第13話 艦隊合流だぁ? 何だよ藪から棒に
「どうなんだ?」
俺の質問に、しばしライラは驚いていた。クールな第一印象からは信じられねぇ様子だったので、正直俺までめっちゃ驚いてる。
やがて、ライラは意を決して口を開いた。
「……はい。私の役目を――ゼルシオス様、あなたに無視されたものだと思いまして」
「アドレーアにじゃないのか?」
「いえ、そんなことは……」
「追及しねぇけどよ」
本人の意地と名誉、あと俺にゃ分かんねぇ理由があって言いたそうにしてないので、あっさり見逃すことにした。いじめんのは趣味じゃねぇしな。
「まぁいいや。それで、俺がアンタに手ぇ出せば、無視したことにはならねぇと思うんだが……どうだ?」
「ゼルシオス様が、私を……ですか?」
戸惑う様子のライラ。アンタ、こういうのに免疫
「うーん……。正直に申して、悪くはないのですが……今はまだ、決心が」
「そうかい。
嫌がる女を無理やり……ってのは、シチュエーションとしちゃ悪かねぇがライラ相手にやるもんじゃねぇ気がすんだよな。
さて、ああ言っちまった手前、少し待ちそうだ。だが、不思議とそんな長い時間待つ気はしねぇ。あと、何か邪魔される気がする。
「はい、ライラです」
なぁんて思った瞬間、ライラは腕に取り付けた端末に話しかけていた。
「はい、はい……かしこまりました。今から向かいます」
「あぁん、どしたよ?」
「アドレーア様からのお呼び出しです。行かねばなりません」
これは手ぇ出さずにいて正解だったな。俺の勘大当たり、だ。
さて、呼び出しの内容だが、なんか面白そうだ。行くっきゃねぇな。
「ついてくぜ」
「ご自由に。特に、定められてはいませんので」
部屋を出るライラに、俺はついていった。
……俺の飲み食いした茶菓子と食器は、どうすんだろな? 後で片付けんのか?
***
「ライラ・シュヴェリア。参りました」
「俺も来たぜ。なんか面白そうだからよ」
俺たちが艦長室に到着したのを見たアドレーアは、笑みを浮かべていた。
「ライラ、そしてゼルシオス様。ここへ来ていただいたのは、他でもありません」
「俺は呼ばれてねぇけどな。で、何だ?」
せっつく様子を見せると、アドレーアはモニターに映像を出す。
「先ほど、お父様からの伝達がありました。『“ドミニア”は、向かいつつある“ヴァーチア”と速やかに合流せよ。以降の指示は追って伝える』と」
「ヴァーチア……ですか」
ヴァーチア。名前くれぇは知ってるぜ。
王族座乗艦“セラフィア級”の9番艦、って聞いたな。となると、乗ってるのは……。
ちなみに、このドミニアは7番艦だ。俺が契約したのは“王立第7
さて、ヴァーチアと合流してどうすんのか。何かでけぇことが起こりそうな気がするぜ。
好奇心を持ちつつも、俺はアドレーアの指示に従った。
***
「さて……また世話になるな」
俺はヴェルリート・グレーセアに乗りながら、アドレーアの指示を思い出していた。
とりあえず、クソめんどくせぇ挨拶からだ。
今さらになって聞いたが、このドミニアにはアドシアのパイロットがライラ以外いねぇでやがるらしいから、出迎えが寂しくなるって話だ。
いっちいち大仰だねーと、俺は聞いてて思ったね。
王族なんてのは艦の合流に必ず儀礼を挟むなんて聞いたが、俺じゃクソ面倒くさくてたまんねぇ。もうちょっと簡素にやれよ、ってツッコミたくなっちまった。
とにかく、ヴァーチアを
これが
それに先駆けて、ドミニアは安全高度である500m――艦底のもっとも下の部分が基準――まで降下してる。
俺とライラのアドシア組も、ドミニアのそばにくっついて降りた。
「いつ来やがるんだ、ヴァーチアの連中は? もうレーダーに映ってっけど、端の端だぜこりゃ。もうちょっと時間かかりそうだ」
『こちらのレーダーではまだ範囲外です。遠いようですね。しかし、さすがはヴェルリート・グレーセアと言ったところでしょうか……』
「そんなにすごいのか、こいつ? 確かに、リヒティアや
そもそも、“たまたま直感や気分に従ったら乗り換えられる機体”だったからな。
確かに
『ゼルシオス様、そのヴェルリート・グレーセアに関するスペックの解析は終わっております』
「あぁん? いつの間に調べたんだ?」
『着艦されてから、ずっと解析させておりました』
手回しの
なぁんて俺が感心してると、アドレーアが話を続けてくる。
『奇妙なのが、発見時の状態でした。装甲表面を除き、ほとんど劣化していなかったのです』
「そんな状態だったのかよ……関節もか?」
『はい』
なんで朽ちてねぇんだか。
まったく、だいぶ謎が多そうな機体だぜ、こいつぁ。
『そろそろ合流の時間です』
と、ライラがヴァーチアの連中の到着を伝える。
改めてレーダーを見ると、だいぶ距離が縮まってやがった。この様子だと1分も経たねぇな。
『では、続きはこの後に』
「あいよ」
俺は謎だらけのヴェルリート・グレーセアに興味を抱きながらも、ヴァーチアやその搭載アドシアであるリヒティアたちを出迎えることに意識を切り替えた。
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