皆さんへお知らせ:作品の宣伝手法について
板野かもからの告知が書かれていると思ってページをクリックした諸君、お前達は見事に俺に騙された。――という書き出しは、そう、言わずと知れた西尾維新「物語」シリーズ第12巻「恋物語」のパロディであるわけだが、この件からお前達が得るべき教訓は、宣伝というものは往々にして「騙し」から始まるということだ。
どんなに良い作品であっても、読者に手に取ってもらえなければ始まらない。紙の本なら帯や書店のポップがある。カクヨムの小説ならキャッチコピーやタグがある。しかるに、ただ一行のタイトルで読者の目を引かねばならないこの匿名短編コンテストの場で、「始まり」だの「出会い」だのと短くありがちなタイトルを付けて満足している諸君には、その意識がいささか欠けていると言わねばならんだろう。
多くの場合において応援ハートの数はPV数に比例する。そのグラフの傾きは作品によってそれぞれだが、まず多くの読者にページを開いてもらわなければハートが押されないのは子供でもわかる話だ。たった十文字か二十文字かそこらのタイトルで、我々は読者の目を引き、手を止めさせ、忙しい彼ら彼女らの時間をぶん取らねばならないのだ。既に百作近い応募作が軒を連ねるこの雑多な戦場において、我々が真っ先に考えるべきことは、いかなる手段を使ってでもまずは読者にページを開かせるということに違いないだろう。
だからと言ってこんな汚い手法がまかり通ってたまるか、と今まさに憤慨している諸君、怒りは俺ではなくこの作品を検閲して通した板野かもに言え。俺はちゃんと事前に板野にDMで相談して、このタイトルにも内容にもOKを貰っている――もっとも、俺のこの言葉自体がブラフで、本当は俺自身が板野なのかもしれないがな。
気に入らない者は好きなだけこのページのコメント欄で罵声を浴びせるといい。「詐欺野郎」「姑息」「時間を返せ」……本来このコンテストのコメント欄で作者への悪口を書くのは禁止だが、この作品には「そういうノリ」のコメントが付いてしかるべきだろうと板野も言っていたぞ。ほら、他の作品にもあるだろう、「これはひどい(笑)」とか「ウザい(笑)」とかいうコメントが。要は作品のノリと合っていれば問題ないわけだ。いくらでも俺を罵倒するといいぞ。主催者のお墨付きだ。勿論、お前達が罵声のコメントを付ければ付けるほど、俺の得点が増えるわけだがな。
ネットでよくあるだろう、「AKB48の誰々が可愛い!出身高校はどこ?卒アル画像に熱愛彼氏の噂は!?」とかクソみたいなタイトルのゴミ記事が。Twitter知的階層にアフィカスと嫌われ蔑まれようとも、こんなゴミ記事でも好き好んで読みたがる情弱が広告をクリックしてくれればブログ主にはカネが入るわけだ。
一緒にするなと怒るだろうが小説だって同じだぞ。言うだろう、「1000万人に嫌われても10万人の読者に好かれれば10万部売れる作家様だ」と。買わないことを選択する者が1000万人居たからといって、売上部数マイナス990万部とはならんのだ。露骨な「騙し」で目を引く手法にグチグチ文句を言っている暇があるなら、お前達も自分の作品を必死に売り込む努力をするべきだぞ。「余計なお世話だ!」――か、思ったことはすぐ下のコメント欄に書いておくといい。
そうそう、板野はこんなことも言っていたぞ。このふざけた作品の応援数が伸びて上位に躍り出たら、作者も読者もみんな危機感を抱いて別のまともな作品に投票するようになるだろうとな。つまりコンテスト全体が活性化するわけだ。そのために俺は喜んで踏み台になってやるぞ。
だから、そうだな、このクソ文章を律儀にここまで読んだお前達が今からすることは、このページのコメント欄に一言「Shit!」だの「Fuck!」だの書いて立ち去り、すぐに他のまともな作品の中から好きなものを選んで、まともなハートとまともなコメントを付けてやることだ。これを皆が繰り返せば、全体で飛び交うハートの流動量が活発化して、大いにコンテストが盛り上がること請け合いだぞ。まあ、頭のいい奴なら気付いただろうが、本当にその通りになったらやはり俺の作品が一人勝ちするんだがな。勝って何が得られるわけでもないがな。
むしろコンテストが終わって名前が明かされた途端に俺はお前達からフルボッコだろうが、そこはそれ、コンテストの規約を端から端までよーく読むと、書いてあっただろう、「当コンテスト限りの筆名の使用も可」と。俺はとっくにそれを板野に申請して、正体を隠しているかもしれないぞ。まあ、ここまでの話が全部嘘で、本当は板野への事前相談も何も無しにいきなりこのクソ文を投稿フォームにぶっ込んでいるのかもしれないがな。いや、それともやっぱり俺が板野なのかもしれないが。
などと下らないことを書き連ねているうちにもう2000字か。短編の文字数制限なんてあっという間だな。お前達がここまでブラウザバックせずに俺のクソ文を読んでいるということは、少なくとも俺はお前達に自分の作品を読ませる勝負には勝ったということだ。つまりスタートラインには立ったということだな。
作品というのは書いて終わりじゃないんだぞ。読者に読んでもらって初めて始まるんだ。お前達もよく覚えておくといい。俺のカクヨム作者人生はおそらくここで終わりだがな。
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