第18話「〇uck you!!」
教室を出て、準備に取り掛かっている生徒で埋め尽くされた廊下を潜り抜けて階段の踊り場で一息つくと、晴彦は俺の袖を掴みこう言った。
「おいっ‼‼ あれは、一体、なんなんだ?」
「ぐっ――――あ、あれって!? あの戦隊もののコスプレの事か⁇」
「この期に及んで逃げるのか? せっかく誤魔化してやったのにっ」
「に、逃げてるわけ——って、あれのどこが誤魔化してるんだ⁉」
唐突に掴みかかってきた晴彦を引き剥がすと、壁に寄りかかり「はぁ」と溜息をついた。
「誤魔化しじゃないだって?」
「んっ、あ、あぁっ。そ、そうだ」
「お前……自分の彼女の事を何だと思ってるんだ? あの写真がどこぞのルートか知らないが流出してるのもそうだけど……だいたい、あれだぞ、クラスのみんなの前であんなこと言うのは笑えないぞ」
「うっ……そ、それはっ……そうだけど」
「まぁ、誤魔化したとはいえ、きっとあの噂じゃ橘さんにぶん殴られるのは確定だな」
「……おい」
「まぁ、しゃあないな。お前が悪い」
ぼそっと「あの人普通に怖そうだからな」と付け足す晴彦に真面目に殺意が湧きそうになったが、確かに殴られるのは否めない。
「……って、そこは良いんだよ‼‼ 俺の断罪は!」
「どうでもよくないけどな」
「い、いいんだよっ……結局殴られるんだから」
「受け入れてる……」
「しゃあないからな!!」
苦笑いであしらう晴彦。だいたい、全てはこいつがあの写真を見せてこなければよかったのだ。そうすれば俺は殴られるわけ……ってそれじゃあ、あの写真はどうなる⁉
そう思って、すぐに切り替える。
んんっと喉を鳴らし、一度息を整えてから晴彦に訊く。
「——とにかく、あの写真はなんなんだ?」
「あの写真ねぇ、分からん。だいたい、さっき急に彼女から送られてきたんだよ」
「じゃ、じゃあ今すぐ聴きに行かなきゃ」
一歩踏み出すと、晴彦は腕を掴んだ。
「な、なんだよ」
「今はあいつは仕事中だ。無理だ」
「仕事って普通に出し物の準備だろ? それより橘さんが——」
「いいから待て。だいたい、あんなの急に言ったって何にも変わらない。どうせあいつも誰かからかもらってるんだよ」
「誰かからもらってる? それって、え?」
「出所が分からないってことだよ。だいたい、あの感じじゃあ出回ってかなり経つだろ?」
「……それって、もしかしたらみんなの手にあの写真があるってことか?」
気づいた俺がゆっくりと呟くと、少し苦しそうに頷いた。
うすうす分かってはいたが他人の口からそうきくと少しきつかった。
「トゥイッターか見てみればどうだ?」
「え?」
「いやぁ、そこかもしれないしな」
「さすがにそれは犯罪だろっ」
恐る恐るアプリを開くと一瞬だけフラグ回収してしまわないのだろうかと思ったが——
「——ない、な」
「そ、そうか……んじゃあインスタンの方はどうだ?」
「っ」
同じように見ると、結局そんな写真は載ってはいなかった。
「だ、大丈夫だ……」
不自然だ。というか逆にSNSに載っていないなら無事なのかと思える。だが、そうすると余計に入手ルートが気になってくる。
やはり、晴彦の彼女に聞き込み調査をするべきだろう。
「おい、訊きに行くぞ」
「いや、だからダメだって……」
「うるせぇ、時間がないんだよ!! 言い出したのはお前なんだから手伝いやがれ!!」
そう叫び、晴彦の首根っこを掴んで俺はその彼女がいる部室棟まで走ったのだった。
と言ったが、実のところ。
晴彦の彼女とは一回も話したこともないわけで、見たこともないわけで。
現在、目の前で素っ頓狂な表情を向けるクソギャル金髪JK(晴彦の彼女)にビビり散らかしているのは恥ずかしくて誰にも言えない。
絶滅危惧種「金髪ギャル」はそこにいたのだ。
あとがき
遅れてすみません! カクコン用のを書いていてなかなか投稿できませんでした!
というわけでカクコン用の新作ラブコメ「命題 もしもある日世界が滅びて、ツンデレ幼馴染と二人きりになったらデレる様になりますか?」https://kakuyomu.jp/works/16816700427986205101
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