第1話「臣民のエジンコート」
架空の1939年、欧州大英帝国。
ロシア革命から始まった社会主義勢力の波は、いつしか差別の廃止と自由平等化の流れに変化し、女性たちが軍務に服するようになった。
そうして設立されたのは、女性と退役士官らの寄せ集めにして、英国第二の軍隊――臣民軍である。
これは『臣民海軍』に所属する改装超弩級戦艦『エジンコート』と、二度目の世界大戦を戦った彼女らと、それらに関連する者たちの物語である。
――――――
SMS『エジンコート』
基準排水量:30,500t
満載排水量:33,650t
全長:210.7m
舷側:28.6m
喫水:9.1m
主機:アドミラリティ式重油専焼三胴型水管缶8基
+ブラウン・カーチス式ギヤード・タービン4基4軸推進
最大出力:45,500馬力
最大:21ノット 全力22ノット
乗員:平時 1,115名 戦時 1264名
兵装:
Mark VI/N(H) 34.3cm 45口径 連装砲 7基
Mark XI 15.2cm単装砲 8門(ケースメイト)
7.62cm 45口径 単装高角砲 4基
QF2ポンド砲Mk.VA 4基(両舷1基 砲塔上に2基)
Mark III .50"/62ヴィッカース機関銃 4基
主装甲帯 :9in 229㎜
装甲甲板 :2.5-4in
バーベット:9in 229㎜
砲塔正面 :9in 229㎜
砲塔側面 :7in 178㎜
司令塔 :12in 305㎜
(簡易表記)
近代化改修によって三脚楼からネルソン級に酷似した塔型艦橋へ、それに伴って艦橋容積確保のため第一煙突を湾曲煙突としている。後部の三脚楼は撤去され第二煙突がMACK方式に改装、もともとの艦形から激変している。
12inchから13.5inchへの換装により船体各部の強化と、軽量な新型砲塔の設計がなされた。
新型砲塔はアメリカ製の16インチ連装砲のような角ばったデザインで、砲間隔が狭く、砲塔の高さを減じている。また水圧式ではなく俯仰・揚弾・装填はすべて電動式である。これらのシステムは華奢で繊細で、迅速な砲塔旋回をさせようとすると故障する可能性が高かった。
また俯仰角度の増加改修も並行して行われたが、最大仰角時には装填機構の故障が顕著となり、これらの問題が解決するのは1938年のオーバーホールを待つ必要があった。
水雷防御として水密区画増備の代わりのバルジが装着され、これにフランス式の水線下防御方式を限定的に使用している。これまで燃料か水を充填していたバルジに、ケーソンやエボナイトを充填したものであるが、効果は限定的であった。
装甲に関しては艦首部の102mm装甲帯を一部削減し、152mm装甲で妥協していた前甲板前部砲塔と、後甲板後部砲塔に新たに229mm装甲を施した。艦尾部を延長して艦首部には水面下にバルバス・バウを採用した関係上、多少の被弾があり破損したとしても、予備浮力で持ちこたえることができるという計算になっていた。
弾薬庫にはユトランド沖海戦の戦訓から垂直防御装甲が追加で張られたが、重量の問題から機関部への装甲追加はなされていない。
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