04:最初に読ませる文量を減らし、適宜こちらから文章を与える

使

 

 

  彼女はボトルを引っ込めた。

「いつもそれだね」

「うん…………」

私はうなずいてから、彼女の言葉に返事をした。

私たちはいつものように、放課後になると教室を出て、下駄箱へ向かう階段の途中で別れる。そして互いに別の帰路を辿る。

彼女が消毒用エタノールを持ち歩く

 

 

 

ある時は山菜を採りに行き、またある時は川魚釣りに出かけた。木陰に座って、他愛もない話をしたこともあるし、二人して寝転んで空を見上げたこともあった。

その日もそうだった。

夕暮れ時になって、私たちは学校の裏山の麓にいた。

裏山には

 それでも一歩ずつ前へ進む。

やがて木々が途切れると、視界が開けた。

眼下に、湖が広がる。

「わあ!」

彼女は歓声を上げて、駆け出していく。

湖畔に立つ一本の木の下まで走って行って、彼女はくるりと振り返った。風に煽られて乱れた髪を整えることも忘れて、彼女は満面の笑みを浮かべていた。

「見て! 綺麗でしょう?」

彼女は嬉しげに目を細めて、両手を広げて見せる。

そこには、一輪の白い花があった。

「うん、綺麗」

私は答えてから、彼女と同じように微笑んだ。

 

 

 

私たち二人は今日も、人知れず寄り添っていた。

「ねえ、知ってる? この湖の岸辺で死んだ人は、妖精になるんだよ」

「妖精に?」

「うん。だから、岸辺で死んじゃった人は、みんな妖精なんだ」

「ふーん」


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