Case.7 体育倉庫に閉じ込められる
「ちょっと、彰! 何で帰ろうとしてんのよ!」
放課後にボクが荷物をまとめて、変える準備をしていたところ、高飛車な声が教室に響いた。
いやいや、今日って別に用事もなかっただろうが……。どうしてボクがここで呼び止められなければならないというのだ。
ボクは頭の中をフル回転にして、考えてみたが思いつかないんだけれど……。
彗さんはというと、すでに家のことをするために足早に教室を出ている。
まだ、入学して早々だというのに、どうしてこうもボクには女運というものがないのだろうか……。
「えっと、ボクが何かしないといけなかったっけ?」
「はぁ!? あんた、本当に忘れちゃってるの!?」
「ええっ!? 本当に何かあったの?」
「はぁ……、これだから『自分は悪くないんだ症候群』の人間は……」
何だよ、その何ともネーミングセンスのない病名は……。
ボクはそんなことを思いながらも、丹坂の方をぼんやりと見ていると、彼女はボクの目の前まで来て、一発デコピンをされる。
「あんた、今日、授業中に居眠りしていたから、放課後に居残りで体育倉庫の整頓作業を任されたでしょうが!」
「え、覚えてない……」
「先生が言ってたところでも寝てたのね!」
「……そうなんだ……。で、何で丹坂が一緒なの?」
「私は体育委員だからだよ。あー、まったくあんたが頼りなくしてくれちゃうから、こうなったんだから、私に感謝なさいよね!」
何だよ、それ!
何で、そんなに偉そうにされなきゃならないんだよ!
ボクが何かしたって言うのか!? て、寝ちゃったんだよな……。
「さ、だから、早く体操着に着替えなさいよ!」
「うん、わかった……」
というと、ボクはカッターシャツを脱ぎ出そうとする。
すると、丹坂は慌てた様子で、
「ちょ、ちょっと!? 私が教室を出てからにしてよね! 私だって女の子なんだからね!」
「あーはいはい。いつものことで見慣れているかと……」
「こ、こら! ここではそういうこと言わないの! あんたの家で暮らしていることはクラス全員知らないんだから!」
「……あ、そっか」
「本当にもう少し伴侶闘争の当事者であることを自覚してよね……」
丹坂はそう言うと、プリプリと怒りながら、教室から出て行ったのであった。
最後のドアがピシャリと閉めたのは、本当に怒りだったのだろうか……。いや、耳が真っ赤だったからね……。
ボクは気にせず、体操着に着替えることにした。
体育倉庫は学校の中でも古くからある建物で、どうやら、ウチらの学校がまだ士官学校であったころから使われていたものらしい……。
て、戦前からあったってこと!?
戦時中ということもあってか、結構頑丈に作られていて、今でこそ使われていないが、防空壕もあったのだから、驚きだ。
「それにしても、いつ見ても古臭い建物よね……」
「まあ、戦争中から使われているものだからね」
「それだけ頑丈に出来ているってことだからいいんでしょうけれどね……」
とはいえ、建付けもかなり悪くなっているのと、頑丈な大きな扉が体重を掛けないと開け閉めが出来ないのはどうにかして欲しい……。
できれば、レールとかも鉄製から改めて欲しいものだ。
「さてと、備品の整理するわよ!」
「へいへい」
「本当に嫌そうね……。この私と二人きりで出来るというのに……」
「え、だって、丹坂とは家に帰っても会えるし」
「いや、それが十分幸せなことなのよ……。私と松島さんの二人が家にいてるってことは、このクラスで言うと美少女二人を一つ屋根の下で
そうなのだ。
実は、この丹坂愛は容姿端麗、お胸は控えめ、身長も控えめということから、姫の愛称でクラスメイトから常に崇められていたりする。
松島さん同様に上位学年の先輩からも告白されていたりする。
そんな二人がボクの家で住んでいたりするのだから、驚きだ。
と、まあ、色々と文句言われながらも、運動会で使う道具などの整頓が進んでいく。
丹坂は文句は言ってくるものの、テキパキと指示を出してくるので、その通りすれば問題なく作業が終わっていくのである。
「これで最後だな……」
ボクが決められた場所に置くと、丹坂は笑顔で、
「お疲れ様でした! やっぱり何だかんだ言っても、彰って男だね。力持ちじゃん!」
いや、力持ちではないと思う。
とはいえ、ここで否定すると彼女の機嫌を損なう可能性があるので、「まあな」とだけ言っておく。
「じゃあ、そろそろ時間もいいころだし、教室に戻るとしましょうか」
「おうよ!」
そう言って、ボクが金属製の扉を開けようとするが、なぜか開こうともしない。
ボクは「???」となるが、気にせずに再度チャレンジしてみるものの、ドアは一ミリたりとも動こうとしない。
「な、何やってんのよ! さっさと開けなさいよ!」
「い、いや、おかしいな……。フンッ!! あれ、やっぱり開かない……」
「ちょ、ちょっと、変わりなさいよ!」
丹坂はボクを押しのけてドアを開けようとするが、これまたピクリとも動こうともしない。
まあ、彼女の場合、体型が小さくて体重を掛けられないという問題点もあるのだが……。
「誰かに閉められたのか!?」
「いや、それだったら、一声かけるでしょうが……。で、でも、その可能性もなくはないわね……」
実際、ボクと丹坂は地下の防空壕跡に片付けられている備品の整頓もしていたのだ。
そのタイミングであれば、ボクらがここにいることを確認されても、もしかすると聞き逃していることもあり得る。
「な、なあ、丹坂、携帯持ってないか!? 実は、服を脱いだ時にそのままにしてきたんだ……」
「わ、私も鞄の中にいれてあるままなのよ……。そもそも学校内では、出さないっていうルールだし……」
「てことは……」
「本気で助からないんじゃないの!?」
丹坂の表情はみるみるうちに青ざめていくのが分かる。
まあ、不安になるのは分かるけれど……。そこまで青ざめるものか?
「お、おい……。きっと教室に荷物が置かれたままなんだから、誰かが気づいてくれるって。例えば、担任とか……」
「べ、別にそこを気にしてるんじゃないの!」
「はぁ? 今、一番気にするところってそこじゃないのか?」
「ま、まあ、そうかもしれないけれど、私にとっては別の問題が発生しかけているの……」
いや、分かんねぇ~! そんなに目をボクから逸らしたところで、いったい何が起こっているのか分からん……。
てか、コイツ、何をモジモジとし始めて――――まさか……!?
「ま、まさかとは思うが、丹坂、お前……」
「な、何よ!?」
「おしっ――――」
「言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
丹坂の回し蹴りがボクの腹部に突き刺さる。
ぐはぁっ!? いい蹴り持ってんじゃねーか……。
て、今はそんなことを思っている場合ではない。
「痛ててて……」
ボクが腹部を押さえながら、起き上がると目の前の丹坂はもう涙目で、今にも泣き出しそうな勢いだ。
ええ、もしかして本気でヤバいのか!?
「ど、どうしてくれるのよ……。さっきので……す、少し漏れちゃったじゃないの!」
ガァンッ!!!
ボクは何かに殴られたような気持ちになる。
学年で1、2位を争う女の子が男女二人きりの体育倉庫で失禁ですと!?
「な、何か……。そ、そうよ。ペットボトルとかないの!?」
「ちょ、ちょっとだけ待てよ!!!」
ボクは慌てて探すがそんなに都合よくペットボトルが発見されるわけがない……。
し、仕方ない!
ボクはさっきの防空壕の方に走り出し、そこから一つのバケツを取ってくる。
「丹坂、仕方ないからここにしろ!」
「ふえぇっ!? ここでしろっているの!?」
「仕方ないだろ! あっち向いているから……」
「ぜ、絶対に見ないでよ!」
い、美少女の放尿とか見ないから……。それ、性癖が歪んでいるだろうが……。
ボクがドアの方に向くと、丹坂は防空壕の方に向かって急ぎ気味で歩いていく。
え、防空壕はマズいと思う……。
すると、そのあとチョロチョロという、できれば聞きたくなかった音が防空壕の壁に反響して、自分の場所まで届いてしまう。
うん……。何も聞かなかったことにしておこう……。
「も、もういいわよ……」
丹坂がそう言うのでボクが振り返ると、そこには衝撃的な姿をした丹坂がいた……。
その…何で、下を履いていないの!?
どうやらバケツは置いてきたのか、下着をつけていないままの丹坂がそこに立っていた。
「に、丹坂!? お前、ちゃんとパンツくらい履けよ!」
「う、うるさいわね! もう、こうなったらヤケクソよ……! 私の恥ずかしいところを見せたんだから、あなたも見せなさい! てか、私のこの興奮状態を抑えなさいよ!」
「いや、ボクは断じて見てないぞ!」
「あんな音まで聞かせちゃったんだから、見たも同じよ!」
そういうと、丹坂は勢いよくボクの方に走ってきて、そのままボクを棒高跳び用のマットに押し倒す。
しかし、悲しいかな男の
押し倒された後、そのまま丹坂は体操着の上着まで脱ぎ出すと、ボクの下半身も黙ってはいなかった。
お願いだから治まっててくれ!
「あらぁ? 彰もヤル気満々じゃない」
丹坂はニヤリといやらしく微笑み、ボクの勇ましくなったものを握りしめて、
「彰、ストレス発散につき合ってもらうからね!」
ボクはそのまま丹坂に喰らい付かれ、問答無用に欲望を吐き出され続けた……。
そのたびに「んふふ♡ やっぱり彰って素敵」と艶っぽく言うのは反則だと思った。
少し肌寒くなってきたタイミングで先生が心配してきてくれた。
いやぁ、来る直前まで丹坂が一方的にボクを口撃してくるものだから、さすがにタイミングを誤ったら、二人とも退学にさせられていた可能性もあった。
どうやら、金属製の扉のところに折れた枝が挟まっていて、それがロックの様な役割を果たしていたようだ。
何てことないことだったのだけれど、さすがに助けられてホッとした。
ボクと丹坂は恥ずかしさから少し距離を置いて帰った。
「お帰りなさいませ! 彰様!」
いつものIカップがこぼれそうなメイド服で激しく挑発して来る彗さんに対して、ボクはさすがに吐き出し過ぎたために、下半身も大人しい……。
が、どうやら目ざとくそこに気づいてしまえるのが彗さんだったりする……。
「あら? 何か学校であったんですか?」
ボクは平静を装うが、丹坂はピクリと肩を震わす。
「いえ、だって、いつもこうやって私のお胸で迫ると、彰様の下半身が若干男らしく反応されるんですが、今日は何だか大人しすぎるんですよねぇ……」
「てか、いつもそんなところ見てるんですか!?」
ボクが抗議の声を上げると、彗さんは何食わぬ顔で、「はい! 健康と夜這いがOKかのチェックです!」と答える始末だ。
夜這いはお願いしてないんですけど!?
ボクと話していた彗さんの横を丹坂が逃げるように通り過ぎようとする。
すると、彗さんはその腕をがっしりと捕まえて、
「丹坂さん? 何だか、すごく良い臭いがしますね……。彰様の……」
「な、何かしら!? 体育倉庫で整頓してたから、近くにいたし、当然じゃない?」
「あら、お口に何かついてますよ?」
「え!? 嘘! 全部拭き取ったはずなのに!?」
あ、それは失言ですよね。
その瞬間、丹坂は「あ。」といったが時すでに遅し。
彗さんがハイライトの消えた瞳で顔は微笑みながら、丹坂を二人の部屋に連れて行く。
ピシャリとドアが閉まると中から叫び声が響く。
『い、いや……、止めて!? 今日は私が悪かったって! で、でも、たまにはいいじゃない!?』
『丹坂さん、ダメですよ。貴重な彰様の資源をそのように
『ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!』
彼女たちの部屋のドアが閉まると、丹坂の「ああっ♡」という喘ぎ声、「おぉうっ♡」という呻き声が中から聞こえてくる。
数分後、微笑みながら出て来た彗さんの後ろには、涙と涎と体液を垂らしながら、身体を小刻みに痙攣させた、見るに耐えない丹坂の姿があった。
そして、この日の夜、ボクの部屋に獣と化した彗さんが過激な衣装で登場して、翌日寝不足になるくらいまで搾り取られたのは言うまでもない……。
ああ、ボクも死んじゃうかも…………て、ああっ、もう止めて!?
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作品をお読みいただきありがとうございます!
少しでもいいな、続きが読みたいな、と思っていただけたなら、ブクマよろしくお願いいたします。
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