置いておけば、誰かが使うだろうと予想してだ。
その侍女は部屋から出ると鋭い衝撃を頭に受けて昏倒した。
『はぁはぁ、間に合って良かったわ!』
フィーネは急いで当主であるカールを呼んできたのだ。そしてカールが不審な侍女を昏倒させたという訳である。
「お前達!」
ビクッ!?
侍女達は、いきなり怒気のこもった当主の声に身体を震わせた。
「この者を知っているか?」
昏倒させた侍女を見せると、侍女の1人が恐る恐ると手を上げた。
「確か、最近入った下級侍女だったと思います…………あっ!?」
!?
手を上げた侍女は、自分で言ってから気付いた。
ここは貴族でも最上位の公爵家である。ここの侍女や執事、従者などになるには、後ろ楯になる貴族の紹介状が必要になる。
そして公爵家に奉公しに侍女になり、実績を積んで侍女長から推薦され、下級、中級、上級侍女として、より重要な場所を任せられるようになる。
当主婦人のお世話は無論、上級侍女の役割なのだ。下級侍女が出入りしてよい場所ではないのである。
こうして、詳しい取り調べが行われることになるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます